攻守でアピールが必要

今季、2年目を迎える佐々木。勝負のシーズンとなるのは間違いない
まだプロ2年目という意識はないだろう。勝負の年を迎えるのが、
巨人の佐々木俊輔だ。
大学、社会人を経て25歳。新人の昨年はプロの厳しさを味わった。オープン戦は規定打席に1打席足りなかったが、45打数18安打、打率.400とアピール。状態の良さを首脳陣に認められ、「一番・中堅」で開幕戦に出場した。巨人で新人野手の開幕スタメン出場は2001年の
阿部慎之助監督以来、23年ぶりだった。だが、オープン戦と公式戦では相手バッテリーの配球がガラッと変わる。スタメンで試合に出続けるが結果を残せず、一軍と二軍を行き来した。プロとアマチュアでは打球の質が違う。外野の守備でも目測を誤る場面が見られた。
後半戦は出場機会を減らし、チームが4年ぶりのリーグ優勝を飾った瞬間はファームで迎えることに。59試合出場で打率.231、0本塁打、6打点。初球から豪快に振り抜く思い切りの良さが魅力だが、リードオフマンとして9四球、出塁率.275は物足りない。2ストライクと追い込まれた後にボール球になる変化球で空振りする打席が目立った。
攻走守で能力が高い選手であることは間違いない。イースタン・リーグでは54試合出場で打率.315、3本塁打、20打点。一軍では2盗塁にとどまったが、ファームで11盗塁を積み上げた。アマチュアとプロで投手に大きな差があるように、プロでもファームと一軍レベルの投手では直球の球威、変化球のキレ、制球力がまったく違う。本人も打席に立ち続けたことで、課題を自覚して頭の中は整理されているだろう。
巨人の外野陣を見渡すと、エリエ・
ヘルナンデス、
丸佳浩がレギュラー格で、残り1枠は
岡本和真か前パイレーツのトレイ・キャベッジが入る公算が高い。
浅野翔吾、
萩尾匡也、
秋広優人、
オコエ瑠偉、ベテランの
長野久義らがこの序列をひっくり返そうと闘志を燃やしている中、佐々木は春季キャンプで一軍スタートが決定。目標は一軍に生き残ることではなく、スタメンを勝ち取ること。攻守でアピールが必要な立場だ。
大学、社会人経由で2000安打

2023年には2000安打を達成した大島
過去に大学、社会人を経て名球会入りした選手は
古田敦也(元
ヤクルト)、
和田一浩(元
西武、
中日)、
宮本慎也(元ヤクルト)、
大島洋平(中日)の4人のみ。このうち、左打者は大島のみだ。広角に安打を打ち分け、俊足が武器のプレースタイルは佐々木の目指すべきモデルといえる。
大島はプロ1年目の11年に104試合出場で打率.258、0本塁打、17打点、8盗塁をマーク。外野の守備力で貢献度は高かったが、打撃は規定打席に届かず定位置をつかむまでには至らなかった。超一流になる選手は課題を克服し、長期間活躍する。3年目の12年から12年連続で100試合出場&100安打を記録。19、20年と2年連続最多安打に輝いている。23年8月26日の
DeNA戦(バンテリン)で、プロ通算2000安打を達成。週刊ベースボールのインタビューで、毎年コンスタントに活躍している理由を聞かれた際に以下のように語っている。
「どうですかね。僕の場合、パワーがないからじゃないですか。そもそも出力が少なく、その中で自分のパワーのキャパを超えることがないので、だから大きなケガもしないのかなと。もちろんケガがまったくないことはないですが。ただ、それは僕の一番の武器でもあるし、逆に弱点でもあるのかなと」
「それは(シーズン中は)しんどいですよ。今でもしんどい。しんどくない選手なんていないと思います。シーズンが終わったら、体がガッタガタになりますから。だから(シーズン中は)ケアが本当に大事。そのしんどい中で、どれだけやれるかが勝負なんです」
大島はドラフト5位入団で注目度が高い選手ではなかったが、プロの世界で大輪の花を咲かせた。佐々木はパンチ力があるが、確実性に課題を残す。1年目を終えてどのような方向性を目指すか。今年は野球人生の大きな分岐点になりそうだ。
写真=BBM