1年目から東京ドームで残したインパクト

ENEOS・村上は大卒入社1年目の2024年、最多本塁打賞[対象大会12試合で5本塁打]を受賞した[写真=井田新輔]
社会人野球のシーズン幕開けを告げるJABA東京スポニチ大会は、3月8日に開幕する。
社会人の大卒入社選手は、2年目がドラフト解禁である。名門・ENEOSの主軸を任される予定の村上裕一郎(九州共立大)は「昨年はチームメートの東山玲士さん(
オリックス5位)が指名を受け、さらに刺激を受けました。小さい頃からの夢なので自分もプロに行きたい。スポニチ大会からチームの勝利につながる結果を求めたい」と意気込みを語る。
宇和島東高では四番・中堅で3年夏の甲子園に出場。かつて上甲正典元監督が指揮した伝統の「牛鬼打線」を継承する右の強打者として存在感を示し「バットは相当な数を振ってきました」と、充実の3年間を過ごした。
九州共立大では3年時に全日本大学選手権と明治神宮大会に出場。3年12月には侍ジャパン大学代表候補合宿(松山)に参加した。そこで受けたカルチャーショック。「実戦形式で中央大学の西舘投手(
西舘勇陽、
巨人)と対戦したんですが、スライダーはすごすぎて……。他の投手も素晴らしく、レベルの差を痛感しました。これでは、プロで勝負するのは難しいと思いました」。福岡六大学リーグでは通算11本塁打を記録したが、プロ志望届の提出は見送り、社会人野球・ENEOSに入社した。
1年目から東京ドームでインパクトを残した。東海理化との都市対抗1回戦で、貴重な追加点となる2ランで初戦突破。8月のJABA長野大会4試合で4本塁打をマークし、年間5本塁打。社会人野球表彰の個人賞における「最多本塁打賞」をルーキーで受賞した。
「目標としていたタイトルなのでうれしいです。ただ、そこまでは自分自身に期待していなかったので正直、驚きのほうが大きい」
大舞台で本塁打を量産できた要因を明かす。
「大学のときよりも、スイングする際に後ろを長く取るようにしたんです。この間(ま)により、飛距離が出るようになりました」
魅力は「ゲームの流れを変える長打力」
昨季からヘッドコーチ、今季からチームを指揮する宮澤健太郎監督(明大)は言う。
「ENEOSは過去の歴代選手を振り返っても、本塁打のタイトルに縁にある選手はあまり出てきませんでした。村上はゲームの流れを変える長打力が魅力です。練習に必死に取り組む姿勢も立派で、売りである打撃にさらに磨きをかけてほしいと思います。昨年は昨年、今年は今年で切り替えて、厳しい勝負が始まります。都市対抗、日本選手権で試合を決める本塁打を打ってほしい。勝負どころでの5発!! 中軸として期待しています」
もちろん、村上も昨年の結果に満足していない。どん欲に2025年の抱負を語る。
「昨季は実際、チームに貢献できた本塁打かと言うと、そうでもありません。今シーズンは勝利につながる一発にこだわっていきたいと思います。昨季まで指揮した
大久保秀昭監督(慶大)には野球に対する取り組みを、一から学びました。自分がこのENEOSでプレーするきっかけを与えてくれた背景もあり、感謝しかありません。宮澤監督は熱いですね。食らいついていきます!! そして、都市対抗、日本選手権で胴上げをします」
3月8日に開幕するJABA東京スポニチ大会は、予選リーグ(Aブロック)でJR西日本、鷺宮製作所、Honda鈴鹿と対戦する。予選リーグ1位になれば、11日の準決勝・決勝へと駒を進める。ENEOSの主砲・村上のバットから目が離せない。
文=岡本朋祐