ドラフト候補としての立場を確立

健大高崎高・石垣は再登板した10回裏にサヨナラ負け。158キロ右腕はこの敗戦を、春に生かす[写真=田中慎一郎]
【11月4日】秋季関東大会決勝
横浜高(神奈川)4x-3健大高崎高(群馬)
(延長10回)
健大高崎高は4年ぶりの関東大会優勝を逃した。今大会で一躍、注目を集めたのは右腕・石垣元気(2年)である。佐野日大高との準々決勝で、自己最速を4キロ更新する158キロを計測した。今春のセンバツでは左腕・佐藤龍月(2年)との二枚看板で初優勝。春夏連続甲子園出場を決めた同夏の群馬大会後、佐藤は左肘の故障(のちにトミー・ジョン手術)のため戦線離脱。夏の甲子園では石垣が背番号1を着け、英明高との1回戦では153キロを計測し、2025年ドラフト候補としての立場を確立した。佐藤不在の中、今秋も石垣が主戦であるが、新戦力も台頭した。
生方啓介部長は言う。
「夏の甲子園後、準備期間が短い中で(左腕の)下重賢慎、(正捕手の)小堀弘晴が成長し、(遊撃手の)主将・
加藤大成がチームを引っ張ってくれました」
関東大会では佐野日大高との8強対決で、石垣が7回3失点(7回
コールド勝利)と好投し、センバツ出場が有力となった。千葉黎明高との準決勝では登板なく、チームは決勝進出。横浜高との決勝で先発し、この日最速の154キロに、左打者6人を並べる打線に対して、外角へ逃げるスプリットも効果的だった。
しかし、相手は名門・横浜高である。打線は初回に1点を先制も、その後の援護はなく、石垣は我慢の投球。「油断できない打線で毎回、力を入れていた」。走者を背負った投球が続き、重圧は相当だった。
6回裏に追い付かれるが、7回表に石垣の2点タイムリーで勝ち越しに成功する。このまま逃げ切るかと思われたが、7回裏に為永皓(2年)の適時打で1点差とされ、奥村凌大(2年)の適時打で追いつかれ、石垣は左翼の守備へ回った。
二番手・下重の好投もあり、3対3のまま9回で決着つかず、延長タイブレークへ。健大高崎高は10回表に無得点。その裏、石垣が再登板するも、一死二、三塁から奥村にサヨナラ打を浴びた。カウント2ボール1ストライクからの4球目、内角真っすぐを詰まらせながらも、二塁手の後方に落とされた。
158キロというインパクトも……

背番号1。健大高崎高・石垣は特別な思いで投げている[写真=田中慎一郎]
なぜ、石垣は勝負どころで、力を発揮できなかったのか。試合後に敗因を明かした。
「ツメの甘さ。粘りの投球ができませんでした。ボールの質がまだまだ足りなかった。スタミナは大丈夫でした。コースの投げ分け。ピンチの場面でゼロに抑えないといけない。(出場が有力視される来年3月の)センバツに向けて、もう一段階、レベルアップする必要がある」
高校2年生秋にして158キロというインパクトを残した今秋の成果を問われても「この大会では、あまり成長していない」と、厳しい表情で語った。生方部長に課題を確認すると、石垣と一致していた。
「佐藤がいない中で、エースとして頑張っていますが、この決勝、勝っても負けても、(途中で交代することなく)最後まで投げ切ってほしかった。他の投手ならば十分の内容かもしれませんが、どうしても石垣への要求は高くなる」
そこで、技術的な部分に踏み込む。
「球自体は強いですが、質にこだわっていかないといけない。打者の手元で伸びるような回転数、ストレートで空振りを取れるボールを作っていく。出力も上がってきていますので、故障にも注意しながらこの冬場を、良い形で過ごしていきたいと考えています」
学習能力が高い石垣。仲間への思い、特別な感情で背番号1を着ける。健大高崎高は来年1月24日の選抜選考委員会で選出されれば、センバツ連覇へと挑戦することになる。石垣はスケールアップして、球春のマウンドに戻ってくるはずだ。
文=岡本朋祐