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【大学野球】東都三部・四部入れ替え戦を特別な思いで戦っていた順天堂大の六番・遊撃の小澤拓海

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厳しい現実を味わった秋


今春の三部優勝から一転、秋は三部6位と苦戦も、一橋大との入れ替え戦を連勝で三部残留を決めた。六番・遊撃の小澤は2安打1打点。すべての得点に絡んだ[写真=矢野寿明]


【東都大学三部・四部入れ替え戦】
順天堂大4 - 2一橋大
(順天堂大は三部残留)

 東都大学野球連盟は一部リーグから四部リーグまで、22校で構成されている。春と秋、上部リーグと下部リーグによる入れ替え戦(一部・二部、二部・三部、三部・四部)が実施され、勝ち点制(2勝先勝)で争われる。今秋は11月16日から神宮球場で行われた。

軽快な遊撃守備も持ち味。副将として、センターラインを引き締めた[写真=矢野寿明]


 三部・四部入れ替え戦は三部6位・順天堂大が四部1位・一橋大を連勝で下し、三部残留。順天堂大の六番・遊撃の小澤拓海(4年・習志野高)は特別な思いで戦っていた。

「勝てば、自分としても、現役選手として最後の戦いになる。リーグ戦では迷惑をかけてきたので、勝利に貢献できて良かったです」

 1点を追う2回裏の先頭打者として四球を選び、犠飛で同点のホームを踏むと、4回裏は一死からの右前打が口火となり、二死一、二塁からの適時三塁打で勝ち越しの生還を果たした。5回裏には詰まりながらも中前適時打と、すべての得点に絡む活躍を見せている。

5回裏には貴重な4点目となる中前適時打を放った[写真=矢野寿明]


 順天堂大は今春、三部優勝で二部6位・立正大との入れ替え戦に臨むも、連敗により、2003年春以来の二部昇格はならなかった。秋は一転して三部最下位と、厳しい現実を味わった。

「三部も自分が1年のころに比べると、レベルが上がっています。投手は140キロを超えるのが当たり前ですし、打者もスタンドインできる強打者がそろっている。今春は投打がかみ合い、少ないチャンスで1点という守り勝つ野球ができましたが、この秋は歯車が合わず、難しい戦いが続きました。どこにも優勝のチャンスがある一方で、どこも最下位の危険性があります。東都三部も『戦国』です。春は昇格をかけた入れ替え戦、秋は残留をかけた戦いとなりましたが、最後、後輩たちに残留という形を残せたので良かったです」

シニアの同期に度会隆輝


 小澤は中学時代、佐倉シニアでプレーした。3年時にジャイアンツカップで優勝した際は背番号16の内野手の控えで、攻撃時は一塁コーチを務めていた。同期には度会隆輝(横浜高-ENEOS-DeNA)がいた。

「中学時代から別格でした。ドラフト1位で入団して今季、一軍で活躍している姿を見て刺激になりましたし、意識もしてきました」

 九十九里町出身の小澤は名門・習志野高に進学した。「守備がメーンの選手でしたので、中学の監督からも『プレースタイルからして、習高が合うのでは?』と勧められたのが、志望をしたきっかけです」。

 小澤は攻守にスキのない、習志野野球の申し子だった。堅守とつなぎ役に徹し、チームに欠かせない存在になった。1年秋から二塁のレギュラーで2年春のセンバツ準優勝、夏の甲子園は2回戦に進出した。旧チームからの経験者が残った新チームは関東大会8強。センバツの選考からは漏れたが、関東地区の補欠1位校に選出されている。しかし、2020年春のセンバツは、コロナ禍で中止。夏の甲子園出場をかけた千葉大会も中止となった。

「2年生で良い思いをさせてもらい、高校最後の年はコロナ禍。不完全燃焼で終わったのが『大学で頑張ろう』という原動力となりました。高校の同期25人で、大学で10人が野球を続けましたが、最上級生で7人が主将、副将らの幹部になりました。それぞれの舞台で皆、頑張っていました」

 小澤も早くから遊撃のレギュラーとして存在感を示し、最終学年では副将としてけん引。東都大学リーグには中大の主将・櫻井亨佑、日大・角田勇斗と山内翔太が副将、そして、東農大の主将・和田泰征の同期が在籍していた。東農大が今春、31年ぶりに一部昇格。

「この秋は同級生4人が一部でプレー。うらやましいな、と思うこともありましたが、自分には違う道がある、とやってきました」

幼少時から指導者への夢


 小澤には幼少時から「指導者になりたい」という夢があった。そこがブレることはなく、順天堂大に進学したのも、保健体育科の教諭になるのが目的だった。三部優勝を遂げた今春のリーグ戦後は3週間、母校・習志野高で教育実習を受けた。大学の練習には参加できず、ほぼぶっつけ本番で立正大との二部三部入れ替え戦に挑んだ。「文武両道」を実践するのは、順天堂大では当然のスタンスである。

 来年からは千葉県内の学校で講師として教壇に立ちながら、教員採用試験を目指し、正式採用を狙う。週5日、勤務し、赴任校に野球部があれば、部活動の指導にも当たるという。

「心身ともに成長をさせてくれたのは、高校での3年間。千葉のために、学校教育を通じて、恩返しをしたい。軸になる野球は習高にあるので、教えやすいとは思いますが、与えられた立場で全力を尽くしたいと思います」

 順天堂大は学生が監督を務め、学生主体での部運営が伝統である。つまり、大人の指導者に頼ることなく、自らで考え、行動する習慣が染みついている。大学4年間、高校生を教えていく上での大きな基礎・基盤がある。小澤は自らの信念を貫く人生を歩んでいく。

文=岡本朋祐

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