実戦で好アピール

今季、巨人に加入した石川。キャンプで結果を残している
巨人は先発、救援陣でハイレベルな競争が繰り広げられているが、新天地で評価を高めているのが新加入左腕の
石川達也だ。
春季キャンプ初の実戦形式となった2月9日のシート打撃で、打者8人に5三振を奪う快投。安打は1本のみだった。伸びのある直球に加え、チェンジアップの精度が高い。18日の練習試合・
DeNA戦では2回2奪三振の完全投球。6回一死から
度会隆輝を外角いっぱいに決まる直球で見逃し三振、続く
井上絢登は高めの直球で空振り三振に仕留めた。7回も
京田陽太、
森敬斗、
蝦名達夫を三者凡退。古巣相手の快投に、
阿部慎之助監督は「先発も面白いかなって思うくらい、いろんな迷いが生じた。まあ、長い回を投げたことがないって言うから、中継ぎでやってもらおうかな」と声を弾ませていた。
ダイナミックな投球フォームから三振奪取能力が高いことが大きな魅力だ。育成ドラフト1位でDeNAに入団すると、22年のシーズン途中に支配下昇格。23年に28試合登板で防御率1.97をマークし、32回で34三振を奪った。昨季も15試合登板で防御率1.93を記録したが、5月26日に登録抹消されるとその後は一軍登板なし。オフに戦力外を通告された。
お手本になる存在

巨人でリリーフ左腕として存在感を示す高梨
獲得に乗り出した巨人には同じ左腕リリーバーで、お手本になる存在がいる。プロ8年間で通算428試合登板と鉄腕ぶりが光る
高梨雄平だ。
楽天にドラフト9位で入団すると新人の17年から3年連続40試合以上登板。18年はリーグ2位の70試合登板した。20年のシーズン途中に巨人にトレード移籍以降も、5年連続20ホールド以上をマークしている。
立場が確約されているわけではない。23年は自己ワーストの防御率4.19と安定感を欠き、昨年は開幕二軍スタートに。初登板となった4月9日の
ヤクルト戦(鹿児島)では1点リードの6回二死満塁でマウンドに上がると、「ここで(首脳陣の期待に)応えなかったら今年は終わりだなと思って投げた。全球勝負球でいった」と
西川遥輝をスライダーで二ゴロに仕留めた。その後もセットアッパーとして奮闘し、51試合登板で4勝3敗25ホールド、防御率2.04。昨年11月の契約更改で国内FA権を行使せずに残留し、3000万円増の推定年俸1億5000円で年俸固定制の3年契約を結んだ。
「手の届く範囲で好影響を与えたい」
高梨は昨年6月に週刊ベースボールのインタビューで、以下のように語っている。
「プロに入ってきたときから『いつまでできるかな』という気持ちがずっとありました。『最短2年だな』という気持ちで入ってきて。やっぱりドラフト9位なんで、ダメだったらすぐクビになるじゃないですか、客観的に言って。もちろん今もその気持ちは持っているんですけど、そこに『何を残せるかな』という気持ちも追加されている感じですね。僕が野球界……まではいかないですね、そこはもっとすごい人たちに任せればいい(笑)。僕の手が届く範囲で、手を伸ばしたら届くくらいの範囲でいい影響を与えたい。別に悪い影響でもいいやと思っていて。反面教師になるでしょうから、極論を言えば。そうした影響を与えたいと思うようになったというのは、自分の変化かもしれないですね。その一番身近なところがチームであり、ブルペンの若い選手たちということです」
「そのために、自分から伝えるということを積極的にするわけではないですけど、環境づくりというか、いつでも聞いてもらえるような人間関係をつくったり、何より聞かれたときにいい答え、いい考え方をうまくアウトプットできるようなトレーニングはしています。聞きやすい雰囲気づくりと人間関係、分かりやすい伝え方。多分、会社の上司と考えていることは一緒じゃないですかね(笑)」
同じ左腕でも投手としてのタイプは違うが、野球への向き合い方、マウンドに上がるまでの準備など、石川が高梨から得られることはたくさんあるだろう。救援陣は
ライデル・マルティネス、
大勢、
カイル・ケラー、
船迫大雅など右腕が充実しているが、左腕は計算できる投手が
アルベルト・バルドナード、高梨に続く3枚目が確立されていない。石川はリーグ連覇のキーマンになれるか。
写真=BBM