完全復活で先発の柱に
巨人が7月9日の
広島戦(マツダ広島)で5対3と競り合いを制して5連勝。マツダ広島は鬼門にしていたが、今季7戦目で初勝利を飾り、広島を抜いて6月6日以来の首位に返り咲いた。
打線で立役者となっているのが、途中加入のエリエ・
ヘルナンデスであることは間違いない。6月14日の
日本ハム戦(エスコンF)から16試合連続安打をマークするなど、32試合出場で打率.346、6本塁打、20打点をマーク。得点圏打率.351と勝負強さを発揮している。
坂本勇人、
門脇誠が打撃不振と誤算が相次いだ中で、打線に不可欠な存在に。そして、投手陣でもこの左腕が完全復活で先発の柱になっている。来日2年目のフォスター・グリフィンだ。
今季は3月30日の開幕2戦目・
阪神戦(東京ドーム)で7回途中6安打無失点に抑える快投で、幸先よく白星スタートだったが、4月8日に「右腹直筋の筋損傷」で登録抹消に。同月29日の
ヤクルト戦(東京ドーム)で復帰登板を飾ったが4回11安打8失点と本来の状態に程遠く、再びファームで1カ月以上調整を重ねた。
際立つ抜群の安定感
一軍に再昇格したのは6月に入ってから。8日の
オリックス戦(東京ドーム)は5回3失点で2敗目を喫したが、その後は好投を続ける。4試合登板して31回2/3でわずか2失点。打線の援護に恵まれず3勝にとどまっているが、抜群の安定感は際立っている。
7月6日のヤクルト戦(神宮)では8回4安打1失点の快投。雷雨により試合開始が1時間も遅れたにもかかわらず、失点は6回に浴びた
北村拓己の一発のみとほぼ完ぺきな投球内容だった。マウンド上ではクールな表情でアウトを重ねる左腕だが、内に秘めた闘志は熱い。好守を見せた野手に拍手や声を掛けて感謝の意を示し、ベンチに戻っても労をねぎらっていた。
他球団の首脳陣は、グリフィンについてこう分析する。
「間違いなくエース級の投手。右打者に対して内角に食い込むカットボールやスライダーをきっちり投げ込み、制球ミスが少ないのでなかなか連打が出ない。直球も145キロ前後と決して速くはないが、長身から角度があって球の威力もあるのでどうしても差し込まれる。昨年から良い投手だなと思っていましたし、攻略が難しい投手であることは間違いない」
優勝へのキーマン
昨年は20試合登板で6勝5敗、防御率2.75。コンディション不良などで投球回数は121イニングにとどまったが、オフに新たに2年契約を結んだのは球団の期待の表れだ。安定した制球力と多彩な変化球で来日当初から「日本向きの投手」と評価が高く、球団OBの
堀内恒夫氏も週刊ベースボールのコラムで「グリフィンは
ビーディよりもボールのキレがあって球持ちも良い。腕が遅れて出てくるから、バッターにとっては打ち難いタイプのピッチャーなんだ。しかも、2月の宮崎キャンプからブルペンで走者がいることを想定しながら、クイックの練習も取り入れていた。順応性もあるし、一目見たときから即座に俺は「こいつは使えるぞ!」と思ったものだよ」と絶賛していた。
夏場は日本特有の暑さに苦労する助っ人外国人が多いが、グリフィンにその心配はない。「アメリカのフロリダ州オーランドで生まれ、プロ入りまでの約20年間を過ごしました。夏は東京の気候と似ていて、冬でも気温20度以上という常夏です。オーランドはタンパベイという海まで車で行ける距離にあります。春休みなどよく海で泳いだり、釣りをしたりして遊びました。今もオフには釣りをして、スナッパー(フエダイ科)などを釣ります」と語っている。
戸郷翔征、
山崎伊織、
菅野智之と共に強固な4本柱が最後まで稼働すれば、リーグ優勝がグッと近づく。夏場はスタミナを消耗する。救援陣の負担を軽減するためにも、「夏男」のグリフィンがキーマンになりそうだ。
写真=BBM