逆方向にも打てる打撃
V奪回へ、待ち望まれるのが新戦力の台頭だ。
藤川球児新監督が就任した阪神は三番・
佐藤輝明、四番・
森下翔太、五番・
大山悠輔の新クリーンアップ構想を打ち出している。この3人が打線の中軸で活躍してもらわなければ困るが、シーズン中は故障など不測の事態が起きることを想定しなければいけない。実際に昨年は佐藤、森下、大山が打撃不振でファーム降格を経験している。3人がそろわなくても、得点力を維持したい。新加入で期待が掛かるのがラモン・ヘルナンデスだ。
2014年にダイヤモンドバックス傘下でデビュー。メジャー昇格経験はないが、昨季はメキシカン・リーグのモンクローバで82試合出場し、打率.313、22本塁打、71打点をマークした。一塁、三塁に加えて左翼も守る。大山、佐藤のバックアップ要員としてだけでなく、左翼で
前川右京、
井上広大、
野口恭佑との定位置争いに割って入る力が十分にある。
春季キャンプではシートノックで三塁のほか、一塁、左翼に入って軽快な動きを披露。2月8日の紅白戦では、紅組の「四番・指名打者」で出場し、3回一死一、二塁で左腕・
石黒佑弥のスライダーを右方向に運ぶ適時二塁打。他球団のスコアラーは「長打力があるだけでなく、逆方向にも打てる。これから実戦を見続けて情報収集するけど、穴が少ない打者のイメージですね。打撃フォームやスイング軌道がマルテと重なります。日本で活躍できる可能性が十分にあります」と警戒を口にする。
「よくボールを見極めることが大事」

阪神で2019年から4年間、プレーしたマルテ
阪神で2019年から4年間プレーした
ジェフリー・マルテは故障が多かったのがネックだったが、勝負強さが光る強打者だった。来日1年目の19年は105試合出場で打率.284、12本塁打、49打点をマーク。選球眼の良さが光り、出塁率.381だった。21年は128試合出場で打率.258、22本塁打、71打点。出塁率.367と打率より1割以上高かった。ムードメーカーとしてもチームを盛り上げ、本塁打を打ったあとにベンチ前で行っていた左手を天に掲げて弓を引くパフォーマンス「ラパンパラ」で、スタンドを盛り上げた。マルテは日本でプレーする上で意識していることについて、週刊ベースボールのインタビューで以下のように語っていた。
「僕自身、ストライクゾーンだけを狙って打っているし、そこはすごく集中している。それと同時にあまりたくさん、いろいろな情報を頭の中に入れないようにしているんだよね。このことは、僕にとって非常に重要な部分で、打席の中でメンタルを崩さないことが一番大事なことだと思っているんだ。そこでシンプルにストライクゾーンに集中していこうと考え打席には立っているし、しっかりとボールをミートするように心掛けている」
「打席の中でのアプローチはメジャー時代とほとんど変わることはないんだけど、日本人のピッチャーは1球ごとにタイミングを変えてきたりするよね。足を上げてからボールを長く持ったり、クイック気味に早く投げてみたりというピッチャーが本当に多いから、そのための準備と、よくボールを見極めていくことが大事なことだと思っている」
チームの命運を左右する助っ人
助っ人外国人の活躍はチームの命運を左右する。昨年4年ぶりのリーグ優勝を飾った
巨人はシーズン途中で加入したエリエ・ヘルナンデスが56試合出場で打率.294、8本塁打、30打点と攻守で活躍し、ココ・モンテスも不慣れな外野を守り、46試合出場で打率.272、1本塁打、14打点と奮闘したことが大きなプラスアルファになった。一方で阪神は中軸で期待された
シェルドン・ノイジーが49試合出場で打率.231、1本塁打、8打点と精彩を欠き、ムードメーカーの
ヨハン・ミエセスも14試合出場で打率.111、0本塁打、0打点とふるわず、昨年限りで退団した。
ヘルナンデスの推定年俸は30万ドル(約4700万円)。助っ人外国人では格安の部類だが、28歳と野球人生で脂が乗りきる時期に入る。日本で大ブレークできるか。
写真=BBM