投球スタイルはシンプル
勝利の方程式として中日リリーフ陣を支える清水
中日が8月28日の
広島戦(バンテリン)で逆転負けを喫し、今季ワーストタイの借金13に逆戻り。3位・
阪神と8ゲーム差は変わらず、厳しい戦いが続いている。ただ、「勝利の方程式」は12球団屈指の安定感だろう。守護神の
ライデル・マルティネスにつなぐセットアッパーの
清水達也は48試合登板で2勝0敗29ホールド、防御率0.98。
松山晋也と共に抜群の安定感を誇っている。
失点を喫したのは7試合。いずれも最少失点に切り抜け、複数失点は一度もない。2022年から2年連続50試合以上登板して計57ホールドをマークしたが、防御率は22、23年で共に3点台。打ち込まれると修正できずに大量失点を喫するケースが見られた。昨季の月間防御率を見ると、7月が4.00、8月は7.88と夏場に調子を落としたが、今年は7月が防御率0.96。8月は2.57と踏ん張っている。
投球スタイルはシンプルだ。平均球速150キロを超える直球と落差の鋭いフォークの2種類が投球の9割以上を占め、時折投げるカーブが打者の目線をずらすアクセントになっている。他球団のスコアラーは「
千賀滉大(メッツ)と重なります。三振奪取能力が高く、直球とフォークが途中まで同じ軌道なので見極めるのが難しい。リリーバーとして結果を残し続けていることで自信をつけている部分もあると思います。制球がまとまっているし、制球で崩れる心配がない。なかなか連打を出すのが難しいですね」と対策に頭を悩ませる。
あこがれの人は千賀
清水にとって千賀は特別な存在だ。19年6月に週刊ベースボールの「あこがれの人」というテーマで、以下のように語っていた。
「あこがれの人は、
ソフトバンクの千賀さんです。真っすぐが速くて、フォークで三振が取れて。投球スタイルが好きだったので、高校2年くらいから、毎日のようにWBCや
日本ハム戦で大谷(
大谷翔平、エンゼルス)さんから空振り三振を奪った動画を見て見本にしていました。特にフォーク。自分の中で『答えがこれだ』と勝手に思っていて、あのフォークに近づけられるように投げようとしていました。同期の康祐(
伊藤康祐)が千賀さんと同じ蒲郡市出身で、オフに一緒に野球教室をやっていたんです。それを知ったときは、すごくうらやましかったです。今はまだ面識はありませんが、もっと磨いて、千賀さんに会えるような、ふさわしい投手になりたいと思います」
高3夏には甲子園制覇
その目標に一歩ずつ近づいている。昨年は11月の「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」の代表メンバーに選出され、大会連覇に貢献した。清水には大舞台のマウンドがよく似合う。今から7年前。花咲徳栄高の3年夏に甲子園出場すると、6試合登板で2勝、防御率1.37で夏では埼玉県勢初の全国制覇を飾った。頂点で輝いた道のりについて、意外な思いを明かしている。
「甲子園で優勝したこと(2017年夏)がよく取り上げられますけど、一番印象に残っているのは埼玉大会決勝の浦和学院高戦です。それまで浦和学院には4連敗していて勝てていなかった。たぶん人生で一番緊張しました。前の日もあまり眠れなかったですね。この試合は二番手で登板して3回無失点で何とか抑えられました。ずっと勝てなかった相手なのに、この試合だけは運があったとしか言いようがない。スコアは5対2だったのですが、タイムリーが出なかったのに、あれよあれよと点が入ったんです。甲子園に行ってからのほうが伸び伸びプレーできました。これも緊張の中で勝てたこの試合があったからこそだと思っています」
高卒で中日にドラフト4位で入団すると、先発から救援に転向した22年から順調にキャリアを重ねている。今季50試合以上の登板で防御率0点台をマークしているのは
栗林良吏(広島)のみ。成長著しい24歳右腕はクリアできるか。
写真=BBM