優勝投手から2安打

創価大は過去最高成績となる全国準優勝。チームの勝利に貢献した立石は銀メダルを手に笑顔を見せる[写真=田中慎一郎]
11月25日 神宮
【第55回記念明治神宮野球大会】
▼決勝
青学大7-3創価大
第55回記念明治神宮野球大会の大学の部の決勝が11月25日に行われ、青学大が初優勝。創価大は全日本大学選手権を通じて初の決勝進出だったが、悲願の日本一はならなかった。
金メダルを手にすることはできなかったが、堂々の銀メダルである。創価大の三番・三塁の立石正広(3年・高川学園高)は2安打1打点。8回裏一死三塁から右前適時打を放ち、主砲として一矢を報いた。4試合で15打数10安打2本塁打6打点(打率.667)とし、1大会の最多安打記録を更新した。
「内野安打があったり、運も味方につけたと思います。史上初(の準優勝)まで頑張れたのは自信になりますが、今日は青学大・
中西聖輝投手(3年・智弁和歌山高)に対して、気持ちよくスイングをさせてもらえなかった。全球種でストライクが取れ、レベルの高いボール。すごい投手で、スキがなかった。何が足りないのかを分析したい」
優勝投手から2安打。冷静に振り返ったが、相当なインパクトを残した。今大会の2本塁打は左右に打ち分けたように、相手バッテリーは一発長打を警戒しなければいけないが、好機では軽打も打てる。つまり、ミート力に長けているのだ。懐の深い打撃フォームが特長。右打席内ではどっしりとしており、どんな球種も対応できそうなオーラがあるが、
高口隆行ヘッドコーチ(元
日本ハムほか)は「それが、できなったんです」と苦笑いを浮かべる。投手出身の創価大・佐藤康弘監督は「攻撃はすべて任せている」と、高口ヘッドコーチに全幅の信頼を寄せている。

8回裏一死三塁から右前適時打を放ち、あきらめない姿勢を見せた。場面に応じた打撃ができるのが持ち味である[写真=矢野寿明]
高口ヘッドコーチは立石が今大会、打撃好調を維持できた要因を明かす。
「リーグ戦は苦しんでいたんです(打率.244、0本塁打2打点)。横浜市長杯(神宮大会関東代表決定戦)までの期間で修正し、本人の努力が実を結びました。リーグ戦は勝たないといけない状況の中で、打ちたい、打ちたいと気持ちが空回りしていたように見受けられました。タイミングの取り方、シンプルに物事を考えるようにアドバイスしたんです。本人としてみれば、今後につながる大会になったはずです。まだ、こんなものではありません」
素材の良さは、どこにあるのか。
「しっかりと振れることです。しかも、実戦で自分のスイングができる」
立石は今大会、最も印象に残った一打として、環太平洋大との準決勝で放った左越え2ランを挙げた。「きれいにバットが走った」。内角のストレートに対して、うまく肘をたたんで運んだ。高口ヘッドコーチも「軸がブレずに、(体の)回転で打てた」と高く評価した。
二塁、遊撃にも挑戦

高口ヘッドコーチ[左]は立石[右]の成長を見守ってきた[写真=矢野寿明]
3年秋のシーズンを終えて、来年は進路が決まる大事な最終学年となる。
「ドラフト指名も近づいてくるので、春のシーズンも大切。結果を求め、春のリーグ戦は圧勝して、全国の舞台に戻って来られるようにしたい。これまでと変えることはなく、今までやってきたことを継続し、謙虚に取り組んでいきたい」
立石は大型三塁手としての存在感を示しているが、プレーヤーとしての幅を広げるため、新チームでは二塁、遊撃の練習を重ねていくという。高口ヘッドコーチも「どちらからを、やらせたいと考えています。それが、将来的な、本人のためにもなる」と語る。
今大会で2025年のドラフト戦線の「主役候補」に躍り出た立石。11月30日からは侍ジャパン大学代表候補強化合宿(愛媛・松山)に参加する。今夏に初代表入りしたが、国際大会2大会で打率.190、0打点と苦しんだ。自身の代となり、日の丸をけん引していく覚悟がある。そのバットから、目が離せない。
文=岡本朋祐