一軍で状態が上がらず
高卒4年目の今季、一軍では打撃が湿った中山
阿部慎之助監督が就任した今季、変革期を迎えて若手にはチャンスが巡ってきた環境と言える。
外野陣で大卒2年目の
萩尾匡也、ドラフト3位の佐々木俊輔が台頭し、投手陣ではドラフト1位右腕・
西舘勇陽がセットアッパーで起用され、育成から3月に支配下昇格したプロ3年目の
京本眞も一軍デビューを飾った。結果を出さなければ、実績ある選手も特別扱いしない。今季23試合出場にとどまり、打率.188、0本塁打と状態が上がって来ない
大城卓三が5月8日にファーム降格。代わって
山瀬慎之助が一軍昇格した。
その中で、ファームで巻き返しを狙う若武者がいる。プロ4年目の
中山礼都だ。
今季は開幕二軍スタートで、4月9日に一軍昇格。9試合出場で打率.091と結果を残せず、5月7日に再びファームに降格した。出場機会が多いとは言えないが、チャンスが与えられなかったわけではない。4月28日の
DeNA戦(横浜)では初回、3回、8回と満塁の好機で打席が回ってきたがいずれも凡退し、5打数無安打。4点リードの8回は二死満塁で3ボールから4球目の直球に狙いを定めたが一ゴロに倒れた。今季2度目のスタメンとなった5月6日の
中日戦(バンテリン)も悔しい結果に終わった。1点差を追いかける2回二死二塁で、フルカウントまで粘ったが
梅津晃大のスライダーに見逃し三振。4回の2打席目は中飛に倒れて途中交代。翌7日に登録抹消された。
一軍の定位置が保証されない立場
野球センスは誰もが認める非凡なものを持っている。今季イースタン・リーグで打率.311をマーク。一軍でも高卒2年目の22年に
坂本勇人が故障で離脱していた期間、27試合スタメン出場した。昨年は開幕から最後まで一軍に帯同し、自己最多の78試合出場で打率.239をマーク。課題の打力に成長の跡が見られ、本職の遊撃だけでなく二塁や三塁も守れる。ただ、本人に満足感はないだろう。2年前は「ポスト坂本勇人」の最有力候補とみられたが、
門脇誠が大卒1年目の昨季に攻守で結果を残して遊撃の定位置を奪取。二塁は
吉川尚輝が守る。即戦力ルーキーのドラフト4位・
泉口友汰が加入したことで、中山は一軍の定位置が保証されない立場になった。
スポーツ紙記者は「守備能力で言えば一軍のレギュラークラスだと思います。打撃も自分の形できっちり振れるようになっている。順調に成長しているが、まだ殻を破ったとまでは言えない。二遊間を守る門脇、吉川の牙城を崩すには、目に見える結果で強烈なインパクトを残すしかない。レギュラーを勝ち取った先輩たちも少ないチャンスを生かしてきましたからね」と期待を込める。
三塁を守る坂本は35歳。中山は今年のスタメン出場はいずれも三塁だった。二遊間以外でも出場し、結果を残せないと居場所をつかめない。
世代交代のタイミングとは
張本勲氏は週刊ベースボールのコラムで世代交代について、以下のように語っている。
「野球に限らず、どのプロスポーツにも言えることだが、世代交代というのは必ず訪れる。どんなに活躍した選手でも年齢を重ねれば衰えは来るし、若くて生きのいいルーキーたちがどんどん入って来る。そういう意味では世代交代は個人競技であれ、団体競技であれ、なくてはならないものだし、その競技を活性化させる上でも必要なものだ。ただ、この世代交代はよく聞く言葉ではあるものの、なかなか簡単にはいかない。実績のあるベテランをいつまで使い続けていくのか、そろそろ先を見据えてと若手に切り替えて戦っていくのか、その判断が難しいということだ。プロは結果がすべてというのが私の持論だが、この世代交代に関して言えば、これは現場の最高指揮官である監督の腹ひとつであるとも言えるだろう」
「世代交代のタイミングで分かりやすいのは、こういうときに替わりに入った若手が素晴らしい活躍を見せ、そのチャンスを一気につかんでしまうことだ。不振だけでなく、故障やケガの隙に入り込む場合もある。しかし、そこで結果を出せないでもたもたしていると、せっかくのチャンスを逃すことになる」
中山はファームから再びはい上がり、一軍に昇格してチャンスをつかめるか。世代交代の波に乗り遅れるわけにはいかない。
※『獅考(思考)トレーニングとは?』
若手選手に対して年に数回行うトレーニング。自己理解から始まり、思考の癖であるバイアスを解きほぐし、自身の成功パターンと失敗パターンを見つめ直す。トレーニングを重ねていくなかで、自分が成功するための戦略が練習と一致しているのかを
ブラッシュアップ。最終回には自己成長分析をスピーチする場を設ける。
写真=BBM