一軍復帰後、打棒爆発

広角に打球を飛ばして安打を量産している度会
打席に入ると、安打を打つ可能性を感じさせる。
DeNAの
度会隆輝だ。
ファームでの調整期間を経て、6月11日に約1カ月ぶりに一軍昇格すると、6試合連続打点をマークするなど38打数15安打、打率.395と広角に安打を量産している。2割3分台だった打率は.271に上昇した。打席内容も濃い。初対戦の投手が多いパ・リーグ投手との対戦が続く交流戦にもかかわらず、きっちり対応した。6月15日の
西武戦(ベルーナ)では、2点リードの5回一死三塁の好機で相手エース・
高橋光成の153キロ直球を中前にはじき返す適時打。一塁で右拳を突き上げた。
リーグ戦再開後も安打を重ねている。21日の
阪神戦(甲子園)では今季6度目の猛打賞をマーク。初回、4回と左前打を放つと、6回の打席では
西勇輝に内角を突かれるがファウルでカットして粘る。8球目の内角に食い込んでくるスライダーを左前に運んだ。
他球団のスコアラーは、度会についてこう評する。
「モノが違うなと感じます。試合の中で修正する能力が高く、穴がない。ファームに落ちるまではどんな球にも手を出す、いわゆる『ダボハゼ』だったので打ち取りやすい打者の印象でしたが、今はまったく違います。ボール球をきっちり見逃し、際どい球はファウルでカットする。もともとコンタクト能力が高い打者なので、打つボールのチョイスをしっかりすれば安打を打つ可能性が上がる。新人王の有力候補であることは間違いないです」
二番でチャンスメーク役
ドラフト1位で3球団が競合した逸材はセ・リーグ史上初となる開幕戦から2試合連続本塁打の鮮やかなデビューを飾ったが、その後は相手バッテリーの警戒が強まり安打が出なくなる。打ち気にはやりボール球に手を出す場面が目立つようになり、打率.231、3本塁打、11打点と状態が下降線に。外野の守備でも打球判断、落下地点までのスピード、球際の強さで課題を露呈した。5月16日にファーム降格に。ただ、度会はここからはい上がった。
イースタン・リーグでは打率.324、1本塁打、8打点と好調をキープ。一軍昇格後は9試合連続安打を記録しているが、センターから逆方向の安打が目立つ。強引に引っ張らず、広角に打ち分けているのは自身の役割を自覚している表れだ。DeNAは
オースティン、
筒香嘉智、
佐野恵太、
宮崎敏郎と長打力がある強打者がそろっている。一方でチャンスメーク役がなかなか固定できない。今季打率.286、3本塁打と頭角を現した
蝦名達夫が5月中旬から一番に定着していたが、6月16日に右太もも裏肉離れで登録抹消に。二番でスタメン出場している度会は出塁が求められる打順で、期待に応える働きを見せている。
混セでチームのキーマンに
セ・リーグの新人王の有力候補と見られるのが、ドラフト1位右腕の
西舘勇陽(
巨人)、2年目の
田中幹也(
中日)、
船迫大雅(巨人)、
徳山壮磨(DeNA)だ。6月16日の西武戦(ベルーナ)に先発登板し、プロ初完投初完封で2勝目を挙げたドラフト5位右腕の石田裕太郎(DeNA)、
オリックスから加入したサブマリン右腕の
中川颯(DeNA)も今後の活躍次第では、この争いに割って入る可能性が十分にある。
度会も当然負けられない。天真爛漫なキャラクターで「スター性」を持つ稀有な存在だ。伸び伸びしたチームカラーのDeNAに入団したことも良かっただろう。春季キャンプに行われた週刊ベースボールのインタビューでは、「ロッカーの近い佐野(佐野恵太)さんとか、知野(
知野直人)さん、牧(
牧秀悟)さん、関根(
関根大気)さん、山本(
山本祐大)さん、京田(
京田陽太)さんをはじめ、本当に皆さん優しいですし良くしてくれて、いろいろと教えていただけています。なので、どなたか一人を選んで挙げるのは難しいですね。でも皆さんのことを参考にさせてもらいながらシーズンに臨みたいと思っています」と話していた。
さらに「今までの野球人生もすごく楽しかったですけど、またプロ野球という違う舞台で、新しい野球がたくさん見えてきました。いろいろな見え方や、楽しい部分があると感じています」と感謝の思いを口にしていた。
混戦が続くセ・リーグで、度会がDeNAのキーマンであることは間違いない。
写真=BBM