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天才的なミートセンス…阪神の成長株に他球団から「森友哉と重なる強打者」

 

左投手を苦にしない打撃


8月11日の広島戦で第3号アーチを放った前川


 逆転優勝を狙う阪神。ポイントゲッターとして期待が大きいのが、高卒3年目の前川右京だ。

 昨年は33試合出場で打率.255、0本塁打、7打点をマーク。8月以降は体調不良や故障が重なり一軍の舞台に戻ることができなかったが、爪痕はきっちり残した。外野の定位置獲りを狙う今季は開幕から一度もファームに降格することなく、奮闘している。

 5月31日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、2点差を追いかける6回無死一塁で美馬学の高めに浮いた直球を右翼席に運ぶ同点2ラン。通算196打席目でプロ初アーチを放つと、2号は満塁アーチだ。6月16日のソフトバンク戦(みずほPayPay)で初回一死満塁の好機に石川柊太の直球を右翼席に運んだ。

 左打者の前川は左投手が先発の際にスタメンを外れる機会が多いが、決して苦手にしているわけではない。8月11日の広島戦(京セラドーム)で2点リードの4回に左腕・黒原拓未の外角低めの直球を完璧に捉え、3号右越えソロ。3年ぶりの一軍登板で白星をつかんだ高橋遥人をアシストした。データを見ると対右投手は打率.271に対し、対左投手は打率.308と相性が良い。今後は左右関係なくスタメンで出場し続ける可能性が十分にある。

卓越したミートセンス


 前川の魅力は長打力だけではない。他球団の首脳陣は「スイングスピードが速く、ローボールに強い。直球に強い選手は変化球に脆さを見せるケースが多いけど、彼の場合は変化球にタイミングを崩されかけても右手一本で巧みにミートして広角に安打を打てる。打撃スタイルが森友哉(オリックス)と重なります。穴がない打者なので神経を使います」と警戒を強める。

 卓越したミートセンスを見せた打撃が、8月8日のヤクルト戦(神宮)だった。同一カード3連敗は阻止したい一戦で、同点に追いついた4回に一死三塁の好機に打席が回ってきた。2ボール2ストライクと追い込まれたが、吉村貢司郎の外角低めに落ちるフォークを左前にしぶとく弾き返す勝ち越しの適時打。何が何でも三塁走者を還したい場面で、殊勲の一打が決勝打となった。

自身が語る打撃論


センス抜群のバッティングは非常に魅力的だ


 前川は週刊ベースボールのインタビューで、自身の打撃論について以下のように語っている。

「今年は、体と心の面をまずはしっかり変えていきたいと思っていました。一方で、打撃の面では、特に大きく変えたことはないです。ただ、打撃フォームの中で、バットの軌道、出していく角度や形などが一定になっているか、ということをバッティングコーチと話し合いながら、そして見てもらいながら打撃フォームを固めていっていますし、いまもそうしています」

「僕の中に打撃での固定概念があまりないんです。自分の中で、打撃はこうしたいという軸はあるんですが、それ以外のところは別にどう打っても、それが悪いとは思わないんです。こう打たなければいけないということも思っていないんです。一軍ではそれがすべてだと思っています。何事も結果がすべてなので。打撃の内容がよくても、結果としてヒットにならず数字が残らなければ意味がないと思っているんです。最終的に皆さんに見られるのは結果なので。一軍は数字で評価される世界。だからこそ、結果を出すために準備が必要になってくると思います」

 岡田彰布監督の期待も大きい。混戦の戦いが続く中、シーズン途中で戦力補強を行わなかったのは、前川を含めた現有戦力に自信がある表れといえる。週刊ベースボールのコラムでこう語っている。

「今年7月31日をもって、補強の期限は終わった。ファンの間では『トレードは?』とか『新外国人選手を獲得すれば』といった声があったことは伝え聞いていたけど、補強はなしで終了した。もちろんポジションの問題もあり、条件が整わないのもあったけど、オレは何より選手のプライドというのかな、それを重く考えた。1年前に選手が得た自信。それが優勝、日本一につながり、それぞれにプライドが芽生えたはずよ。これを大切にしたい。結果が出なかった時期、みんなが『こんなはずではない』と感じた。日本一のプライドが崩れそうになっただろうが、チームにはほかに負けない底力がある。それを結果に出す時がきた。オレはこれに期待したわけよ」

 首位・広島と3ゲーム差。球団史上初のリーグ連覇に向け、本当の勝負はこれからだ。

写真=BBM
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