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巨人の23歳成長株に覚醒の予感 他球団が「今永昇太と重なる」警戒の左腕は

 

成長の跡を見せている投球


後半戦で先発ローテ定着を狙う井上


 4年ぶりのV奪回を目指す巨人。前半戦は首位で折り返し、後半戦初戦となった26日のDeNA戦(横浜)は5対2で快勝。貯金を今季最多の9に増やした。勝負の夏場は若手の台頭が期待される。その筆頭格が高卒5年目の井上温大だ。

 前半戦は先発、中継ぎで計15試合登板し、3勝4敗2ホールド、防御率3.60をマーク。左腕から最速153キロを計測する直球が大きな武器で、課題だった変化球もスライダー、フォーク、カットボール、ツーシームの精度が上がってきている。期待の若手成長株として毎年のように名前が挙げられ、ファームでは格の違いを見せていたが、一軍ではなかなか結果を残せなかった。変化球でストライクが取れず、直球で痛打を浴びる。ファームでは不利なカウントでも直球で空振りやファウルを奪えたが、一軍の強打者には通じない。試合中の修正力も課題だった。

 ただ、今季の井上は成長の跡を見せている。象徴的なマウンドが、地元・群馬で凱旋登板となった7月3日の中日戦(前橋)だ。立ち上がりは制球が上ずっていたが、イニング間に修正して6回まで無四球の快投。走者を背負っても崩れなかった。6回に一死一、三塁のピンチを招いたが、カリステをフォークで三ゴロ併殺打。7回は一死から初四球で初出塁を許したが、木下拓哉をフォークで遊ゴロ併殺に仕留めた。8回の無死一塁の場面も宇佐見真吾を直球で二ゴロに打ち取り、3イニング連続の併殺打。力勝負ではなく、「大人の投球」で3勝目を挙げた。

高めにホップするような軌道の直球


 他球団の首脳陣は「昨年までは常に目いっぱい投げていた印象だったが、今年は打者を見て落ち着いて投げているイメージがあります。変化球でストライクを取ることに苦しまなければ、これぐらいの投球をしていても不思議ではない。特に厄介なのが高めにホップするような軌道の直球ですね。今永昇太(カブス)と重なります」と分析する。

 井上がお手本とする左腕が今永だ。22年のオフに自主トレに弟子入りした際は、多くのことを学んだ。週刊ベースボールのインタビューで直球に対する思いを聞かれ、以下のように語っている。

「球速にはあまりこだわっていないですね。やはりキレが大事だと思います。ただ回転数とかも見るんですけど、別にそこを上げようと思ってやっているわけではないので。そこが良くても悪くても、試合で抑えられる場合がある。だから球速や回転数を突き詰めるのではなく、どうしたら打者を抑えられるかを考えながらやっていきたいです」

メジャーで活躍する今永


メジャーで持ち味を発揮している今永[写真=Getty Images]


 球速ではなく、打者を抑える直球の質を追い求める。DeNAから昨オフにポスティング・システムでカブスに移籍した今永はそのスタイルを体現している。140キロ台後半の高めに浮き上がる直球を効果的に今季18試合登板で8勝2敗、防御率2.86。メジャー移籍1年目で球宴の舞台に登板した。DeNA時代は決して順風満帆だったわけではない。プロ7年目の22年。左肩のクリーニング手術から復帰した21年のシーズン中に、直球に対しての考え方が変わったことを明かしていた。

「今は真っすぐで抑えてやろうとか、そういう考えはなくて、強引に力勝負だけに頼らない姿勢が伊藤光さんの配球とあいまってハマっているのかもしれません。それは『よし』とする部分だと思います。ストレートがまだまだと思っているからこそ丁寧な投球につながったり、『この打者は強引に勝負したら打たれるな……』と考えられるようになってきています。手術前までは元気に腕を振れば、抑えられたかもしれないけど、今はそうじゃないことを自分が自覚しています。冷静に投げられている部分はあるのかなと思います」

 井上も殻を破るためには、打者を見る洞察力を磨き、良いパフォーマンスの再現性を高めることが重要になる。7月17日の阪神戦(東京ドーム)は5回途中3失点。ボール球先行の投球で、最後までリズムを作れなかった。先発ローテーションに定着するためには、状態が悪くても試合を作る能力が必要になる。

 27日のDeNA戦(横浜)に先発する。将来を嘱望される左腕にチームを勢いづける快投を期待したい。

写真=BBM
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