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岡田彰布監督が野球評論家のときから絶賛…阪神支える「縁の下の力持ち」は

 

替えの利かない存在


貴重なリリーフ左腕として存在感を発揮する桐敷


 珍しい光景だった。8月8日の阪神ヤクルト(神宮)。阪神が5点リードの8回に二番手の桐敷拓馬がマウンドに上がったが、サンタナ村上宗隆に連続適時打を浴びるなど2失点。一死しか奪えずマウンドを降りた。ただ、阪神が首位争いに踏みとどまれているのは、この左腕が「縁の下の力持ち」として稼働しているからこそ。セットアッパーでリーグトップの48試合に登板し、3勝0敗28ホールド、防御率2.06の好成績をマークしている。

 起用される場面は、勝敗の分岐点となるマウンドが多い。7月30日の巨人戦(甲子園)では4点リードの7回一死満塁で、先発・才木浩人の後を引き継いだ。丸佳浩を150キロの内角高めの直球で一ゴロ。併殺崩れで1点を失ったが、代打・坂本勇人は151キロの外角いっぱいに決まる直球で見逃し三振を奪った。最少失点に抑え、試合の主導権を相手に渡さない。一塁ベンチに引き上げる際は、阪神ファンから大きな拍手が注がれた。桐敷の強みは左打者の内角に直球、ツーシームと速い球を投げ切れることだ。制球力だけでなく、マウンド度胸がなければ腕を振れない。8月2日のDeNA戦(横浜)でも、好リリーフでチームを救った。

 8回にDeNAに2点差に追い上げられ、なお二死満塁のピンチで登板すると佐野恵太に対して強気の投球を貫く。初球、2球目と内角高めのツーシームでファウルを奪って追い込むと、5球目のフォークで二ゴロに。DeNA打線の反撃を断つ快投で逃げ切った。

岩崎優ゲラは調子を落とした時期があったが、桐敷は好不調の波が少なくずっと抑えている。貢献度で言えば、才木浩人と並んでMVP級の活躍だと思います。いなかったらと思うとゾッとします。替えの利かない存在ですね」(スポーツ紙記者)

監督就任以前から注目


 岡田彰布監督は、評論家で見ていたときから桐敷の実力を高く評価していた。入団1年目の春季キャンプを見て、週刊ベースボールのコラムで以下のように語っている。

「オレは短いキャンプチェックで『掘り出しもの』を見つけていました。あれは2月5日の阪神宜野座キャンプやった。ブルペンでのピッチングを見たのだが、今年はブルペンの中に入ることができず、横からのチェックとなった。そこに現れたのがドラフト3位の桐敷拓馬やった。まず驚いたのが体のつくりやった。しっかりとした下半身、太ももの太さにビックリした。すでにプロの体よ。ルーキーという言葉からくるひ弱さはまったくなし。そこからピッチングに入ったのだが、とにかくキレがいい。ストレートを内外角に投げ分け、コントロールも心配なし。弱点、欠点らしきものがまったく見当たらない」


「要するに新人が登用される背景には、チームの事情が鮮明にあり、タイミングがいかに重要であるか。それを踏まえて考えれば2022年、阪神の投手陣に必要なのは左腕である。そこに出現したルーキーの桐敷。まだまだポジションを決める必要はないが、先発でもセットアッパーでもこなせる投手に違いない。今後、オープン戦が始まり、新人にはテストが繰り返し行われる。ここを乗り切り、勝ち残ったものが開幕一軍、レギュラー、先発ローテーションに入るわけよね。まだまだハードルは高く、そして長く続くが、オレが見て感じた掘り出しものの桐敷に、皆さん注目してください」

「スペードのエース」として


 岡田監督が就任1年目の昨季、フレッシュオールスターでの好投が目に止まり、後半戦から救援に配置転換。25試合登板で14ホールド、防御率0.94と抜群の安定感でリーグ優勝、日本一に大きく貢献した。今季は春先からセットアッパーとして活躍し、監督選抜で自身初の球宴に出場。2戦目で全セの六番手として7回から登板し、先頭打者の岡大海(ロッテ)に右翼スタンドへソロを浴びたが、この試合で4打数4安打と絶好調の近藤健介(ソフトバンク)を二ゴロ併殺打に仕留めた。

 登板試合が多いことで疲労が気になるところだが、勝負の夏場も桐敷の力は不可欠だ。岡田監督が「スペードのエース」と絶賛する左腕がリーグ連覇に向け、荒れたマウンドできっちり仕事をする。

写真=BBM
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