右翼席へ先制2ラン

創価大の三番・三塁の立石は3安打2打点と活躍。初戦突破を決めた試合後、淡々と打席を振り返った[写真=矢野寿明]
11月20日 神宮
【第55回記念明治神宮野球大会】
▼1回戦
創価大8-4佛教大
第55回記念明治神宮野球大会が11月20日に開幕した。第4試合は6年ぶり出場の創価大(関東五連盟第1代表/東京新大学)が佛教大(関西五連盟第2代表/
阪神大学)を8対4で下して初戦突破を遂げた。
2025年のドラフト上位候補である創価大の三番・三塁の
立石正広(3年・高川学園高)が先制2ランを含む3安打の活躍を見せた。
1回表一死二塁からスイングした打球は、右翼スタンドへと吸い込まれた。右打席から圧巻の逆方向への弾道であった。
「真っすぐに絞っていました。逆方向の長打はあるので、ちょっと上がったかな、外野を越えてくれるかなと思いましたが、意外と伸びてくれました」

1回表の先制2ランを右翼席へと運び、三塁ベースを回って生還する際にはガッツポーズを見せた[写真=矢野寿明]
第2打席は右翼フェンス直撃の二塁打。第4打席は高めの変化球を上からたたき、左前打を放った。
佛教大・國友健一監督は振り返る。
「有名な選手なので、こちらも準備していました。外を中心に配球しても、そこを一発で仕留めてくる。(対策を)上回る相手の実力でした。ウチの投手もできるところに投げ込んでいけば勝負できる、と踏んでいましたが『ゾーンに行ったら、ちょっと怖い』『散らさないといけない』と。バッテリーの駆け引きを含めて、もっと磨いていかないといけない」
調子のバロメーター

3回表の第2打席では右翼フェンス直撃の二塁打を放っている[写真=矢野寿明]
立石は2年時の全日本大学選手権1回戦(対富士大)でも、東京ドームの右翼席へ本塁打を放っている。逆方向への長打は「調子の良し悪しが分かる」バロメーターだと明かす。
なぜ、右方向の打撃が伸びるのか。2つの要因がある。まずは、打撃フォームである。
「構えから開き過ぎず、スタンスを真っすぐにして、重心は低くなり過ぎず、高いイメージでバットを振る」
最大のポイントは「脱力」である。
「力が入り過ぎる部分があるので、リ
ラックスすることを意識しています。力みなく良いスイングができている。強く振ったら強い打球が出ると思っていましたが、横浜市長杯(明治神宮大会関東代表決定戦)の前に、力を抜いても飛ぶ、という感覚をつかみました。打ちたいポイントに来たら、力を入れる」
高校通算10本塁打。体の線も細かった。3年夏の甲子園1回戦(対小松大谷高)ではバックスクリーン弾を放っている。「甲子園でパコーン!! と出ただけで、(プロ志望届)を出すレベルにはなかった」と回顧する。大学3年間で17キロ増(180センチ85キロ)。体が変わり、打撃が進化した。今夏は侍ジャパン大学代表でプレーし、レベルの高い環境で刺激を受けた。1年後に控える大学卒業後の進路志望は「もちろんプロには行きたいですけど、まだ、あまりに(周囲の声として)評価され過ぎか、と……。もっと見合った結果を残していきたい」と慎重に言葉を選んだ。
かねてから強いMLB志向
好きな選手はドジャース・
大谷翔平。スケールの大きな選手を目指しており、かねてからMLB志向が強い。今年6月に語っていた。
「野球で最高峰の世界。メジャーでプレーしたいです。現実、難しいでしょうけど、NPBで活躍してからになりますが、1年でもかじりたい思いがあります。そのための準備を、今から高い意識で進めていきたいです」
2回戦ではドラフト会議で6人(支配下4人、育成2人)が指名を受けた富士大が相手である。昨年の全日本大学選手権1回戦で立石は先制ソロを放ち、2対0とリードしたが逆転負け(2対5)を喫した。「同じ相手に2回負けるのはダメ。厳しい試合になる。守備を怠らないようにしたい」と気を引き締めた。
富士大には左腕・
佐藤柳之介(
広島2位)、右腕・安德駿(
ソフトバンク3位)、右腕・
長島幸佑(
ロッテ育成3位)の投手3本柱を擁する。アピールするには、絶好の機会である。
「リーグ戦は思うようにできなかった。一発勝負は気楽に打てばいい」
トーナメントにおける開き直りが、好結果をもたらせている。自らのストロングポイントを「ホームランを打ったらうれしい。強い打球が(外野の間を)抜けることが多い。長打が出ないときも強い打球が打てる」を語る。ストライクゾーンに取りに行けば、高い確率で、痛打を食らいそうな、懐の深い打撃フォーム。つまり、投げるコースがなく、打ち損じを待つしかない。2回戦以降も、立石のバットに注目だ。
文=岡本朋祐