先発陣で存在感を発揮
3年連続2ケタ勝利が目前となる9勝を挙げている戸郷
首位争いを繰り広げる
巨人の投手陣を牽引するのが、
戸郷翔征と
山崎伊織だ。
戸郷はエースとしての地位を駆け上がっている。8月8日の
広島戦(東京ドーム)で自ら適時打を放ち完封勝利を飾ると、4年ぶりの中5日登板となった14日の
阪神戦(東京ドーム)でも無四球完封勝利で9勝目をマーク。球団創設90周年を迎えた今季は5月24日の阪神戦(甲子園)でノーヒットノーランを達成。お立ち台で「前回の阪神に6点取られて、ふがいないピッチングをしてしまったのでなんとかやり返そうと思って完封で返せました」と目を輝かせた。20試合登板で9勝6敗、防御率2.15。138イニングはリーグ2位だ。
山崎も安定感で戸郷に引けを取らない。8月12日の阪神戦(東京ドーム)で6回2/3を2安打無失点の快投で8勝目をマーク。抜群の制球力で7回まで先頭打者を一度も出すことなく、二塁すら踏ませない。プロ3年目の昨年は自身初の2ケタ勝利をマーク。
今年の開幕前に週刊ベースボールのインタビューで、「実績のある新しい人たちが入ってきて、ドラフトでも社会人をはじめ即戦力と言われるピッチャーがいっぱい入ってきましたから。去年よりも競争意識があるピッチャー陣になっているので、それがモチベーションになりますし、さらに『頑張ろう』と思えるので。その中でも個人として、去年よりも勝ちたいですし、去年よりも抑えたいですし、去年よりも投げたい。リーグ優勝して、日本一になるということを常に考えながら、1年間最後まで、しっかり先発として投げられるようにしたいです」と誓っていたが、18試合登板で8勝4敗、防御率1.87と有言実行の投球を続けている。
ドラフト6位、2位で指名
両右腕は共に他球団が「ドラフトで指名を見送った投手」だった。戸郷は聖心ウルスラ高で2年夏にエースとして甲子園に出場。3年夏は県大会の決勝で敗れたが、その後に開催されたU-18日本代表の壮行試合で、宮崎県選抜のメンバーとして登板して5回1/3で9奪三振の快投を見せた。結果を出しているにもかかわらず、巨人がドラフト6位で指名するまで名前が呼ばれなかったのは、独特の投法が一因と言われた。「あの投げ方は肘に負担がかかり故障しやすい」と他球団のスカウトから指摘する声が実際に聞かれた。
だが、プロ入り後は高卒2年目から巨人の先発ローテーションに入り、2022年に最多奪三振(154)のタイトルを獲得し、2年連続12勝をマーク。ドラフト1位指名で大きな注目を集めた
根尾昂(
中日)、
藤原恭大(
ロッテ)、
吉田輝星(
オリックス)と完全に立場が逆転した。
さらに進化したピッチングで勝ち星を積み上げる山崎
山崎は東海大でリーグ戦通算17試合登板、11勝1敗、防御率1.09をマーク。3年春、秋とリーグMVPを獲得し、「ドラフト1位間違なし」と評されていたが、4年時に右肘の不調を訴えて6月にトミー・ジョン手術を受けた。プロ志望届を提出したのはドラフト会議の3週間前。手術明けでプロ1年目はリハビリに専念しなければいけないため、他球団は指名を見送ったが、巨人は将来のエース投手として素質を高く評価し、ドラフト2位で指名した。
強力な先発3本柱
アマチュアを取材するスポーツ紙記者は「固定概念や目先の結果に捉われず、戸郷と山崎の指名を決断した巨人のドラフト戦略が評価されるべきでしょう。復活した
菅野智之を含めて強力な先発3本柱がシーズン最後まで安定した投球を続ければ、4年ぶりのV奪回がおのずと見えてきます」と語る。
今年から
阿部慎之助監督が就任。山崎は投手陣全体の変化について聞かれると、以下のように語っていた。
「やっぱりキャッチャー出身の方なので、ピッチャーに対して『どういうふうにしてほしい』というのがあると思いますし、それをしっかり言葉で伝えてくれます。キャッチャーでどれだけ活躍された方かというのは誰もが知っていますし、言い方が難しいんですけど、阿部さんの言葉には説得力があるというか、支えてもらえるというか……。これは本当に例えばなんですけど、『こういう場面ではど真ん中でドンドン行こう』と言われたら、『阿部さんが言ってるんだから、行けるんちゃうか』みたいな。迷いなく、前向きにその言葉を実践していける。そんな感じがありますね」
両右腕が切磋琢磨し、黄金時代を切り拓くことを巨人ファンは待ち望んでいる。
写真=BBM