昨年は不本意な結果

強打が武器の捕手・大城
正捕手返り咲きへ――。並々ならぬ決意で春季キャンプに臨んでいるのが
巨人・
大城卓三だ。
正捕手を務めてきたが、昨年は試練を味わった。攻守で精彩を欠き、ファーム降格を経験。
岸田行倫に扇の要を明け渡した。捕手で先発マスクをかぶったのは34試合にとどまり、強打を買われて一塁で出場機会の方が多かった。チームは4年ぶりのリーグ優勝を飾ったが、96試合出場にとどまり、打率.254、3本塁打、27打点と不本意な結果に。
巨人OBで長年コーチを務めていた野球解説者の
村田真一氏は、大城について週刊ベースボールで昨年6月に以下のように語っていた。
「大城に関してはリードや配球が批判を浴びることもあるようですが、決して悪いとは思いません。しっかりと意図を持った配球をしているからです。ただ、小林(
小林誠司)や岸田と比べて物足りない点、もしかしたら阿部監督が不満に思っているかもしれないのは、キャッチャーとしてのリーダーシップです。僕は現役時代、当時の
藤田元司監督に『お前の指1本(サインひとつ)でチームが負けるんだ。考えろ!』とさんざん言われながらキャッチャーとして育てられました。だからコーチになってからも、阿部監督にはそのことをきつく言ってきたつもりです。ただし、いくらキャッチャーとして配球の意図を持っていたとしても、それをしっかりとピッチャーに伝えることができなければ意味がありません」
「その点で小林や岸田は胸元に1球見せたいとき、変化球を必ず低めにコントロールさせたいときなどには、時に大きなジェスチャーを見せたり、大胆に構えたりしてピッチャーに意図を伝えようとします。そうした自分のリードの意図をピッチャーに伝える仕草を大城はもっとオーバーにやっていいと思いますし、自分の意図と違うボールが来たときには、ピッチャーに対してしっかり意見を言うことも必要になります」
評価される補強策
現役時代に名捕手として活躍した
阿部慎之助監督は、守備面でさらに上の水準を求めている。捕手はチームを勝たせることで評価されるポジションだ。岸田、小林、大城の3人を併用してV奪回を果たしたが、今年は軸となる捕手が加入した。ソフトバンクで常勝軍団の中心選手となり、昨オフにFA移籍した
甲斐拓也だ。野球評論家のデーブ大久保氏は週刊ベースボールのコラムで、この補強策を評価している。
「甲斐の獲得にも大賛成です。大城卓三や岸田行倫などがいるのになぜ……と思っているファンも多いとは思います。でも、甲斐獲得に動かせてしまったのも、彼ら捕手の責任でもあるんです。誰も正捕手になれなかったからなんですよ。これが
ヤクルトの
古田敦也さんや
西武の
伊東勤さんのような捕手であったら、獲得に動きますか?巨人は勝たないといけないのです。つまり彼らが正捕手に定着できなかったということの裏返しでもあるんです」
切磋琢磨しながら
甲斐の実績は周知の事実だ。ゴールデン・グラブ賞を7度受賞し、2017年から4年連続日本一に。昨年は日本シリーズで
DeNAに敗れたがペナントレースは圧倒的な強さで制した。侍ジャパンでも常連として活躍している。新天地で正捕手の最有力候補であることは間違いないが、大城にも意地がある。昨年のシーズン中にFA権を取得し、出場機会を考えるなら他球団に移籍という選択肢があった。実際に捕手としての実力を高く評価する球団はあったが、巨人に残留して正捕手を奪取する道を選んだ。昨年は不慣れな一塁を守る機会が多かったが、今年は
岡本和真、新外国人のトレイ・キャベッジのどちらかが入る公算が高い。「打てる捕手」としての価値を証明するためには攻守両面でアピールする必要がある。
大城と甲斐は「92年世代」の同学年。捕手としてはこれから円熟味が増す。切磋琢磨しながら、黄金時代の構築を目指す。
写真=BBM