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首位陥落の巨人 内外野3つのポジション守る「岡本和真の起用法」がカギに

 

高く評価されるべき貢献度


四番、主将としてチームを勝利に導く岡本和


 8月1日の阪神戦(甲子園)で同一カード3連敗を喫した巨人。首位から陥落したが、本当の勝負はこれからだ。

 今年から就任した阿部慎之助監督は、チーム状況を見極めて臨機応変にテコ入れしてきた。開幕時は一塁・岡本和真、遊撃・門脇誠、三塁・坂本勇人の布陣で固定する方針だったが、門脇、坂本の打撃の状態が上がらないため、スタメンから外すようになる。深刻な貧打の打開策として、6月下旬以降に大城卓三を五番に抜擢。本職は捕手だが今季は岸田行倫の台頭で、ベンチスタートが増えていた。大城を一塁で起用し、岡本和は三塁へ。この用兵術がハマり、途中加入したエリエ・ヘルナンデスと共に得点力アップの起爆剤になった。

 そして、ファーム調整していた坂本が復帰し、三塁、遊撃を守るココ・モンテスが加入後はポジションを再びシャッフルした。岡本和を左翼に回す超攻撃的布陣に。スポーツ紙デスクは、「複数のポジションを守れる岡本がいるからこそ、いろいろなバリエーションで打線が組める。この貢献度は高く評価されるべきです」と絶賛する。

 三塁で2021年から2年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得し、安心して見ていられる。左翼もそつなくこなす。このような起用法は今年が初めてではない。18、19年も一塁、三塁、左翼の3つのポジションを守っている。ただ、球界を代表する不動の四番に進化した強打者がこのような起用法になるのは珍しい。それだけ、守備能力が高い証しと言える。

勝利に直結する四番の打棒


 守備だけでなく、勝負強い打撃でもチームに貢献している。今季初めて左翼でスタメン起用された7月17日の阪神戦(東京ドーム)。1点を追いかける4回に大竹耕太郎のスライダーを左前に運び、同点に追いつく足掛かりになると、5回も集中力を最大限に高めた。一死一塁で大竹のカットボールを振り抜き、左中間フェンス直撃の決勝打。お立ち台では「僕はあんまり試合中に汗をかかないんですけど、今日はめちゃめちゃ汗をかきました。(一塁)ベンチから左翼まで距離が長いので」とスタンドの笑いを誘い、「また勝てるように頑張りますので応援よろしくお願いします」と呼びかけて大きな拍手が降り注がれた。

左翼を守る岡本和


 主砲が打てば、チームが勢いづく。「四番・左翼」で出場した7月27日のDeNA戦(横浜)では、1点リードの5回に森唯斗の真ん中高めに浮いたフォークボールをきっちりとらえ、左中間フェンス直撃の適時二塁打。リーグトップの55打点に伸ばした。ただ、相手バッテリーのマークが厳しいため、なかなか甘い球が来ない。7月13日のDeNA戦(東京ドーム)から14試合連続ノーアーチ。敵地・甲子園での阪神3連戦も13打数2安打、5三振と封じ込まれた。

V奪回への熱い思い


 3度の本塁打王に輝くなど6年連続30本塁打以上をマークしている主砲だが、リーグ優勝は20年以来遠ざかっている。22年からは2年連続Bクラスに沈む屈辱を味わった。巨人の球団創設90周年のメモリアルイヤーを記念して6月3日に発売された『ジャイアンツ90年史』では、坂本との新旧主将対談で、V奪回への熱い思いを吐露している。

「キャプテンだからどうというだけではなくて、2年連続Bクラスというのは僕らにとって、チームにとって名誉なことではないですから。歴史的にそうした経験の少ないチームが、自分たちの時代にそれをしてしまったというのは情けないことなので。今年はやり返さないといけないという気持ちはありますね」

「『常勝軍団』って言われる中でずっとやってきているというところはありまよね。『勝つ集団』であるべきだって。それが伝統なのかな。僕も知らない時代ですけど、ON、V9という時代があって、そこから続いてきた伝統というものは、ジャイアンツという球団にいると節々に感じる部分はあります」

 緊張感あふれる試合は今後も続く。頂点に立つために、攻守での活躍が不可欠であることは間違いない。岡本和をどの守備位置に入れて打線を機能させるかも、チームの命運を握る大きなカギになりそうだ。

写真=BBM
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