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飛距離は細川成也より上…覚醒待たれる「中日の長距離砲」は

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飛躍のカギは「ミスショットをなくすこと」


昨年は一軍で結果を残せなかった鵜飼


 飛距離は12球団でもトップクラスだろう。だが、確実性を身につけなければ一軍の舞台では活躍できない。野球人生の岐路を迎えているのが、中日鵜飼航丞だ。

 二軍スタートとなった春季キャンプでは、2月17日のシート打撃で松葉貴大のツーシームを左中間最深部へ叩き込む特大アーチ。スポーツ紙の記者は「驚きはありませんね。飛距離だけで言えば細川成也より上でしょう。中田翔も驚くほどです。問題は試合で発揮できるか。昨年までは結果を出そうという思いが強すぎるあまり、外角に逃げる変化球のボール球を空振りする場面が目立ちました。ストライクゾーンに来る球をきっちり見極めて、ミスショットをなくせるか。一軍で活躍できるかはこの点につきます」と指摘する。

 アマチュア時代から球を遠くへ飛ばす能力は抜きん出ていた。中京大中京高で高校通算56本塁打をマーク。堂林翔太(広島)など多くの逸材を見てきた恩師の高橋源一郎監督は「飛距離は(同校の)歴代No.1」と言い切る。駒大では1年春からリーグ戦でベンチ入りしたが、2年春まで公式戦無安打。「金属打ちがなかなか直せなくて……。打球は飛ばないし、1年の春だけでバットを10本折りました。でも、自分の苦しさよりも、先輩たちに申し訳なくて。いつも“すみません”と思いながら打席に立っていました」と葛藤を抱えていたが、当時の大倉孝一監督は「持っているモノが違う。それは誰だって分かりますよ」と潜在能力を高く評価して起用し続けた。器用なタイプではない。時間がかかったが、大学生最後のシーズンで期待に応える。4年秋のリーグ戦で4試合連続アーチ。古川慎一井口忠仁(現資仁)に並ぶ史上3人目の快挙だった。

重ねている試行錯誤


 確実性に課題を抱えていたが、貧打が深刻な中日がドラフト2位で指名したことが期待の大きさを物語っている。プロの一軍で投げる投手たちは直球、変化球のキレ、制球力とレベルが上がる。新人の2022年は59試合出場で打率.206、4本塁打、16打点。NPB野手タイ記録の9打席連続三振を喫した。課題を見つめ、どう克服するか。修正能力を求められたが、23年は41試合出場で打率.143、3本塁打、5打点。1学年上でDeNAから現役ドラフトで移籍した細川成也が24本塁打と素質を開花させたのとは対照的に、試行錯誤を重ねた。

 打撃でアピールしなければ、この世界で生き残れない。それは本人が一番分かっている。昨年3月に週刊ベースボールの取材でこう語っていた。

「昨年12月に岐阜県養老町のミズノテクニクスのバット工房を訪れ、新しいモデルを削り出してもらいました。変更点としては重心を少しだけトップに持っていってもらいました。これまでミドルバランスを使っていましたが、振りやすい分、どうしてもヘッドが返りやすくなったり、力んでしまったりしていました。力めばボールは飛ぶんですけど、それでは試合につながらないと感じていました。そこで和田(和田一浩)打撃コーチに相談したら『トップバランスのバットを使うのもありなんじゃないか』と勧めてもらいました。もっとヘッドの重みで振れるようにしたい。それができれば楽に飛ぶし、幅が広がりますからね」

昨季はノーアーチ


 バットの形状を変更して巻き返しを誓った昨年だが、開幕を二軍で迎えるとウエスタン・リーグで7月終了時点まで打率1割台と苦しんだ。シーズン終盤に一軍に昇格したが、12試合出場で打率.185、0本塁打、3打点。プロ3年目で初のノーアーチに終わり、27打席で10三振とコンタクト能力の低さを露呈した。

 昨オフに背番号が4から66へ変更となった。同学年の村上宗隆(ヤクルト)は球界を代表するスラッガーになり、清宮幸太郎(日本ハム)が大ブレークの予感を漂わせている中、鵜飼はこのままでは終われない。幼少のころからファンだった中日のユニフォームを身にまとい、覚醒する時はやってくるか。

写真=BBM

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