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阪神から移籍で大活躍 巨人に不可欠な「ナインに愛される右腕」は

 

期待が大きいリリーバー


シーズン終盤の優勝争いで、ケラーの存在は欠かせない


 突き放されるわけにはいかない。巨人が8月21日の広島戦(東京ドーム)で4対1と逆転勝利を飾り、首位・広島とのゲーム差を再び1に縮めた。この試合では同点の8回に救援したアルベルト・バルドナードが先頭打者の秋山翔吾に四球を与えたが、続く野間峻祥をスライダーで空振り三振に取り、岸田行倫の好送球で代走・羽月隆太郎の二塁への盗塁を阻止。一気に二死を取ったことで試合の流れを引き寄せ、直後に四番・岡本和真の勝ち越し3ランを呼び込んだ。

 これからも試合終盤まで手に汗握る拮抗した試合が続くだろう。カギを握るのが救援陣だ。守護神・大勢につなぐ「勝利の方程式」が稼働するか。セットアッパーとしてカイル・ケラーに掛かる期待は大きい。

 ケラーは2022年に阪神に入団。来日後にフォークを習得したことで投球の幅が広がり、安定感がグッと増した。昨年は27試合登板で1勝1セーブ8ホールド、防御率1.71の好成績をマーク。家族の事情で8月上旬にアメリカに帰国したが、38年ぶりの日本一に貢献した。2年連続Bクラスに沈んだ巨人は救援陣の強化が懸案事項だった。そこで、宿敵・阪神で活躍していた右腕の獲得に乗り出す。ケラーは巨人と不思議な縁で結ばれていたことを明かしている。

「アメリカでの少年時代はレッドソックスのファンで、ペドロ・マルティネスが好きでした。いいピッチャーになることを目指していたので。当時のペドロはスーパーピッチャー。投げ方を参考にしていましたし、今でも彼が史上最高の投手だと思っています。子どものころはメジャー・リーグ選手のカードを集めるオタク少年でした。松井秀喜さんのも持っていました。彼がヤンキースにいたころが一番野球にハマっていて、父とテレビで試合を見ていましたから。松井さんがきっかけで日本の読売ジャイアンツのことも知りました。(松井氏が臨時コーチを務めた)宮崎キャンプで会うことができて、貴重な経験になりました」

レジェンドOBも評価


 日本での実績があるというのは大きな強みだ。球団OBで野球評論家の堀内恒夫氏は週刊ベールボールのコラムで期待を込めていた。

「在籍2年で、日本の野球にようやく慣れた。だから、球速150キロを超える真っすぐに加えて、カーブやフォークの使い方もうまい。昨季残した1点台の防御率は、十分に実力を証明するものだ。コントロールも悪くなさそうだから、もしも大勢が復活できないような事態にでも陥れば、開幕から守護神に指名されることも十分にあり得る。ケラーが加入したことによって、今季の巨人は先発、中継ぎ、抑えへつなぐ「勝利の方程式」に必要不可欠なピースが完璧にそろうということになる。その結果として、昨季リーグ4位の防御率3.39をいかに好転させることができるか」

「とにかく、今季の巨人には大きな期待が持てそうだ。阪神の『アレンパ』を阻止できるとしたら、1年前に比べて投手力が格段に充実した巨人以外に可能性を見いだすことはできないのではないかと思うね」

「いつもひょうひょうとしています」


 移籍1年目の今季は37試合登板で0勝1敗1セーブ12ホールド、防御率1.44。春先にファームで再調整した時期があったが、5月18日に一軍再昇格すると以降は安定した投球を続けている。現在16試合連続無失点中。8月12日の阪神戦(東京ドーム)では、1対0の9回にマウンドに上がると、二番・中野拓夢を156キロ直球で空振り三振、三番・森下翔太を三邪飛、四番・佐藤輝明をカーブで空振り三振と完ぺきな投球で締めくくり、移籍後初セーブを挙げた。

 明るい性格で阪神の投手陣に溶け込んでいたが、巨人でもその姿勢は変わらない。高梨雄平は「ロッカーが隣なんですよ。いつも僕に『タカナシキッチン!』と声を掛けてきます。めっちゃナイスガイ。ここでは言えないブラックジョークも言いますし、気さくで面白い人です。打たれてもイライラしたりしないし、いつもひょうひょうとしていますね」と明かしている。

 愛される助っ人が阪神、巨人で「1人連覇」を飾れるか。勝負を左右する局面でマウンドに立ち、右腕を振り続ける。

写真=BBM
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