頼りになるベテラン
日本シリーズは意外な展開になった。前評判で有利とされていたパ・リーグの覇者・ソフトバンクが横浜スタジアムで2連勝を飾り、このまま一気に行くかと思われたが、シーズン3位から下克上で日本シリーズに進出した
DeNAが意地を見せる。みずほPayPayドームで2連勝し、対戦成績は2勝2敗のタイに。共に敵地で2勝を挙げ、白熱した展開になっている。
流れを再び引き戻したいソフトバンクで、頼りになるのがベテランの経験値だ。
柳田悠岐、
周東佑京、
甲斐拓也、
牧原大成、
栗原陵矢、
中村晃ら4年連続日本一を経験した主力選手たちがそろう中、遊撃の
今宮健太が攻守でキーマンになる。他球団の首脳陣は今宮を絶賛していた。
「ソフトバンクの象徴は今宮だと思います。攻守で試合のポイントを見極めてきっちり仕事をする。五輪、WBCなど侍ジャパンで大舞台を経験していないですが、彼が球界No.1遊撃手だと思います。もう少し評価されてもいいかなと。短期決戦では特に厄介な選手です」
勝負強い打撃に高い守備力
2019年に
西武と対戦したCSファイナルステージでは、第4戦でCS史上初の1試合3本塁打を放つなど5安打6打点の大暴れ。9対3で快勝して4連勝で日本シリーズ進出に導いた。今年の短期決戦でも活躍が際立つ。CSファイナルステージで勢いに乗る
日本ハムと激突し、第1戦で相手エース・
伊藤大海から4回に左越えソロを放つなど猛打賞の活躍でチームの勢いを加速させた。
日本ハムに3連勝した3試合で10打数5安打、打率5割をマーク。シーズン中は主に二番で起用されていたが、日本シリーズでは三番に抜擢された。第1戦で2点リードの9回に右越え2点適時二塁打。試合を決定づける一打で先勝した。第2戦も三番でスタメン出場すると、3、4戦は六番に。走者を置いた場面で回ってくる可能性が高い打順に据えられたのは、勝負強さを買われた証だ。
今宮の持ち味は身体能力の高さを生かしたダイナミックなプレーだ。三遊間の深い位置から強肩で内野ゴロにする。13年からゴールデン・グラブ賞を5年連続獲得。近年は同郷の大分県出身で1学年下の
源田壮亮(西武)にその座を譲る形にはなっているが、今宮の守備能力が決して落ちているわけではない。
リーダーシップが求められるポジション
主力として試合に出続けているが、順風満帆だったわけではない。18年以降は故障も影響して4年連続で規定打席に到達できず、22年は遊撃のレギュラーが白紙に。
フレディ・ガルビスとポジション争いになったが、このシーズンが野球人生の分岐点となった。自己最高の打率.296をマークし、5年ぶり3度目のベストナインを受賞した。
今宮は週刊ベースボールの取材で遊撃について聞かれ、このように答えている。
「センターラインにおける司令塔じゃないですが、リーダーシップが求められるポジションだと思います。やはりそこのポジションがコロコロと人が変わってしまうようだと、チームとしても難しいところがありますね。僕自身、変わることのないように、1年でも長くやっていきたいです。そして、ショートを守る以上は、リーダーシップを持って、チームを引っ張っていかなければいけません」
「基本に忠実にという気持ちがありますが、なかなか……。そういう意味でうまいなと思うのは、西武の源田(源田壮亮)ですね。基本に忠実で、12球団の中で一番うまいんじゃないかなと思いますね」
「源田は教科書ですね。僕は教科書に載らないタイプです(笑)。源田の守備は“捕る”“投げる”など全体的に分かりやすい。源田の守備を見て、僕も勉強することがあります」
謙虚で向上心旺盛な姿が、高いパフォーマンスを支える。日本シリーズ出場は7度目の出場で、修羅場を潜り抜けた経験が糧になっている。日本一に向け、DeNAの勢いを止めて最後のヤマを乗り越えられるか。
写真=BBM