ポストシーズンで真価を発揮

今年は1年を通じた活躍が期待される森敬
3月5、6日の侍ジャパン強化試合に出場する侍ジャパンのメンバーが2月14日に発表され、
DeNAの
森敬斗が初選出された。
プロ6年目を迎える若手成長株は、規定打席に到達したシーズンがない。だが、昨年のシーズン終盤の活躍が今回の選出につながったことは間違いない。レギュラーシーズン3位から日本一にたどり着いたCS、日本シリーズ全14試合に先発出場。攻守で高いパフォーマンスを発揮した。他球団のスコアラーは「身体能力の高さは球界屈指。プレーの波がなくなれば、球界を代表する遊撃になれる」と評価する。
DeNAには
牧秀悟、
タイラー・オースティン、
宮崎敏郎、
筒香嘉智、
佐野恵太と強打者がそろっている。ただ、長打を打てる打者を並べても得点が取れるわけではない。2ストライクに追い込まれてもファウルで粘り、相手バッテリーを消耗させる。打線の潤滑油になったのが森敬だった。日本シリーズは6試合で計125球を
ソフトバンクの投手陣に投げさせた。下位打線で簡単にアウトにならず、5つの四球を選んでチャンスメーク。打率.300という数字だけでなく、出塁率.440が貢献度の高さを表している。
自身の課題を直視」
週刊ベースボールのインタビューで、日本シリーズについて以下のように振り返っていた。
「やっぱりタイミングがずれたときにいいスイングをするのは難しくて。これまでは、タイミングがずれると手で急いでしまい、変に前へ飛んでしまってセカンドゴロなんてことも多かったんです。今はバットがいい軌道で入っているから、とらえられなくても、自分で思ってないタイミングでも『勝手に』ファウルになるイメージですね」
「選球眼が良くなったとかではなくて、今はポイントを体の近くにしたことで長くボールを見ることができているからだと思います。加えて、自分のポイントにパンっとバットを出せるようになったことも、ボールを呼び込めることにつながったのかなと思います」
大舞台で大きな手応えをつかんだ一方で、自身の課題を直視している。
「ああいう舞台で、自分のやるべきことができたことは自信になりました。でも正直この程度やったからといってどうなんだと考える自分もいて。やっぱりもう少し長い期間をフィジカル面なども含めて戦えるようにならないといけないと思います。この終盤戦は確かにきっかけにはなりました。その上で来年、1年間ちゃんと戦って結果が出たら自信を持てたと言えるかな。1年でそう思えるかは分からないですけど(笑)」
侍ジャパンにライバル

同学年の遊撃手・長岡と切磋琢磨したい
本人が自覚しているように、まだシーズンを通じて活躍した経験がない。今回侍ジャパンの代表に選出された遊撃は、昨年自身初のゴールデン・グラブ賞に選出された
矢野雅哉(
広島)、最多安打のタイトルを獲得した同学年の
長岡秀樹(
ヤクルト)と実力者が名前を連ねた。
特に長岡はドラフト5位で入団した当時、同期入団で1位指名の森に比べて注目度が低かったが、その後の活躍で世代のトップランナーになった。2022年に遊撃の定位置をつかむと自身初の規定打席に到達し、球団史上最年少の21歳でゴールデン・グラブ賞を受賞。リーグ連覇に貢献し、昨年は全143試合出場で打率.288、6本塁打、58打点をマークしてベストナインに選出された。
追いかける長岡の背中を追い越すためには、DeNAで不動の遊撃にならなければいけない。親身に指導してくれる
石井琢朗野手コーチは現役時代に球界を代表する名遊撃手として活躍。盗塁王に4度、最多安打に2度輝き、通算2432安打をマークした。石井野手コーチが森敬に求めるプレーの水準が高いのは、潜在能力を評価している証しだ。リーグ優勝、2年連続日本一へ。森の活躍がDeNAの命運を握っている。
写真=BBM