勝負強い打撃で三番定着

途中入団ながら巨人打線で欠かせない存在となっている
絶対に負けられない戦いが続く巨人。主砲の決勝アーチをアシストしたのがココ・モンテスだった。9月5日の
ヤクルト戦(岐阜)に「三番・左翼」でスタメン出場すると、0対0の5回二死一塁で、左腕・
山野太一の高めに浮いたチェンジアップをはじき返した打球が、遊撃強襲の内野安打に。続く四番・
岡本和真が右翼席に決勝打となる3ランを放った。
広島が
DeNAに敗れたため、首位に浮上した。
巨人は途中加入した2人の優良助っ人に救われている。エリエ・
ヘルナンデスは左手首骨折で8月12日に登録抹消されたが、56試合出場で打率.294、8本塁打、30打点をマーク。そして、モンテスもチームに不可欠な存在となっている。今年はロッキーズ傘下の3A・アルバカーキで64試合に出場して打率.335、9本塁打、47打点をマーク。パシフィックコーストリーグでリーグトップの打率をマークした状態で退団し、7月11日に巨人と契約を結んだ。同月下旬に一軍昇格すると、広角に打ち分ける高いミート能力で安打を積み重ねている。29試合出場で打率.333、1本塁打、13打点。得点圏打率.400と勝負強い打撃で、ヘルナンデスが抜けた三番に定着している。
残している数字だけでなく、勝負の流れを引き寄せる貴重な一打が多いことも特徴だ。8月25日の
中日戦(東京ドーム)で、左腕・
大野雄大に6回まで巨人打線が無安打無得点に抑え込まれていたが、0対0の7回に先頭打者で打席に入ったモンテスが外角低めのツーシームをすくいあげ、中前打で出塁。この後に
坂本勇人の決勝2ランが飛び出した。9月3日のヤクルト戦(京セラドーム)では3点差を追いかける9回二死二、三塁で相手守護神・
小澤怜史のフォークを左中間スタンドに運ぶ同点3ラン。起死回生の一発にベンチはお祭り騒ぎだ。試合は延長線の末に敗れたが、巨人ファンに希望を与える一撃だった。
モンテスは今季33安打中、二塁打が14本と4割以上を占める。コンパクトなスイングで捉えた鋭いライナーが外野の間を射抜く。他球団のスコアラーは「
阪神の強打者として活躍した
マット・マートンと重なります。変化球への対応力が高く、バットが内側から出てくるスイング軌道で苦手なコースがない。安打を打つ技術が高く、日本野球に適応して活躍できる選手だと思います」と警戒を強める。
最多安打3度の助っ人

阪神で巧打を発揮した安打製造機のマートン
マートンを覚えている野球ファンは多いだろう。2010年に阪神に入団すると、同年に当時日本記録のシーズン214安打をマーク。その後も14年に打率.338で首位打者を獲得するなど安打製造機として活躍し、シーズン最多安打を3度記録した。また、13年の二塁打37本はリーグ最多。中距離打者として二塁打が多い打撃スタイルは確かにモンテスと重なる。
マートンは昨年7月に週刊ベースボールの企画で
ランディ・バースと対談した際、日本で活躍した秘訣を聞かれて以下のように語っている。
「日本での6年間は多くのサポートの上に成り立っています。選手としては準備を怠らず、一生懸命働く。そして自分の能力を信じ、周りの人々を信頼しなければなりません。本当に良いチームメート、良いコーチ、良い家族、友人、周りの人々のサポートに恵まれました。私たちは日本の文化を受け入れ、新しいことに挑戦することが大好きでした。その上で自分自身をしっかりと持っていることも大切です。新しいことに挑戦する意欲を持ち、周りの優れたサポートシステムの中で最善を尽くし、一生懸命働けば、それは成功するための最良の公式になると思います」
モンテスも日本で成功したいという思いがひしひしと伝わってくる。本職は内野で三塁と遊撃を守るが、三塁は坂本勇人、遊撃は
門脇誠がいる。チーム事情を考慮し、左翼でプレーすることを志願した。不慣れなポジションだったが、一生懸命に取り組んでいる。9月4日のヤクルト戦(京セラドーム)では5回に
長岡秀樹のライナー性の打球をスライディングキャッチ。球際の強さを見せた。
大混戦のセ・リーグで負けられない試合が続く。27歳の助っ人がV奪回のキーマンになることは間違いない。
写真=BBM