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【大学野球】慶大・清原正吾が土壇場で豪快な一発を放つことができた3つの理由

 

ネット裏スタンドに向けてガッツポーズ


慶大・清原は土壇場で同点アーチを放ち、一塁ベンチへと戻ると、絶叫した[写真=矢野寿明]


【9月28日】東京六大学リーグ戦
明大3-3慶大(1分)
※プロ併用日。連盟規定により9回打ち切り

 慶大は1点ビハインドで9回裏、最後の攻撃迎えた。簡単に二死。あと一人である。ここで慶大の四番・清原正吾(4年・慶應義塾高)が、初球の真ん中高めのカットボールをバックスクリーンへと運んだ。土壇場で3対3に追いついた。この日はプロ併用日のため、9回打ち切り。1回戦は引き分けで終えた。

「バットの芯でほぼ完ぺきな当たりでした。行ったかどうか……。確信したほどではなかったですが……。常にセンター返しを意識しているので、飛び込んだので自信になる。第1号なので、気持ち良かった。ホッとした。チームが負けずに済んだので良かったです」

 ベース一周した際、ネット裏スタンドに向けてガッツポーズ。

「見たか!!」

 西武巨人オリックスNPB通算525本塁打の父・清原和博に向けた「報告」だった。

「安堵している顔でした」

 小学校時代は野球に親しんだが、中学時代はバレーボール部、高校時代はアメリカンフットボール部に在籍。6年のブランクを経て、大学で再び野球部に入部した。初めての硬式球。戸惑いも多かったが、血のにじむような努力を経てリーグ戦83打席目で、初アーチを放った。「家族にホームランボールをプレゼントしたい」という思いを、実現させた。

スカウトへ絶好のアピール


9回裏二死走者なし。四番・清原は初球、高めのカットボールをたたいた。打球はグングン伸びて、バックスクリーンへと吸い込まれていった[写真=矢野寿明]


 なぜ、清原は土壇場で豪快な一発を放つことができたのか。3つの理由がある。

 まずは、打席での心構えである。この試合、9回裏の第4打席を迎えるまで3打数無安打(2三振)。変化球にタイミングが合っていなかった。

「(それまでの)3打席は情けない結果。四番としての役割、仕事をしないといけない。覚悟を決めて、腹をくくった」

 次に、塾野球部の神髄である「エンジョイ・ベースボール」を思い返した。気持ちを切り替えたのだった。

「1個前の打席を、チャンスで打てず(二死二塁で空振り三振)、悔しくて……。9回に回ってくるな、と。そこで、神宮の舞台で野球ができることに感謝するという、マインドセットができたんです。誰もがプレーできる場ではない。楽しんで、全力でやろうと」

記念のホームランボールを手に笑顔。念願の家族にプレゼントする[写真=矢野寿明]


 最後に、練習量だ。開幕週の立大戦は1勝2敗で勝ち点を落とした。清原は3試合で13打数2安打0打点。バットを振るしかない。

「素直にセンター返し。低くて、強い打球を心がけてきました。それ以上に、練習してきた自負がある。練習してきた自信があった」

 4年間、指導してきた慶大・堀井哲也監督は「日吉での打撃練習、オープン戦でも、あの弾道は出ている。神宮で、投手のレベルが高く、お互い勝ちたい気持ちの中で結果を出すのは難しい。勝敗に関わる打席での値千金のホームラン。素晴らしいと思いました」と喜びを口にした。中学、高校で野球未経験の選手が、神宮でアーチを描くとは「奇跡的」と言っていいだろう。堀井監督は6年のブランクを埋め、成長を遂げた4点を語る。

「真っすぐに、負けなくなった。甘い球を逃さない。インコースのさばき。外の変化球に苦労していましたが、逃げるボールを本塁打にした。克服している」

 開幕前の9月12日にはプロ志望届を提出。この日も複数球団のスカウトが神宮で視察しており、絶好のアピールの場となったはずだ。

文=岡本朋祐
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