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【大学野球】立命大史上初の屈辱…「0勝10敗」を「10勝0敗」にひっくり返すことを誓う主将・竹内翔汰

 

得点力不足で投手を援護できず


立命大の主将・竹内は今春の関西学生リーグで首位打者。左のスラッガーは「プロ志望」を明言している[写真=BBM]


 今春の関西学生リーグ、立命大の成績である。

関学大(1) 2-3●(延長10回)
関学大(2) 0-5●
関大(1)  0-1●
関大(2)  0-3●
近大(1)  1-2●
近大(2)  0-4●
京大(1)  3-4●(延長10回)
京大(2)  1-3●
同大(1)  1-4●
同大(2)  2-3●

 10戦全敗。2022年春以来、2度目の最下位だ。1982年春の新リーグ発足以降、07年秋の5連敗が最長であり、開幕から全敗は立命大としては史上初の屈辱となった。

 優勝39度の名門に何があったのか。主将・竹内翔汰(4年・創志学園高)は明かす。

「しんどかったです。昨年は投手の谷脇弘起さん(日本生命)、野手は桃谷惟吹さん(ヤマハ)と軸がいて、4回生を中心に力のあるチームでした。3回生で出場していたのは自分だけ。開幕前のオープン戦から、なかなか力が出し切れず『最下位あるぞ!!』と、発破をかけてきたんですが、現実になってしました……。現実を受け止めるしかないです」

 チーム打率.184、10得点。一方、投手陣は32失点、チーム防御率2.75。打線が援護できず、得点力不足に泣いた。竹内は言う。

「チーム力としては、少しの差だと思います。少しの食い違い。10敗していますが、10敗とも力負けではない。すべて接戦でした。圧倒的な打力がないので、少ない得点の中で勝ちを拾っていくしかありません。この春に就任した片山正之監督からも『守備のチーム』と言われています。失点を少なく、安打数が少ない中でも足を絡めて得点する。春は徹底できなかった部分を、夏の間に突き詰めてきたいと思います。対戦する5大学とのちょっとの差を日々の練習、生活で変えていく。この秋に『0勝10敗』が『10勝0敗』にひっくりかえってもおかしくない。自分たちに、できないことはないと信じています」

 対戦校から学ぶこともあった。この春は、2019年秋以来となる勝ち点2の4位。史上最高タイの順位に躍進した京大である。

「弱い部分を素直に認めて、一方で強みを生かしていくことが周知されていました。それは、相手校を分析、研究した上で動く組織力。考える野球で他校との技術差を埋めていたんです。自分たちも現状に置かれた状況を冷静に見極めて、正しい方向へ進んでいきます」

一塁ベンチに掲示された4部門の目標数値


 主将・竹内はこの春、チーム状況が厳しい中でも自らを見失わずに、目の前の一球に集中した。打率.333で初の首位打者を獲得。相手校が不動の四番・竹内を徹底マークしてきた状況下で結果を残したのは、価値がある。「自分としては地力がついたかな、とは思いますが、まだ40パーセントぐらいしか、実力を発揮できていません」。どん欲な左打者である。

吉田正尚選手(レッドソックス)のように、率を残せて、長打も打てる打者が理想です。しかも、守れて、走れる選手を目指しています」。50メートル走6秒2、遠投100メートルと、攻守走でレベルの高い外野手は「プロ志望」。この秋は打率4割、4本塁打を目指しており、ラストシーズンに立命大を勝利へ導いた上で、希望進路をつかむ戦いが続く。

 リーグ戦後、立命大OBの古田敦也氏(ヤクルト元監督)がグラウンドに訪れ、講演が行われた。レジェンドからの言葉は部員の心に響き、巻き返しの秋へ、貴重な時間となった。24年のチームスローガンは「圧倒的王者」。学生野球である以上、グラウンドだけではなく、学校生活・寮生活の充実も図ってきた。技術面では課題克服のため、チームは動いた。

立命大グラウンド一塁ベンチには秋のリーグ戦に向けた、具体的な目標が掲示してある。部員たちは理解し、行動し、努力を重ね、実践していくのみだ[写真=BBM]


 グラウンドの一塁ベンチには、4部門の目標数値が掲示。ピラミッド型になっており、一つひとつ段階を積み重ね、最終到達点を目指す。投手は「与四死球0、チーム防御率1.50」。守備は「守備率10割」。走塁は「シーズン15盗塁、3S(スタート、走路、スライディング)」。竹内の得意分野である打撃は「ライナー、間を抜くヒットを目指す→ファーストストライクをとらえる→簡単に三振しない→チーム打率.280→1試合4得点以上」と、明確な設定が示されている。

 4部門のほかに「チーム」の項目もある。

「幹部の行動→4回生の団結→組織としての完成→リーグ優勝」

 頂点まで、4つのステップを踏んでいく。2019年春以来のV奪還へ、立命大は主将・竹内を中心に一つの束となって歩んでいる。

文=岡本朋祐
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