経験豊富な頼もしい司令塔
巨人に頼もしい司令塔が加入する。ソフトバンクから国内FA権を行使した
甲斐拓也と契約合意したことを球団が12月17日に発表。残留交渉を行っていたソフトバンクと一騎打ちの争奪戦となったが、甲斐の実力を高く評価している
阿部慎之助監督が直接出馬するなど、必死のラブ
コールが実る形となった。
誰もが認める名捕手だ。ソフトバンクでは主力としてチームを支え、ゴールデン・グラブ賞を7度受賞。今季は首位を独走し、4年ぶりのV奪回に大きく貢献した。捕手は経験がモノをいうポジションだ。侍ジャパンでも常連で2021年の東京五輪、昨年のWBCで世界一を貢献。勝つ術を知る甲斐の存在は巨人に大きなプラスアルファをもたらすだろう。
21年の東京五輪は新型コロナ禍で開催されたため、長時間の濃厚接触が禁じられ、密にコミュニケーションを取ることが難しかった。甲斐は大会後に週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「本当にそこは難しかったです。ホテルで部屋を行き来するのも簡単にはできない状況だったので。練習と、強化試合(7月24日の
楽天戦、25日の巨人戦=ともに楽天生命パーク)、あとはブルペンで球を受ける中で、一人ひとりと話をしました。例えば、自信を持っている球もそれぞれ違うんでね。試合の前日になると少しだけ、先発だった由伸(
山本由伸)や森下(
森下暢仁)の部屋に行って『僕はこう思っているよ』という、最終確認じゃないですが、あらためて自分のイメージを伝えたりもしました。ただ、それも長い時間はいられないので……」
「こういう大きい大会ともなると、ピッチャーは誰もが不安になると思うんですよ、マウンドに上がったら。そこで僕がキャッチャーとしてここまで感じたところを伝えてあげて、『次の先頭バッターはこうだからこういうふうにやりましょう』というプランを立ててあげられれば、ピッチャーも信じて投げてくれる。ピッチャーが少しでも安心して投げられるようにすることが大事なんです」
36歳のベテラン右腕

巨人移籍が決定的な田中。新天地で復活できるか
甲斐はリーグトップの盗塁阻止率を2度マークし、
広島と対戦した18年の日本シリーズでは新記録となる6連続盗塁阻止している。「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩の印象が強いが、一番の強みは投手やナインに与える安心感だろう。積極的にコミュニケーションを取り、投手の考えを理解して良さを引き出す。ソフトバンクに育成の同期入団で、直球とフォークのコンビネーションで抑え込む
千賀滉大(現メッツ)、多彩な変化球を操り打者を翻弄する
有原航平などさまざまなタイプの投手を好リードで引っ張ってきた。
巨人には
戸郷翔征、
山崎伊織、
グリフィン、
井上温大を筆頭に力のある投手がそろっている。特に興味深いのが、楽天を退団して巨人への入団が濃厚となっている
田中将大とのバッテリーだ。今季は1試合登板のみに終わったが、日米197勝を挙げている右腕はコンデションを整えればまだまだ白星を積み重ねられる。
ヤクルトの
嶋基宏ヘッドコーチは、楽天で現役時代に田中とバッテリーを組んでいた。自身が19年オフにヤクルト移籍後も田中のことを気に掛けていた。20年オフにメジャーから楽天に復帰する際、「今、コロナ禍でなかなかお客さんが入れなくなったりしている中、田中が帰ってきたことで、またみんなが野球を見たり球場に足を運んだりしてくれれば、日本を元気づけることにもなるのかな、と。僕の予想ですが、ケガなく普通にやれば結果は残すと思いますし、田中はそういうプレッシャーにも必ず打ち勝つ男です。リーグは違うのでテレビで見ることのほうが多いと思いますが、僕も楽しみにしています。いつか対戦したいし、ボールも受けたいですね」と語っていた。
月日を経て田中は巨人に入団し、甲斐が女房役を務める。どのような配球で、36歳のベテラン右腕を輝かせるか。腕の見せ所だ。
写真=BBM