早大野球部にとって原点の場所

旧安部球場の跡地には、早大総合学術情報センターがある。早稲田大学野球部の原点。初代部長・安部磯雄先生、初代監督・飛田穂洲先生の前で優勝報告した。左から小宮山監督、印出主将[写真=矢野寿明]
【6月2日】東京六大学(神宮)
早大12-2慶大(早大2勝)
早大が2020年秋以来、優勝回数で並んでいた法大を抜いて、リーグ最多47度目の東京六大学リーグ戦制覇を遂げた。歓喜の胴上げ。閉会式で主将・
印出太一(4年・中京大中京高)に、天皇杯が授与された。
閉会式後はすぐにバスで西早稲田の早大総合学術情報センターへ向かった。野球部の生みの親である初代部長・安部磯雄先生、育ての親である初代監督・飛田穂洲先生の胸像前での優勝報告。かつての旧安部球場があった、早稲田大学野球部にとって原点の場所だ。リスペクト。優勝パレードを前に、真っ先に、同場所へ訪れるのが早稲田のシキタリである。
胸像前に三列横隊で整列。主将・印出が安部先生の胸像前に、天皇杯を捧げた。それまで激しい雨が降り注いでいたが、儀式の約3分間は小雨に。「野球の神様」は見ていたのだ。
主将・印出は「天皇杯」への思いを語った。
「ズシリと重たく感じます。天皇杯そのものも重たいんですけど、受け継がれてきた伝統を感じます。天皇杯はいろいろな競技にありますけど、野球は東京六大学なので、受け取れることに感謝したいと思います」
そして、こう続けた。
「天皇杯を取るために早稲田大学は日々、しんどい練習をしているので、安部先生に報告できたことは幸せなことだと思います。これが、自分たちがしなきゃいけないことなので。これで一つ優勝が経験できたので、後輩たちにもつなぐことができたので、うれしいです」
東京六大学野球連盟に天皇杯が下賜されている背景を熟知する主将は、背筋をのばした。1901年創部の早稲田大学野球部。飛田先生の教えである「一球入魂」を体現した。チームをけん引してきた4年生から3年生以下へと、活動の上で最も大事な姿勢が継承された。
文=岡本朋祐