すごみが増したリリーバー

広島を支えるリリーフ左腕の森浦
広島が4月27日の
DeNA戦(横浜)に1対2で敗れ、今季初の同一カード3連敗。春先から白星を順調に重ねてきた後にブレーキがかかったが、悪い流れを断ち切るために大型連敗しないことがV奪回のポイントになる。DeNA3連戦は計2得点と打線が援護できなかった。守備でミスも散見されただけに、野手陣は責任を感じているだろう。投手陣は安定したパフォーマンスを続けている。その中で不可欠なリリーバーが、プロ5年目左腕の
森浦大輔だ。
新人の2021年から2年連続50試合以上登板。23年は13試合登板にとどまったが、昨年は54試合登板で2勝0敗17ホールド、防御率2.51と見事に復活した。森浦の代名詞がチェンジアップだ。直球と同じ腕の振りでブレーキがかかりながら鋭く落ちる。他球団の選手が「あれは魔球です。途中まで直球と見分けがつかないし、チェンジアップと分かっていても捉えるのが難しい」と脱帽する。
今年は、直球の球速が上がりさらにすごみが増している。4月5日のDeNA戦(マツダ広島)で、同点の延長10回から登板すると、最速151キロの直球、チェンジアップのコンビネーションで5者連続三振を奪うなど2回を完全投球。直球で押し込めるため、チェンジアップがさらに威力を発揮する。圧巻の投球でサヨナラ勝利を呼び込み、「田村(
田村俊介)がしっかり(サヨナラ打を)打ってくれたのでとてもうれしいです。自分の名前が呼ばれたら、しっかり抑えようと思って準備していました」とお立ち台で穏やかな表情を浮かべていた。翌6日の同戦も2点リードの6回二死一、二塁の場面で登板し、
松尾汐恩を初球のチェンジアップで左飛に仕留めた。開幕から8試合連続無失点で、打たれた安打は2本のみ。抜群の安定感でチームの勝利に貢献している。
スライダーが武器のレジェンド左腕

中日でリリーフ左腕として勝利に貢献し続けた岩瀬
ポーカーフェースを変えずに淡々とアウトを重ねる姿は、中日の守護神として通算1002試合、407セーブの日本記録を持つ左腕の
岩瀬仁紀氏と重なる。岩瀬氏も伝家の宝刀・スライダーが大きな武器だった。
チームメートだった元中日監督の
立浪和義氏は、「ストレートが速いこともあって、左打者はストレートと同じ腕の振り、同じ軌道できて最後の最後で外に逃げるスライダーに対し、バットに当てることすらできず、
ヤクルトで打ちまくっていた
ペタジーニ元選手や
巨人時代の
松井秀喜君が、きりきり舞いしていた姿も鮮明に覚えています。右打者も、全盛期は145キロ前後のスピードがあったスライダーを内角に投げられたら、空振りか、せいぜい芯を外されての凡打にしかなりませんでした。しかも、岩瀬選手のスライダーはスピードが速く、曲がり始めが遅いのに変化自体も大きい。まさに魔球でしたね」と週刊ベースボールのコラムで評していた。
7年ぶりの優勝に向けて
広島は同期入団の
栗林良吏が守護神を務めている。森浦は「一緒にブルペンで待機とかしていても、その時間にアドバイスをもらったり。聞いたら何でも答えてくれる。勉強になっています。例えば、カーブなど変化球の使い方とかを聞いたりします。持っている球種が似ているので、どうやって使っているのかとか、どういうイメージで投げているのかとか。それを試合にも生かす」と語っていた。セットアッパーとして栗林に良い形でバトンタッチするのが使命だが、森浦も抑えを務める力は十分に備わっている。
18年に球団史上初のリーグ3連覇を飾ってから6年の月日が流れた。森浦はこの黄金時代を経験していない。昨年は優勝争いを繰り広げていたが、9月に5勝20敗と大失速。CS圏外の4位に転落した。8月まで防御率1.46をマークしていた森浦も9月は月間防御率6.23と打ち込まれる登板が目立ち、悔しい思いをした。今年こそ頂点へ――。左腕を振り続け、悲願が実現した時にクールな左腕に満面の笑顔が見られるかもしれない。
写真=BBM