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過小評価されている? 他球団が「攻守で球界トップクラス」高評価の22歳若武者は

 

打撃で果たした成長


8月11日のDeNA戦では2本のアーチを放って勝利に貢献した


 プロの世界は結果がすべてだ。最下位に低迷しているチーム状況では、なかなかスポットライトが当たらない。だが、他球団のスコアラーが「攻守の総合力で考えたらセ・リーグNo.1の遊撃手でしょう。もっと評価されるべき選手だと思います」と指摘する選手がいる。ヤクルト長岡秀樹だ。

 今季は123試合出場で打率.291、6本塁打、51打点。遊撃手という負担のかかる守備位置を考えれば、十分に合格点を与えられる。8月は月間打率.384、3本塁打、11打点と猛暑の中で絶好調だった。直球を力強くはじき返し、変化球にもきっちり対応する。11日のDeNA戦(横浜)では、初回に左腕・ケイの153キロ直球を右翼席に運ぶ2試合連続の5号先制ソロを放つと、3回二死二塁で再びケイから中前適時打。同点の7回も山崎康晃のスプリットを右翼ポール際に運ぶ決勝の右越え2ランと止まらない。自身初の1試合2本塁打で、猛打賞4打点の大暴れだった。

 昨年は135試合出場で打率.227、3本塁打、35打点。守備率.985はリーグトップだったが、打撃は試行錯誤を繰り返した。不振でも我慢強く起用し続けてくれた高津臣吾監督の期待に応えたい。今季は中堅から逆方向への安打が目立つ。今季の安打の内訳をみると、左翼方向が42本、中堅方向が35本、右翼方向が49本(内野安打13本)。コースに逆らわず広角に打ち分けていることがデータに表れている。対左投手は打率.319。昨年の打率.244から大幅に上がっている。

 遊撃で安定した守備力も大きな魅力だ。9月5日の巨人戦(岐阜)では、0対0で迎えた3回二死二、三塁のピンチで大城卓三の中堅方向に抜けそうな打球を好捕。1回転しながら素早くファーストに送球して遊ゴロにした。体のバランス感覚に優れ、厳しい体勢からも送球が安定している。球際に強く、幾度もチームの窮地を救ってきた。

開幕戦で悔しい思い


 長岡には忘れられない試合がある。今年3月29日の開幕・中日戦(神宮)。「八番・遊撃」でスタメン出場したが、捕ゴロ、中飛と凡退し、3打席目は同点の6回一死満塁で好機が回ってきたが、代打を送られた。週刊ベースボールのインタビューでこう振り返っている。

「悔しくて野球で泣いたことはなかったんですけど、試合中に初めて涙が出たぐらいめちゃくちゃ悔しくて。一軍で出始めて3年目、今年に懸ける思いはすごくあって、『絶対、今年』と思っての開幕戦。ヒーローになるチャンスで代えられた。すごく意気込んでやってきたのに『なんでだよ』と。もう自分のふがいなさ。あれほど悔しい思いをしたことはないなって」

「(試合は逆転勝利を飾ったが)悔し過ぎて、あんまり覚えてないというか。遥輝(西川遥輝)さんの三塁打で、点差がついた記憶はあるんですけど(8回にダメ押しの2点適時三塁打)、それぐらいしか覚えていなくて。悔し過ぎてたまんなかった思い出ですね。でも、絶対にあれがあるから今に生きている。『見返してやろう』じゃないですけど。反骨心は人より強いなと思いますけどね」

球団の名遊撃手の系譜


ヤクルトは池山、宮本ら名遊撃手を輩出してきた


 悔しさがバネにすることで成長している。ヤクルトには名遊撃手を輩出してきた歴史がある。80年代後半から90年代前半にかけ、池山隆寛(現ヤクルト二軍監督)が「ブンブン丸」と形容された豪快なフルスイングで5年連続30本塁打をマーク。1990年は打率.303、31本塁打で、遊撃手として史上初の「打率3割、30本塁打」を達成した。

 その池山から定位置を引き継ぐ形となった宮本慎也は、球界屈指の守備能力でゴールデン・グラブ賞を6度受賞。三塁にコンバートされた後も4度輝き、複数ポジションで歴代最多記録の計10度受賞。打撃でも名球会入りしている選手で唯一の通算2000安打、400犠打を記録した。状況判断に間違いがなく、首脳陣の期待にきっちり応える。攻守に卓越した技術を発揮した職人だった。

 長岡は遊撃の定位置をつかんで3年目。偉大な先輩たちとは違ったスタイルの遊撃で輝きを放っている。22歳の若武者の全盛期はこれからだ。

写真=BBM
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