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昨季4勝のみも…モデルチェンジに成功して最多勝狙える「巨人の右腕」は

 

2年ぶりの2ケタ勝利


今季、完全復活を果たした菅野


 優勝争いを繰り広げる中で、ベテランの復活は明るい材料だ。巨人菅野智之は今季16試合登板で10勝2敗、防御率1.95。5月中旬に体調不良で先発ローテーションを1回飛ばした以外はきっちり稼働している。10勝はリーグトップタイで勝率.833もリーグトップ。34歳右腕は完全復活し、投手タイトルを十分に狙える位置につけている。

 7月28日のDeNA戦(横浜)では、3年ぶりの完封勝利を飾った。走者を背負っても動じない。6回一一死一、二塁のピンチは四番・牧秀悟をフォークで遊ゴロ併殺打。9回も一死一、二塁で蝦名達夫をフォークで空振り三振、柴田竜拓をスライダーで中飛に仕留めて本塁を踏ませない。117球を投げ切り、8奪三振無四球の快投でDeNA打線を完璧に封じた。

 8月4日のヤクルト戦(東京ドーム)もテンポ良い投球で凡打の山を築く。直球の最速は150キロで三振は4つと多くないが、多彩な変化球を駆使して打者を打ち取る。7回5安打1失点で2年ぶりの2ケタ勝利に到達。「うれしいですけど杉内(杉内俊哉投手)コーチ、内海(内海哲也投手)コーチと最低15勝という目標があるのでそこまで頑張ります」とお立ち台で宣言した上で、「今年ダメだったらということを考えて、野球人生をかけて臨んでいるので……そういう気持ちです」と表情を引き締めていた。

抜群の制球力で操る変化球


7月28日のDeNA戦で3年ぶりの完封勝利をマーク[右は阿部監督]


 野球人生の分岐点を迎えたシーズンだった。かつては絶対的エースとして君臨していたが、近年は度重なる故障でパフォーマンスに陰りが見えていた。昨年は14試合登板で4勝8敗、防御率3.36。投球回数もプロ入り最少の77回2/3にとどまった。阿部慎之助新監督が就任した今季は先発の座が確約されていたわけではない。菅野自身も置かれた立場を分かっていただろう。春季キャンプで順調な仕上がりを見せ、オープン戦でも結果を出して先発ローテーションの6枠目を勝ち取った。

 直球の平均球速は140キロ台後半と全盛期より落ちているが、カットボール、スライダー、フォーク、ツーシーム、カーブを抜群の制球力で操る。今季16試合全登板でバッテリーを組む小林誠司の存在も大きい。すべてを知り尽くす女房役が絶妙の配球で組み立てる。阿吽の呼吸で投げ込む球は大胆かつ繊細だ。

かつての球団エースの分析


 現役時代に巨人のエースで通算203勝をマークした野球評論家の堀内恒夫氏は、菅野が復活した理由について、週刊ベースボールのコラムで以下のように分析している。

「大変身の理由として、今季から監督に就任した阿部慎之助の配慮も見逃すことができない。昨季とは異なり、中6日で先発した菅野をほとんどの場合、100球程度を目安に、無理をさせずに投げさせている。その結果、ここ数年ケガに泣かされ続けた菅野の体調は万全なものになった。もうひとつは菅野の持ち球であるスライダーの使い方に大きな変化が見られるということ。今季は球速の落ちた真っすぐに見切りをつけて、スライダーで投球を組み立てるようになった。加えて得意のスライダーを各打者のインコース、アウトコースへ投げ分けるテクニックを身に付けている」

「例えば右打者のアウトコースだけでなく、インコースのボールゾーンからストライクゾーンへ入り込む“インスラ”を投じるようになった。左打者に対してはインコースへ食い込むだけではなく、アウトコースのボールゾーンからストライクを取りにいく“外スラ”を駆使するようにもなった。高度な投球術によりスライダーを投げ損なうミスがほとんどなくなり、今季の好結果を引き出したと言える。スライダーを多投する今季の菅野は、『抑えるときもスライダー』『打たれるときもスライダー』という昨季とは大きな投球パターンの変化が見られるようになった。しかも、真っすぐとスライダーの割合も6対4程度となり、スライダーの球数が急増している。すべてのスライダーを勝負球に使うことが可能になれば、昨季まで懸念されていた『立ち上がりの不安』も解消される」

 菅野の活躍は、戸郷翔征山崎伊織のダブルエースや若手投手たちにも良い刺激になるだろう。勝負の夏場で白星をいくつ積み重ねられるか。15勝をクリアし、自身4度目の最多勝は達成可能な目標だ。

写真=BBM
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