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第55回記念明治神宮野球大会

【神宮大会】東洋大姫路が初戦でコールド勝利 なぜ岡田監督は短期間で名門復活へ導けたのか

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近畿大会で17年ぶりの優勝


2022年4月から母校・東洋大姫路高を指揮している岡田監督[中央]。同校を大会初勝利へと導いた[写真=川口洋邦]


11月20日 神宮
【第55回記念明治神宮野球大会】
▼1回戦
東洋大姫路高10-0聖光学院高
(5回コールド)

 第55回記念明治神宮野球大会が11月20日に開幕した。17年ぶり3回目出場の東洋大姫路高(近畿地区/兵庫)は聖光学院高(東北地区/福島)との1回戦を、10安打10得点で5回コールド勝利を収めた。

「(今大会で)初めての1勝なので……。新たな歴史ができて良かった。(恩師である梅谷馨氏の)命日だったので、勝ちたいと思っていました」

 2022年4月から母校を指揮する岡田龍生監督は感慨深く語った。大会前には墓前で、今秋の県大会、近畿大会優勝の報告をした。梅谷氏への感謝は、今も変わらずに持ち続けている。

「このユニフォームで甲子園に帰れるのか……と考えたこともありました。(履正社高で)監督になりたての頃は、部員11人。(姫路の)グラウンドでの練習に入れてもらったり、三軍で練習試合を組んでくれたり、面倒を見てもらいました。私の野球のベースは、姫路にあります」

 岡田監督は東洋大姫路高、日体大、鷺宮製作所を経て1987年に履正社高の監督に就任し、チームを35年率いた。春9回(2度の準優勝)、夏4回の甲子園出場。2019年夏には同校初の全国制覇へと導き、深紅の大優勝旗を手にした。岡田監督は以前から、引き際を考えていたという。

「(2021年5月に60歳になり)次の指導者(多田晃監督は22年4月に就任)に譲る予定で、監督交代後はゆっくり見守っていようと思っていた矢先、(母校からの打診があり)まさか、こうなるとは思ってもいませんでした(苦笑)」

 就任3年目の今秋、結果を出した。兵庫1位で出場した近畿大会では17年ぶりの優勝。3年ぶりとなる来春のセンバツ出場を当確としている。

 なぜ、この短期間で名門復活へと導けたのか。

 指導の軸にある東洋大姫路高に変わらない伝統は「気持ち」だと、岡田監督は語る。

「私たちの時代は執着心、気合、根性を教わってきました。昭和の時代ですから、いろいろあります。平成、令和と時代の流れがあり、気持ちの出し方も変わってきている。試合に対するすべての備え、準備を大切にしています」

打力アップに力を入れて


 高校野球は一発勝負。トーナメントを勝ち上がっていく上での鉄則は「守備、走塁、バント」だった。この基本スタンスは不変だが、「いかに点を取るか。打たないとアカン」と、履正社高を通じて打力アップに力を入れてきた。

 今春から従来よりも飛ばないとされる、新基準の金属バットに完全移行された。岡田監督も「5〜10メートルは飛距離が出なくなった」と自覚しているが「監督就任当初から言ってきましたが、今のバットでも、何とか打てるチームを作りたい」という強い意欲がある。

「金属バットの機能に頼るのではなく、打撃技術を身につけていく。きちっと打てば、長打も出る。技術が伴って、レベルアップしていく」

 聖光学院高との1回戦では猛打を、全国舞台で証明した。敵将・斎藤智也監督は「この秋の段階で、これだけ振れる。間違いなく全国トップレベル」と舌を巻いたほどである。裏付けがあった。岡田監督は「企業秘密ですから(苦笑)」と言いながらも、内情を明かしてくれた。

「打つべき球を振っている。打つべき球をしっかり打っている。投手のタイプによってルールづくりをしている。今日の先発投手はコントロールが良いので、アウトコースの真っすぐとスライダー。対応してうまく打てていました」

 聖光学院高の先発左腕・大嶋哲平(2年)は「変化球を見極められ、ストライクゾーンを振ってくる。得意としていたものが、封じられた。対策も、チームとして徹底されている。東北大会では感じなかったことで、精神的にも追い込まれていた」と、相手の強力打線を振り返った。

変わらないポリシー


 全国舞台で結果を残せたことは、岡田監督にとっても一つの達成感がある。

「日頃の練習から選手たちには『学習してほしい』と言っていますが、やってきたことが間違っていないと分かったのでは。技術アップには体力づくりが必要であることを実感したはず」

 岡田監督には学校、時代が違っても、変わらないポリシーがある。人が野球をやるという精神である。「40年以上やっていると分かるんですが、人間的な成長がないと、技術は伸びない。野球がうまくなれば、学校の成績も上がっていく。相関関係にあるんですよね。マナー、モラルについては、厳しく指導しています」。

 10分の取材の最後、岡田監督は恩師・梅谷氏について触れた。

「現役のとき、一度も褒めてもらったことがないんですよ(苦笑)。今日は、ちょっとは褒めてもらえますかね……」

 明治神宮大会は、強豪復活への途中過程である。東洋大姫路高は1977年夏に全国制覇を遂げた実績があり、甲子園での結果が求められる学校だ。63歳の熱血漢・岡田監督は後輩である生徒たちと、一つひとつのステップを踏んでいる。

文=岡本朋祐

【お詫びと訂正】
当記事につきまして、一部誤りがございました。内容につきましては、訂正したものとなります。

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