開幕直後は大活躍

すべての面でレベルアップして、来季はレギュラーをつかみたい
レギュラーシーズン3位からCSを勝ち抜き、日本シリーズは
ソフトバンクを4勝2敗で振り切り、日本一に輝いた
DeNA。ナインが喜びを爆発させる中、CSと日本シリーズで出場機会がなかった
度会隆輝はその光景を見て何を感じたか。
ドラフト1位で
中日、
ロッテ、DeNAの3球団が競合。DeNAが当たりクジを引き上げると、涙を流した。感受性豊かで笑顔が似合う。天真爛漫な明るい性格で、ファンの心をつかむのに時間がかからなかった。オープン戦で12球団トップの打率.434をマークすると、「一番・右翼」でスタメン出場した
広島との開幕戦で3回に
九里亜蓮から右翼席へ同点3ランを放ち、逆転勝利に貢献した。
試合後は横浜スタジアムで大歓声が鳴りやまない中、お立ち台に上がり、「いつも温かい声援を送ってくれるファンの皆様のおかげで打てたホームランだったと思います。これからも死に物狂いで全力プレーで頑張ります。応援のほどよろしくお願いいたします」と目を輝かせて感謝の思いを口にした。翌日の2戦目も初回に頭部付近に死球を受けたが、その後に右越え2ランを含む4安打の大暴れ。新人の開幕から2試合連続アーチはセ・リーグ史上初の快挙だった。
課題は打撃だけではない
だが、プロの世界は甘くない。その後は変化球への対応に苦しみ、5月中旬に打率が2割3分台に落ち込んで登録抹消。ファームで1カ月の調整期間を経て復帰し、6月は月間打率.333で上昇気流に乗るかに見られたが、7月は月間打率.246と快音が続かなかった。
課題は打撃だけではない。外野の守備でも落下地点に入った打球を落球するなど手痛いミスが散見された。7月7日の
阪神戦(甲子園)では、5回無死一塁で右前打を後逸する適時失策。さらに、1点リードの9回二死満塁で
原口文仁の右前打に前進守備で猛チャージを仕掛けたが、送球がそれて一塁ベンチに入った。二塁走者・
梅野隆太郎が生還し、逆転サヨナラ負けに。度会は右翼の守備位置で崩れ落ちたまましばらく動けず、敗戦の責任を背負い込んだ。
現役時代に外野の名手として活躍し、ゴールデン・グラブ賞を9度受賞した野球評論家の
平野謙氏は週刊ベースボールの企画で、この守備について言及している。
「狙い自体は良かったと思います。しっかり投げられればタイミング的にはアウトでしたし、アウトにできれば勝利を手にする状況でもありました。アウトにしたいという思いが強過ぎて『投げる』ことに意識が向き過ぎていたのかもしれません。改善点を挙げるなら、一塁がセーフになってもまだ同点だった可能性はありますし、初めからワンバウンドで投げるくらいの意識で慎重にやっても良かったかなと思います。ワンバウンドなら変なそれ方は絶対にしません。私も野手に転向してからたくさん「やらかし」はあったし、失敗だらけでした。度会はまだ1年目。ここから成長してくれると思います」
シビアに結果を求められる2年目
イースタン・リーグでは49試合出場で打率.347、2本塁打、23打点をマーク。格の違いを見せたが、短期決戦で出番は巡って来なかった。DeNAの外野陣は層が厚い。
桑原将志、
佐野恵太、シーズン途中に復帰した
筒香嘉智に加え、若手成長株の
梶原昂希、
蝦名達夫も成長著しい。度会は打撃、守備、走塁と総合的な判断で、首脳陣の信頼を勝ち取れなかった。
「チームを背負う資質がある選手であることは間違いないですが、まだまだ足りない点が多い。度会は長距離砲ではないので、守備、走塁でもハイレベな水準に到達しないとスタメン起用が難しくなる。課題は本人が一番分かっているでしょう」(スポーツ紙デスク)
プロ2年目の来季は周囲の見る目が変わる。期待値で起用されるのではなく、シビアに結果を求められる。外野の熾烈な競争を勝ち抜き、一軍の舞台で輝き続けられるか。真のスーパースターになるため、真価が問われる。
写真=BBM