春秋連覇に貢献

早大・田和は圧倒的なボールを武器に、救援で実績を残してきた。先発希望もあるが、チームのニーズに応えていくつもりだ[写真=BBM]
早大は沖縄・浦添で3月5日から19日まで春季キャンプを張っている。152キロ右腕・田和廉(4年・早実)は独特な腕の位置からボールが出てくる。スリークォーターよりもやや低め。初見でボールをとらえるのは難しい。
「他の人にはない長所の一つで、アピールポイントだと思っています。1年時、チーム内に『右のサイドがいない』という話になって、腕を下げた背景があります。周囲からは『変則』と言われるんですが、自分の体を使う上で、最も投げやすいところで投げています」
2年春に神宮デビュー。自己最速の152キロを計測し、早大・
小宮山悟監督からも大きな期待がかけられていた。ところが、登板4試合目となった法大4回戦で右肘を痛めた。6月にトミー・ジョン手術を受け、リハビリを経て昨秋に復帰。13試合中8試合に登板し、うち6試合は試合を締めた。9回1/3で11奪三振、自責点1、防御率0.96と圧倒し、早大として9年ぶりの春秋連覇に貢献した。
「できる限り、高い順位で行きたいです」と、大学卒業後はプロ志望を明言。主に救援を任されてきたが、上のステージで投げるため「長いイニングを投げる。2巡目以降を抑える」と先発転向を志願した。ただ、あくまでも個人の思いであり、チームがあっての自分だ。
「先発には1回戦の
伊藤樹(4年・仙台育英高)と2回戦の
宮城誇南(3年・浦和学院高)がおり、昨年は春、秋とも先発でフル稼働しました。自分も先発を経験したい思いはありますが、あくまでもチームの勝利が大前提です。自分が先発に入ることで、うまく回るのであれば、先発をしたいですし、中継ぎ、抑えの経験が生きてくると思います。ただ、2人の状態が良ければ、自分は抑えとして、一つでも多くのアウトを取る。それは前(先発)であろうが、後ろ(リリーフ)であろうが関係ない。点を与えられない場面で、きっちり抑えることだけを考えています」
教訓があった。昨年12月1日、明大との全早明戦(卒業生も加えたOB戦)。田和は苦い経験をしている。2点リードの9回裏から救援すると、二死から田上夏衣(当時1年・広陵高)に同点2ランを浴びた。リズムを崩した田和は、さらに3連打を浴びて、痛恨のサヨナラ負け(4対5)を喫している。
リーグ戦ではなかったのが、救いだった。
「大学入学後、オープン戦、練習での試合形式を含めて初の被弾でした。ホームラン後は動揺した部分もありました。一つの良い経験になった。同じミスを犯さないようにしたい」
浦添キャンプ前、
西武三軍とのオープン戦(3月1日)では先発で4回1安打1失点。6奪三振と結果を残した。特に自信になったのは、早大で3学年先輩にあたる
蛭間拓哉からシンカーで空振り三振を奪った場面だという。
浦添キャンプ以降の実戦を通じて、打たせて取る上で有効な対右打者の外角、対左打者の内角を突くカットボールに手応えを得ている。スライダーは握り方でいくつものパターンがあり、シンカーも強弱がつけられる。さらには、打者の目線をずらすカーブもあり、多彩な変化球で的を絞らせない。真っすぐもシュート回転し、とらえるのは難しい。
「この春は、自分たちの代でリーグ優勝して結果的に3連覇を達成できればいい。そして、昨年は成し遂げられなかった大学日本一を、ブレずに目指していく」
故障を経て、2年ぶりの沖縄キャンプ参加。「温暖で、特別な環境であり、モチベーションも上がります」。最終学年にかける思い。充実の表情で、レベルアップに努めている。
文=岡本朋祐