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ファーム降格経験も…他球団から「FAの目玉」と評価高い「阪神の頭脳」は

 

乗り越えなければいけない壁


投手陣を必引っ張る活躍が期待される捕手・坂本


 阪神が8月23日の広島戦(マツダ広島)で3対1と初戦を制した。首位・広島と4ゲーム差。試合数が少なくなっている中で、逆転優勝に向けて1つも落とせない。梅野隆太郎と共に「阪神の頭脳」として投手陣を引っ張る活躍が期待されるのが、坂本誠志郎だ。

 昨年は自己最多の84試合に出場。梅野が8月中旬に左尺骨骨折で戦線離脱すると、正捕手として先発マスクをかぶり続け、38年ぶりの日本一に大きく貢献した。「陰のMVP」とも評される活躍で自身初のゴールデン・グラブ賞を受賞。リーグ連覇に向け、不可欠な存在だったが、今季はマスクをかぶった試合で痛打を浴びる場面がフォーカスされるように。もちろん坂本だけの責任だけではない。配球面に正解はなく、結果論で責められる部分がある。相手も坂本の配球を研究してくるだけに、乗り越えなければいけない壁に直面したと言える。

 7月19日の広島戦(甲子園)では珍しく守備でミスが出た。0対0で迎えた5回無死一、二塁で菊池涼介の犠打を処理する際にファンブル。無死満塁とピンチが拡大し、シャイナーの遊ゴロの間に先制点を与えた。打撃でも7回無死満塁で遊ゴロ併殺打に倒れて0対1で敗戦。攻守に精彩を欠き、厳しい表情でベンチを引き揚げる姿が見られた。

必要な戦力なのは変わりない


 8月に入り、先発マスクをかぶった試合でなかなか思うような結果が得られない、岡田彰布監督は決断を下す。11日に登録抹消。頭をリフレッシュする意味合いもあっただろう。今季は森下翔太佐藤輝明大山悠輔と主力が打撃不振に陥った際にファーム降格している。坂本が必要な戦力であることは変わらない。最短の10日目となる21日に一軍に戻した。

 試練を味わったが、他球団の評価は高い。今年4月に国内FA権を取得。他球団の編成担当は「捕手としての能力は非常に高い。FAで人的補償を必要としないCランクであることも大きな魅力です。権利を行使したら獲得に興味を示す球団が多いことは間違いない」と高い評価を口にする。

捕球に対する意識の変化


 坂本はフレーミング技術の高さに定評がある。メジャーで活躍するダルビッシュ有(パドレス)「うまい。見ていて気持ちいい」と称賛するほどだ。今年4月に掲載された週刊ベースボールのインタビューでは、プロ入り後に捕球に対しての意識が変化したことを語っている。

「入団1年目の春のキャンプです。それまではボールとぶつかるような捕球だったんです。そうなると自分の体とミットに距離ができてしまうんです。それだと二塁送球などで体とミットに距離ができた分だけ、送球時に時間がかかってしまうんです。そこでブルペンキャッチャーの片山(片山大樹)さんに『一度、人さし指を下げて捕るとうまくボールを吸収できるよ。いいボールが来たときには勝手にミットが上に立つから』と教えてもらいました。僕らよりもブルペンキャッチャーのほうが投手の球をより多く受けてきていて、さらにいかに投手にキレイに捕球面を見せるか、キレイな音を鳴らしてあげるか、ということを一番考えている。捕ることに特化された方々。なのでアドバイスは本当に大きかったです。それ以降は下から捕球するという練習を矢野(矢野燿大)さん、山田(山田勝彦日本ハムコーチ)さん、藤井(藤井彰人、広島ヘッドコーチ)さんと繰り返し練習してきました」

「今では自分の体の近くで捕球できるので、ボールを投げるときにもスムーズな動作ができます。体の近くで捕球することで、ミットと右手が円を描くようなテークバックを取れます。そうなると自然と体が横を向き、そこからテークバックに奥行きの空間ができるんです。これができると送球動作が速くなるんです。練習時に内野守備に入り、逆シングルで捕り一塁送球をする練習を繰り返し、藤井さんとやっていました」

 捕手はチームを勝利に導いて評価される過酷なポジションだ。だからこそやりがいがある。個人としても、チームとしても、逆境を乗り越えられるか。坂本の真価が問われる。

写真=BBM
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