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今季一軍未登板も二軍で防御率0点台…村田兆治から金言受けた「巨人の右腕」は

 

「日替わりヒーロー」が誕生する巨人


今季はここまで一軍登板を果たしていない菊地


 白星を重ねるチームは「日替わりヒーロー」が誕生する。首位の巨人が3対2で延長戦の末にサヨナラ勝利を飾った7日のDeNA戦(東京ドーム)。チームの窮地を救ったヒーローは、ファームで力を磨いていた3選手だった。

 1点ビハインドの9回二死一、二塁。代打で起用された中山礼都が相手守護神・森原康平の直球を右前に運ぶ適時打を放った。起死回生の一打で試合を振り出しに戻すと、延長11回からマウンドに上がった横川凱が2回無失点の快投で勝ち越しを許さない。劇的なフィーナーレは最後の攻撃だ。延長12回二死から途中出場のオコエ瑠偉佐々木千隼の直球を左中間に運ぶ自身初のサヨナラ弾。オコエは「常に自分の回ってくるシチュエーションを考えながらできることをしっかりやろうと。プロ9年目で優勝争いを初めて経験している最中なので、ファンの方々もチームと一緒になって戦ってくれているので、自分も負けじとチームの戦力になれるようにと思って頑張っています」とお立ち台で目を輝かせた。

 最近10試合で3得点以下が8試合と打線が活発とは言えないが、投手陣の踏ん張りでしぶとく白星を積み重ねている。特に中継ぎが安定している。巨人に限らず、各球団の投手陣は疲れで消耗しているだろう。ラストスパートで踏ん張りどころだが、巨人はファームに頼もしい右腕が控えている。今季一軍登板がないが、イースタン・リーグで31試合登板し、4勝2敗1セーブ、防御率0.90と抜群の安定感を誇るプロ3年目右腕・菊地大稀だ。

 育成ドラフト6位からはい上がった。入団時は新潟県佐渡島出身で初のドラフト指名されたことが話題になったが、実力ですぐに存在価値を証明する。新人の22年4月29日に支配下選手登録され、16試合に救援登板。昨季はチーム2位の50試合登板し、4勝4敗1セーブ11ホールド、防御率3.40をマークした。身長186センチの恵まれた体格から150キロを超える直球、スライダー、フォークを武器に三振奪取能力が高い。

「離島甲子園」での出会い


 菊地には恩人がいる。「マサカリ投法」と形容されたダイナミックなフォームを武器に、ロッテのエースとして通算215勝をマークした村田兆治氏だ。

 村田さんと出会ったのは、全国の離島で野球に打ち込む子どもたちが集まる中学生の野球大会「離島甲子園」だった。中3の時に佐渡で開催されたと時に佐渡市選抜のメンバーとして出場。村田さんに「夢をあきらめない」という言葉を掛けられた。「自分がプロを目指すきっかけになった人。あの言葉があったから今がある」、「夢を与えてくれた存在ですし、この先もずっと村田兆治さんを追いかけていくことになる」と週刊ベースボールの取材で感謝を口にしていた。

 プロ入り後も交流は続き、1年目の22年6月7日の西武戦(ベルーナ)でプロ初黒星を喫した際には、「負けることは悔しいから、しっかり練習をして周りを見返せるようにな」と電話で激励の言葉を受けた。村田さんは同年11月に72歳で逝去したが、プロの世界で活躍することが恩返しになる。

「目の前で胴上げは悔しい」


 菊地は阪神が18年ぶりの優勝を決めた昨年9月14日の試合に登板している。「歓声はすごく大きかった。いつもとは違うなというのはありましたね」と本拠地・甲子園が異様な雰囲気に包まれる中、2点ビハインドの8回に登板して1回1安打無失点。「ああいう場面を経験できてよかった」と収穫を得た一方で、「目の前で胴上げというのは悔しいですし、優勝したいなと思いました」と思いを新たにした。

 今年は春先から救援陣が好調だったこともあり、一軍から声が掛かっていないが気持ちが折れることはない。ファームで高いパフォーマンスを維持している。志が高い右腕は胸に抱く思いがある。

「自分がプロの世界で活躍することで、地元が活気づくと思う。佐渡の子どもたちに夢を与えたい」

 優勝争いの緊迫感あふれる戦いが続く中、一軍から声が掛かる可能性が十分にある。必要とされた時に最大限の力を発揮できるように、最善の準備を尽くす。

写真=BBM
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