躍動感あふれる投球フォーム

今季こそ、勝利を積み重ねてチームの力になりたい
並々ならぬ決意で今年に臨んでいる右腕がいる。
中日のプロ7年目右腕・
梅津晃大だ。
2022年3月に右肘内側側副靱帯の再建術、通称トミー・ジョン手術を受けて、23年のシーズン終盤に一軍復帰。3試合登板して防御率0.95と大きな可能性を漂わせた。秋季キャンプでは
立浪和義前監督から「来年は1年間、使う。だから絶対に故障だけはしないでくれ」と声を掛けられている。ケガがなければどんな成績を残すのか。「中日のエースになれる素材」と評価する声が野球評論家からも聞かれた。
梅津の野球人生は故障との闘いだった。入団1年目の19年1月に「右肩インピンジメント症候群」と診断され、2月の春季キャンプはリハビリで別メニュー調整に。夏場に一軍デビューして4勝を挙げたが、翌20年以降も右肘痛で満足に投げられない時期のほうが長かった。187センチの長身で長い手足を生かして投げ込む直球は常時150キロを超え、スライダー、フォークの質も高い。躍動感あふれる投球フォームが
大谷翔平(ドジャース)を連想させる。
昨年は右肘への負担を考慮しながら、中10日の登板間隔を空けて投げ続けた。14試合登板で2勝8敗、防御率4.07。77回1/3を投げて72三振と高い奪三振能力を発揮した一方で、課題が浮き彫りになった。31四球と制球に苦しみ、不利なカウントから甘く入った球を痛打される場面が目立った。決して悪い投球内容ばかりではない。登板した半分の7試合で6イニング以上を投げ切り、7月15日の
ヤクルト戦(神宮)から4試合連続100球以上を投げた。プロに入って初めて故障なく1年間を投げ切ったことで、手ごたえをつかんだだろう。
強い絆で結ばれた仲間
梅津には強い絆で結ばれた仲間たちがいる。NPBで現在もプレーしている東洋大の同期たちだ。顔ぶれを見ると、
藤井聖(
楽天)、
甲斐野央(
西武)、
中川圭太(
オリックス)、
末包昇大(
広島)、
上茶谷大河(
ソフトバンク)と力のある選手たちがズラリ。藤井は昨年自身初の2ケタ勝利を挙げている。この中で梅津は大学時代に1年春でリーグ戦初登板を飾り、同期の中で最も速く公式戦デビューを飾っている。しかし、その後は制球難、度重なる故障で力を発揮できない時期が続いた。リーグ戦初勝利は4年秋。目立った実績はなかったが、潜在能力の高さを評価されて中日にドラフト2位で入団した。
今年の1月に6人が集まり、東洋大の同期会を開催した。梅津は「同期ってプロでも高校でもたくさんいるけど、大学の同期は特に特別。東洋大は厳しい練習も多くて、今では笑い話だけど、全員が丸刈りになったことも……。そういったことも乗り越えてきたし、ギリギリのところで戦っていたからケンカもしたし。いっぱい飲んで遊んで、人間の底を見せ合った仲間だなと思う」と振り返っている。中川が「俺と梅津はケンカしたなあ」、末包が「梅津は熱い男なんだよね」と懐かしむと、梅津は「(大学の同期は)ライバルというよりも頑張ってほしい存在。だけど対戦では負けたくないと思う。戦友みたいな、家族みたいな、特別な存在だよね」と思いを口にしている。
背番号『18』を背負って
順風満帆な野球人生はない。藤井が素質を開花させた一方で、昨オフにソフトバンクからFAの人的補償で西武に移籍した甲斐野は右肘のコンディション不良で長期離脱し、19試合登板にとどまった。末包、中川もチームの中心選手として期待されたが故障で不完全燃焼のシーズンに。上茶谷は現役ドラフトで
DeNAからソフトバンクに移籍した。
梅津も「期待の若手」としてチャンスを与えられる時期は過ぎた。プロ3年目の21年から背番号『18』を着け、「小さいころから松坂さん(
松坂大輔、元西武ほか)にあこがれていました。プロで松坂さんと同じ『18』を着けるのが一つの夢でした」と語っていた。今年はエースナンバーで大輪の花を咲かせる。
写真=BBM