さまざまな視点でチェック

立大で5日間、臨時コーチを務めた松井氏。オープン戦後は、一塁ベンチ前で学生たちに細部まで指示を送った。中央は木村監督、右は西川侑志主将[写真=上野弘明]
松井稼頭央氏(
西武前監督)が2月14日から5日間、鹿児島県阿久根市内でキャンプを張っている立大を、臨時コーチとして指導した。
松井氏は日米通算2705安打を放ち、引退後は西武で指導者経験を積んだ。就任2年目の昨年5月、成績不振により監督を休養。退団後、次へ向けた動きとして、昨オフに学生野球資格回復制度の研修を受講し、今年2月6日、日本学生野球協会から「第4条の認定者」として承認された。なぜ、立大での指導が実現したのか。就任2年目の木村泰雄監督は言う。
「幅広い分野で、野球の勉強、研究をしたいと。松井さんの知人からのアドバイスもあり、2023年に開設された立教大学のスポーツウエルネス学部の大学院(スポーツウエルネス学研究科)に興味を示していただいたと聞いています。大学院入試はこれからになりますが、野球部と連携すればより良いという話になり今回、臨時コーチの指導が実現しました」
松井氏はベンチ入りクラスのAチーム34人が参加するキャンプ地で、精力的に動いた。
「こんな機会をいただいて、感謝しています。充実した5日間を過ごすことができました。初めて接する選手たちですので、私自身もまずは見ることからスタートしました。その中で照らし合わせ、お互いで話をしながら進めてきました。楽しみな選手が多いですね」
「目から鱗が落ちる」とは、この日のために使うフレーズ。木村監督は言う。
「すごい方に来ていただいた。学生よりも一番、緊張しているのが私でした(苦笑)。プロの世界で長くプレーされ経験、実績とも十分です。選手たちをしっかり観察された上で、個々の能力を生かした助言をしてくださる。打つこと、走塁。心に刺さる言葉ばかり。特に走塁はリードの大きさ、スタートの切り方など、ご自身が動いて見本を見せてくれた。理論と、実際の動きを擦り合わせる。選手たちは今後、納得して取り組んでいける。私自身も勉強となり、ありがたい5日間でした」
オープン戦はネット裏のスタンド、そして、スタンド下の本部席と、さまざまな視点でチェック。試合後は一塁ベンチ前で、試合で気づいたことを総括し、選手たちは耳を傾けた。
今回の5日間限定ではない。松井氏は言う。
「立教大学野球部さんとこうしたご縁をいただいたわけですからこの春、神宮にも見に行きます。プロ野球の世界に18歳で入って、指導者を含めて約30年在籍してきました。私自身もこれから勉強して、学生野球界に恩返しすることが大切なことだと思っています。選手のきっかけになってくれればうれしいです」
立大は昨今、投手、打者がトラッキングシステムでデータを収集し、現場に落とし込む新たな「文化」が確立。数値化され、己を知ることで、スキルアップに努めている。今回は、元プロの本物の技術を吸収する場に恵まれた。2017年春以来のV奪還を目指す今春、キャンプでの鍛錬を、リーグ戦に存分に生かす。
文=岡本朋祐