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【大学野球】戸村健次コーチの手腕で確立された強固な立大投手陣 自覚あふれる4年生トリオ

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「良い文化になっている」


立大は4年生右腕3人がV奪還を誓う。左から竹中、小畠、吉野[写真=上野弘明]


 東京六大学リーグ戦で2017年春以来のV奪還を狙う立大は、2月1日から約1カ月半にわたる長期キャンプを張っている。活動拠点である新座キャンパス内のグラウンドがネット拡張工事のため、昨年11月上旬から3月中旬過ぎまで全面使用できないからである。

 リーグ戦メンバークラスのAチーム34人は鹿児島県阿久根市内で約1カ月練習し、3月6日から1週間、宮崎県西都市内で二次キャンプを張る。Aチーム入りを狙うBチーム25人は、鹿児島市内で3月1日までキャンプを行う。残留組は、新座で汗を流している。

 昨春に就任した同校OB・戸村健次コーチ(元楽天)は投手部門を担当。専門分野であるデータトラッキング機器を駆使した計測(回転数ななどを計測する投手はラプソード、スイングスピードなどを計測する打者はブラスト)を一つの指導ツールとして実践している。

「チーム内でデータ収集が、土壌として育ってきている。数値がすべてではありませんが、自分自身を知ることができる。測ることによって、初めて見えてくるものがある。検証、比較し、使える数値であれば、実戦に活用していく。良い文化になっていると思います」

 立大は昨春、東大から挙げた勝ち点1の5位。4カードで1勝を挙げたが、勝ち点勝負となった3、4回戦を落とした(6勝8敗1分)。秋は慶大、東大から勝ち点を挙げて4位。残る3カードでも1勝を挙げ、紙一重の戦いを展開している(7勝7敗1分)。昨年1年で着実に成果を上げているのも、強固な投手陣を確立させた戸村コーチの貢献度が大きい。

「自由度」を与えた理由


 昨秋を通じて神宮で実績十分の4年生トリオがいる。昨春からエース背番号18を着ける151キロ右腕・小畠一心(智弁学園高)、不動の守護神である151キロ右腕・吉野(仙台育英高)、先発、救援と何でもこなせる146キロ右腕・竹中勇登(大阪桐蔭高)が健在だ。

「3人は経験値があるので、リーグ戦でやってもらわないといけない。期待値というレベルの話ではなく、優勝を目指す上で絶対に必要な戦力です。彼らについては『自由度』を与えている。今後、高いレベルで野球を続けていく中で、自己管理能力が求められる」

「自由度」とは何か。戸村コーチは動いた。4年生3投手のAチームキャンプ合流を、本体から約2週間遅れの2月16日に設定したのである。これには、意図があった。

「ひいきでも、何でもありません。それだけの実績、信頼がある。キャンプ前、投手陣全員を集めて説明しました。下級生には『4年生3人の背番号を奪え!!』と伝えました。競争がなければ、チーム力はアップしない。3人が合流する前のオープン戦では、ベンチ入り当落線上の投手陣が良いパフォーマンスを見せてくれました。一方で、3人はチーム内で追われる立場となりますが、自覚を持って取り組んでくれている。これからオープン戦に入っていきますが、チームの皆を納得させるような投球を見せてほしいと思います」

悲願の天皇杯奪還へ


 責任感が強い小畠は、覚悟を持っている。

「練習では量、質とも皆と一緒のことをしていてはダメ。自分は器用ではない。人よりも数をこなさないといけないタイプなんです。高校時代は2番手投手。2人が背番号1を着けることはできない。西村(西村王雅、東芝)の背中を追いかけてきた立場。人に負けたくない。一番下から這い上がる。大学を通じて練習、トレーニングを1日たりとも妥協したことはない。胸を張って言える。継続は力なり? そんなカッコいいものではないです(苦笑)。泥臭く続けている。投げた試合は全部、勝ちたい。立教で勝って、プロに行きたいです」

 追い込んでからのフォークに絶対的な自信がある吉野も小畠同様、強気の投球が持ち味だ。

「この春までに155キロを出したい。投げた試合は、無失点にこだわります。ピッチャー陣が3点以内に抑えれば、良い戦いができる。小畠、竹中とはずっと1年生から一緒に取り組んできて、深い絆で結ばれている。僕らの代で優勝して、池袋でパレードをしたい」

 竹中は倉敷ビガーズヤングに在籍した中学3年時に侍ジャパンU-15代表で小畠とチームメートだった。小畠、吉野と比べて神宮デビューは遅かったが、地道に努力してきた。制球力が抜群で、スライダー、チェンジアップに加え、新球・カットボールを巧みに操る。

「最終学年で結果を残すしかない。ゼロに抑えるための最善の準備をする。1カードで連勝することが理想ですが、3回戦になった場合は、投手陣全体で勝ち点を奪いにいく。先発、救援でも与えられた場面で全力を尽くす。自分が4勝できれば、安定感抜群の小畠もいるので、リーグ優勝に近づいてくると思う」

 1回戦は小畠、2回戦は竹中が先発し、ブルペンには吉野がスタンバイ。戸村コーチは「理想かもしれませんが、昨春、2回戦の先発を務めた大越(大越伶、4年・東筑高)もいる。秋は竹中に2回戦の先発を奪われ、期するものがある。すべてはオープン戦の結果次第で、神宮で投げる投手は決まります」と語る。

 悲願の天皇杯奪還へ。チームスローガンは「飛躍」である。「連盟創設100年、新しい歴史を作ろう!!」。立大全部員の合言葉である。

文=岡本朋祐

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