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阪神・原口文仁がFA権行使で他球団が熱視線 「数字以上の貢献度で若手の手本になる」

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何度も試練を乗り越えて


力強いバッティングが武器の原口


 試合に出て勝負したい――。阪神原口文仁が国内FA権を行使することを決断した。11月12日に球団を通じ、「この度FA権を行使することを決断いたしました。15年間お世話になったタイガース球団、いつも日本一の熱い声援で背中を押してくれたファンの皆様には感謝しかありません。ただ、いち野球人として、もう一度挑戦したいという思いが強く、この度、決断に至りました」とコメントを発表した。

 不屈の魂で何度も試練を乗り越えてきた。度重なる故障の影響で2013年から育成契約で3年以上過ごし、16年に支配下に再昇格すると一軍デビューを飾ったプロ7年目に強打を発揮する。107試合出場で打率.299、11本塁打、46打点をマーク。その後も勝負強い打撃でチームに貢献してきたが、19年1月に大腸がんを患っていることを公表。26歳の若さで病魔に襲われた衝撃は大きかったが、手術、リハビリを経てグラウンドに戻ってきた。原口がグラウンドで奮闘する姿が、病気と闘う人たちや応援するファンに与えた影響力は計り知れない。

 優勝した昨年は原口が試合前の円陣での声出し役を務めると、8月に10連勝と6連勝、9月には11連勝と「不敗神話」を作った。これは決して偶然ではない。同学年の梅野隆太郎に「グッチが言ってくれたらみんな絶対に聞くから、最後はグッチが言ってくれ」と頼られた。修羅場を潜り抜けてきた原口の言葉にはナインの背中を後押しする力があった。

常時出場への渇望


 誰もが認める「代打の切り札」だったが、試合に最初から出たいという飢えは常に持ち続けていた。昨年に就任した岡田彰布前監督が主力のポジションを固定する方針を明言。一塁は大山悠輔が守ることがメディアで報じられたが、原口はレギュラー獲りに燃えていた。昨年の開幕前に週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っている。

「一塁は決まっているということを書いている報道もあります。でも、この先何が起こるか分からないですし、何かが起こったとしても、一塁を守れる用意を常にしています。一生懸命プレーしてアピールして、そのポジションを奪いにいく、というスタンスしか僕にはできません。人がどう言おうと気にしていませんし、常に自分のことに集中して、やるべきことをやっていくだけです。その先にいい結果が付いてくれば、最高ですよね。その最高の結果を期待してやっていくだけですから」

「本当にもっともっと試合に出たいんですよ。もしシーズン143試合に出ることができたら、どういう成績になるんだろうと、いつも自分に期待していますから。400~500打席に立ったときに、どういう成績になるのかなあ、と。そりゃあ、何とか開幕一軍スタメンに名を連ねたいですよ。周りからは、この時期の本塁打数や打点、ヒットをシーズンに残していたほうがいい、などと言われることもありますが、僕が目指しているのは代打ではなく、毎試合プレーすること。そのためには、この時期に結果を残していかないと、意味がないと思っています。そして常にいい状態をキープしていきたいと思っています」

イ最善の準備を尽くして


 一塁でスタメン出場する機会は限られていたが、最善の準備を尽くして出番に備えた。今季は52試合出場で打率.241、2本塁打、9打点。代打で43打数12安打、打率.279をマークし、出塁率.340、得点圏打率.313と勝負強さは健在だった。DeNAと対戦したCSファーストステージ第2戦では9回に上茶谷大河から甲子園の左翼席に叩きこむアーチ。大敗を喫して終戦を迎えたが、意地を見せて阪神ファンの大声援が注がれた。

 FA権を行使した原口に対し、指名打者制度のパ・リーグ球団が獲得に乗り出す可能性が十分にある。他球団の編成担当は「数字以上の貢献度で若手のお手本になる存在。まだ32歳と選手としてバリバリ働ける年齢だし、代打の切り札にしておくのはもったいない」と高く評価する。

 原口がどんな決断を下しても、ファンは応援し続けるだろう。もう一花も二花も咲かせる。野球人生の全盛期はこれからだ。

写真=BBM

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