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26歳でプロ入りの遅咲きで覚醒 巨人の「新人王の有力候補」は

 

気持ちの強さはチームでも上位


2年目の今季、中継ぎで勝利に貢献する投球を続けた船迫


 巨人が9月27日の中日戦(東京ドーム)を3対1で制し、2位・阪神広島にサヨナラ負けを喫したため、マジックナンバーが「1」に。きょう28日の広島戦(マツダ広島)で勝つか引き分け、もし敗れても阪神がヤクルトに負ければ4年ぶりのリーグ優勝が決まる。

 2年連続Bクラスから頂点へ。大きく改善されたのが救援陣だ。守護神・大勢につなぐセットアッパーが充実。ケラーバルドナード船迫大雅高梨雄平泉圭輔平内龍太とバラエティーに富んだタイプがそろっている。特に強心臓ぶりが光るのがプロ2年目の船迫だ。今季は開幕一軍入りすると、1度もファームに降格せずシーズンを完走している。51試合登板で4勝0敗22ホールド、防御率2.37の好成績をマーク。サイドスローから150キロ近い球威十分の直球と鋭く横滑りするスライダーで打者を牛耳る。杉内俊哉投手チーフコーチが「ゾーン内に投げきれる気持ちの強さはウチの投手陣でも上のほう」と評するように、ピンチの場面でも臆せずに腕を振る。

 首脳陣の信頼の厚さを象徴する試合があった。8月3日のヤクルト戦(東京ドーム)。5回二死から相手に1点差に迫られ、さらに一、二塁のピンチで、勝利投手の権利を目前にした先発左腕・井上温大から船迫にスイッチした。中村悠平を一飛に打ち取ると、その裏の攻撃で一死満塁の好機に打順が回ってきた。東日本国際大4年以来約6年ぶりの打席で中犠飛を放ち、プロ初打点をマーク。6回も続投して無失点に抑え、4勝目を挙げた。

「古風で一本気のある、男らしい性格」


 どんな場面でもマウンドに上がる。9月18日のDeNA戦(東京ドーム)では1点ビハインドの8回二死満塁で救援登板。桑原将志を4球連続スライダーで見逃し三振に仕留めると、その後に打線が追いついて引き分けに持ち込み、優勝マジックを初点灯させた。

 ブルペン陣を共に支える高梨は「バサマ(船迫)はどこかヤンキーっぽさがあります。顔とかね。ふてこい顔のままの性格なので、ちょっと古風で一本気のある、男らしい性格。そこが僕は好きですね。ブルペンでの彼は、僕にツッコむ役割みたいな感じ。今の一軍のリリーフの中では、年齢が僕に近いほうなので、普段から積極的にボケている僕に、愛のあるツッコミを入れてくれます」と週刊ベースボールで人柄を語っている。

優勝すればさらに上がる価値


 縁の下の力持ちとして救援陣を支えている右腕は27歳。チームメートの岡本和真岸田行倫と同学年だが、新人王の資格を持っている。26歳でプロ入りした1年目の昨季は36試合登板で3勝1敗8ホールド、防御率2.70。投球回数が30イニングで、新人王の資格を持ったまま2年目を迎えた。

 セ・リーグの新人王の有力候補と見られたチームメートのドラフト1位右腕・西舘勇陽、DeNAのドラフト1位・度会隆輝は一軍に定着できていない。昨年はケガで一軍出場なしに終わった2年目の田中幹也(中日)が頭角を現し、108試合出場で打率.218、2本塁打、22打点、4盗塁をマーク。3年目の黒原拓未(広島)は51試合登板で4勝3敗3ホールド、防御率1.73と奮闘しているが、船迫の活躍の方がインパクトが強い。リーグ優勝すれば、その働きぶりはさらに価値が上がるだろう。

 過去にもプロ2年目以降のリリーバーが新人王を受賞したケースがある。2020年に高卒3年目の平良海馬(西武)がシーズン最多の54試合登板し、1勝0敗1セーブ33ホールド、防御率1.87でタイトルを獲得。22年もプロ2年目の水上由伸(西武)が60試合登板で4勝4敗1セーブ31ホールド、防御率1.77で、パ・リーグ史上初となる育成出身の新人王に選出された。

 新人王、リーグ優勝が見えてきたが、CS、日本シリーズとまだまだ戦いは続く。船迫はドラフト指名時に「ふなばさま」という珍しい読み方が話題になり、本人も「初見で自分の名前を言える人はいない」と苦笑いしていたが、知名度が大きく上がった現在は違う。愛称は「バサマ」。球界を代表するリリーバーに成長する姿が楽しみだ。

写真=BBM
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