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広島首位争いの立役者 他球団が衝撃の「松井稼頭央超える逸材」は

 

メジャー・リーガーに近いが手堅い守備


身体能力の高い遊撃守備でチームの勝利に貢献している矢野


 常人離れした守備能力は試合の流れを変える。広島の「守備職人」で思い浮かぶのが、菊池涼介だ。広い守備範囲と球際の強さで驚きのプレーを連発し、「二塁の守備を変えた」と形容された。2013年から10年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞。今年も再三好守を見せている。そして、二遊間を組む「菊池の相棒」も球界に衝撃を与えている。プロ4年目の矢野雅哉だ。

 他球団のコーチは驚きを口にする。

小坂誠さん(元ロッテほか)、宮本慎也さん(元ヤクルト)、石井琢朗さん(元横浜ほか)など遊撃の守備で名手と呼ばれた人を見てきましたが、矢野は違うタイプです。身体能力がすごくメジャー・リーガーに近いですが、手堅い。三遊間で追いつくのがやっとの打球を捕球したあとにノーバウンドで一塁に送球できる。松井稼頭央さん(元西武ほか)もすごかったけど、衝撃はそれ以上です。日本にもこういう選手が出てきたかという驚きがありますね」

好守で勝利を呼び込む


 身長171センチ、体重70キロと恵まれた体格ではない。だが、超人的な守備で幾度もチームを救っている。8月3日の中日戦(マツダ広島)では2回に中田翔の二遊間への強烈な打球をダイビングキャッチすると、一塁へ完璧な送球で内野ゴロに。森下暢仁が驚きの表情を浮かべて称えていた。8月9日の阪神戦(京セラドーム)は3点差に追い上げられた8回二死一塁で、代打・原口文仁の打球が三遊間深くに転がった。懸命に追いかけてバックハンドで捕球すると、体をひねって一塁に送球。驚異のノーバウンド送球で間一髪アウトにした。広島ファンだけでなく、阪神ファンからもどよめきが起きた好守だった。

 菊池が9回に逆転サヨナラ3ランで勝負を決めた8月14日のDeNA戦(マツダ広島)でも試合の流れを変えたのは、矢野の攻守だった。先発の床田寛樹がリズムをつかめず、3点を失ってさらに4回二死一、三塁のピンチで、桑原将志の打球が三遊間へ。直前に高くバウンドしたがグラブを伸ばして捕球すると、二塁へジャンピングスローでアウトに。床田に「ありがと!」と声を掛けられ、スタンドからも大きな拍手が送られた。

勝負強いバッティングも光っている


 課題だった打撃でも勝負強さが光り、得点圏打率.300をマーク。パンチ力があり、6本の三塁打はリーグトップだ。16犠打、9盗塁と小技、機動力での貢献度も高い。本職が遊撃の小園海斗が三塁を守る形で、遊撃のレギュラーに定着している。

大きな刺激になる存在


 大きな刺激になる存在がいる。社会人野球・三菱重工Eastでプレーする兄の矢野幸耶だ。7月に開催された都市対抗では、「一番・遊撃」で先発出場した決勝のJR東日本東北戦で大活躍。初回、3回に2打席連続アーチを放つと、1点差に詰め寄られた5回に左中間へはじき返す適時打で3打点とチームの全得点をたたき出し、悲願の初優勝に導いた。

 決勝戦が行われた7月30日は30歳の誕生日で、「日程を見たときに、勝ち上がっていけば決勝が誕生日だと分かっていたので、それがプレッシャーになって(決勝戦まで)ノーヒットだったのかもしれません。ただ、決勝も『ノーヒットでいい。その代わりに、チームへ流れを持ってこられるスイングをしよう』と思っていたのですが、今日はラッキーボーイでした」と安どの表情。決勝戦の前夜に矢野と電話で話したことを明かし、「弟から『打たなくていいから優勝しろ』と言われたので、『生意気だな』と返しました。決勝は自分が打って勝ったので、もう何も言わせません」と笑顔を見せた。兄の活躍は、矢野の発奮材料になっているだろう。

 16〜18年に球団史上初のリーグ3連覇を飾った広島だが、19年から4年連続Bクラスに。新井貴浩監督が就任した昨季は夏場以降に息切れして2位に終わった。6年ぶりのV奪回を狙う今季は安定力抜群の投手陣と強固な守備陣で「守り勝つ野球」を遂行し、265失点はリーグ最少。白星を重ねて首位につけている。残り39試合。1つも落とせない試合が続く中、攻守でチームをもり立てる矢野は不可欠な存在だ。

写真=BBM
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