際立っていた素質

今季でプロ12年目を迎える平良
昨年日本一に輝いた
DeNAだが、レギュラーシーズンは3位に終わった。リーグ制覇に向けてカギを握るのは投手陣だ。上位2球団の
巨人、
阪神に比べて先発の層が薄い。当確と言えるのはエースの
東克樹、助っ人外国人の
アンドレ・ジャクソン、
アンソニー・ケイ。昨季6勝に終わった
大貫晋一、プロ2年目の
石田裕太郎、昨年のシーズン終盤に頭角を現した
吉野光樹、ドラフト1位の
竹田祐(三菱重工West)、2位の
篠木健太郎(法大)が有力候補になる。
そして、「エース級の素材」と評される右腕が完全復活すれば、大きなプラスアルファになる。29歳右腕の
平良拳太郎だ。他球団のスコアラーは「投げる球を見れば、先発の中心になれる。巨人時代から素質は際立っていました。故障なく1年間シーズンを通して投げ切れば間違いなく2ケタ勝利を挙げられる」と話す。
人的補償でDeNAへ
躍動感ある投球フォームで二段モーションからサイドで腕を振る。直球は140キロ台前半だが、打者は球速表示以上の速さを感じる。スライダー、シンカー、カットボールを駆使して内野ゴロの山を築く。巨人にドラフト5位で入団して将来を嘱望されたが、FA移籍した
山口俊の人的補償で17年にDeNAへ移籍。その存在がフォーカスされたのは20年だ。12球団でただ一人、開幕から8試合連続クオリティースタート(先発で6回以上、自責点3以下)を達成。週刊ベースボールのインタビューで、手ごたえを口にしていた。
「一番変わったのは、要所で右打者、左打者に対してうまくインコースを使った投球できている点ですかね。変化球ではスライダーの割合が多くなっていて、打者のタイミングをずらすことができていると思います。シンカーを含めて、握りやボールの軌道は昨年と変わりませんが、変化球の“使いどころ”は意識するようになりました」
「状況に応じて意識的に抜いたり、曲げたり、打者の反応を見ながら投げられるようになったことが大きいです。その結果、打者に的を絞らせない投球につながっているようにも感じています。その中で、先ほどお話ししたインコースが効果的に使えている。打者が強く踏み込んでいるな、と感じたら右打者ならシンカーであったり、速い真っすぐで打者の目線を変えられているかなと。同じ変化球でも腕の位置を変えるなど、工夫しながら投げることができています」
同年は打線の援護に恵まれず4勝にとどまったが、14試合登板で防御率2.27をマーク。さらなる飛躍が期待されたが、故障に苦しむ。翌21年に右肘痛で2試合登板にとどまり、トミー・ジョン手術を受けた。育成契約となり、リハビリから再出発することに。実戦復帰のメドが立った22年に支配下昇格すると、23年に一軍復帰して11試合登板で4勝4敗、防御率3.49の成績を残した。
昨年もケガに苦しめられて
今永昇太、
トレバー・バウアーと先発の軸が2枚抜けた昨年は開幕から先発ローテーションに入り、3月30日の
広島戦(横浜)で6回まで無安打無失点の快投。9回途中4安打1失点で好スタートを切ったが、その後に試練に見舞われる。右肘の違和感で一軍のマウンドから3カ月離れることに。7月4日のヤクルト戦(横浜)で自身初のプロ初完投初完封勝利を飾り、「昨日まで中継ぎの方がたくさん投げていたので、少しでも長いイニングを投げたいと思っていました。それに守備の人たちのいいプレーにも助けられました」とお立ち台で感謝の思いを口にしたが、7月中旬に腰椎椎間板ヘルニアの診断を受けて再び離脱した。
4試合登板で2勝0敗、防御率1.21と登板した試合はきっちり結果を残したが、投球回数29回2/3は少なすぎる。チームはCS、日本シリーズを勝ち抜いて頂点に立ったが、平良は複雑な思いだっただろう。
今年はDeNAに移籍して9年目となる。チーム内でも在籍期間が長くなり、投手陣を引っ張る活躍が求められる。エースの東も度重なる故障を乗り越え、大ブレークした。平良も大輪の花を咲かせられるか。
写真=BBM