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ファーム暮らしの試練も…他球団が「岡本和真と同じぐらい厄介」警戒の強打者は

 

攻守で精彩を欠きスタメンマスク減


「五番・一塁」でチームの勝利に貢献している大城


 阿部慎之助監督が就任1年目の巨人は前半戦を終え、今季最多の貯金8で首位ターン。4年ぶりのV奪回に向け、ここまでは上々の戦いぶりと言えるだろう。

 開幕から順風満帆というわけではなかった。深刻な貧打にあえいだ時期があったが、5月下旬に途中加入したエリエ・ヘルナンデスが起爆剤に。そして、五番打者を固定できたことも大きい。春先は坂本勇人が起用されていたが打撃の状態がなかなか上がらず、日替わりでさまざまな選手を起用していた。五番打者は重要な役割だ。ポイントゲッターとして稼働しなければ、不動の四番・岡本和真が相手バッテリーに勝負を避けられてしまう。白羽の矢を立てられたのが、本職の捕手で出場機会を減らしていた大城卓三だった。

 昨年はWBCで侍ジャパンのメンバーとして世界一を経験。シーズンも134試合出場し、打率.281、16本塁打、55打点をマークした。自身初の規定打席に到達し、2度目のベストナインを受賞。選手会長に就任した今季も正捕手として活躍が期待されたが、攻守で精彩を欠き、同期入団の岸田行倫が先発マスクをかぶる機会が増えた。大城は5月に入っても打率1割台の低空飛行が続いたため、ファーム降格に。約3週間汗を流し、一軍に再昇格した。

新たな役割で躍動


 試合に出ることに飢えていた。阿部監督に新たに託された役割は「五番・一塁」だった。6月23日のヤクルト戦(東京ドーム)で990日ぶりに一塁で先発出場すると、3回に左越え二塁打。25日のDeNA戦(新潟)でもマルチ安打で勝利に貢献した。即座に結果を残したことで精神的に楽になっただろう。ファームで「少年のような(純粋に楽しむ)気持ちは大事」と野球に取り組む姿勢を見つめ直したことで表情に明るさを取り戻した。

7月13日のDeNA戦では一塁からホームまで激走を見せた


 7月13日のDeNA戦(東京ドーム)では、6回無死一、三塁の好機に四球で出塁すると、門脇誠の右翼フェンス直撃の打球で一塁から本塁生還の激走。足が速いとは言えないが、体をひねってうつ伏せになりながら右手で本塁をタッチした。リプレー検証でセーフの判定が覆らなかったことを確認すると、ベンチは大盛り上がり。大城は満面の笑みでナインたちとハイタッチを繰り返していた。

 五番で固定されて19試合連続出塁と不可欠な存在に。7月20日の中日戦(バンテリン)では1点リードの3回に岡本和が四球で出塁し、二死満塁の好機で打席が回ってくると右前にはじき返す2点適時打。一塁ベース上から三塁側ベンチに向かって笑顔を浮かべると、阿部監督も両手で拍手して称賛していた。中日に1点差まで追い上げられたが、貴重な追加点をたたき出した大城の一打が効いて逃げきる形に。試合後のお立ち台では、「自分も後ろにつなぐ気持ちで打席に立ったら、いい結果が出たので良かったです。僅差のゲームを勝ちきればチームに勢いもつくと思うので、これからも僅差のゲームを勝ちきれるようにやっていきたいと思います」と誓っていた。

五番で活躍し続けることがVへのカギ


 五番での成績は23試合出場で打率.347、2本塁打、9打点。出塁率.430と申し分ない成績を残し、不慣れな一塁の守備もそつなくこなしている。他球団のスコアラーは「もともと打撃はいい選手。バットが振れているし、長打があるので走者を置いて回したくない。岡本は怖い打者ですが、今の大城は同じぐらい厄介です」と警戒を口にする。

 捕手でのスタメン出場は減っているが、こだわりは当然あるだろう。配球面がやり玉に挙げられることが多いが、キャッチングのうまさや強肩を生かしたスローイングに定評がある。リード面も決して評価が低いわけではない。昨年先発ローテーションで初の2ケタ勝利をマークした山崎伊織が、「大城さんが、僕の調子が悪いときにどうリードしていったら崩れないか、というのをすごく考えてやってくれていたし、自分の考えと合っている感じがした」と強い信頼を口にしていたことが印象的だった。

 一塁で試合に出続けることは、今後の野球人生で必ず生かされることだろう。後半戦も大城が五番で固定できる活躍を見せられるか。

写真=BBM
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