新たな地域連携

東京消防庁西東京消防署・渡邊亮介さんは早稲田大学野球部OB。大学4年間活動した母校に対して、恩返しの場となるイベントを企画立案した[写真=BBM]
コンセプトは「野球場が、防災の学び場になる1日」。かつてない「コラボイベント」が実現する。
東京消防庁西東京消防署は1月26日、早稲田大学野球部とタッグを組み「ティーボール体験」と「リアル防災訓練」を組み合わせた防災イベントを2月15日に初開催することを発表した。イベント名は「ワセダ『防災×スポーツ』チャレンジ!」である。
開催場所は早稲田大学野球部の活動拠点である安部磯雄記念野球場(東京都西東京市東伏見)。参加対象は5歳から小学生までの子どもと保護者、また、近隣事業所等となっている(参加費は無料。申し込みは2月5日まで。定員に到達次第終了)。大規模地震等の災害時における「共助」の力の向上を目的とした、新たな地域連携の取り組みだ。
同イベントを企画したのは早稲田大学野球部OBの東京消防庁西東京消防署・渡邊亮介さん(予防課防火管理係主任、広報担当)である。
開催までの経緯を語る。
「私は東京消防庁の西東京消防署という早稲田大学のグラウンドを管轄する消防署に勤務し、広報の仕事をしていまして、市民の人々に広く防災についていろいろと知っていただいたり、災害に備えてもらうことをお伝えする仕事をしています。そこで、母校である早稲田大学と一緒に、何か野球部にとってもメリットのあるイベントができないかなと考えました。我々としては、子どもたちを対象とした親子参加型のスポーツイベントと合わせることで、お父さんお母さんがついてこられる。親御さんは30代、40代と、有事の際にも動けると言いますか、実際に力になっていただける世代の方々が来ていただける、と。普段の防災訓練ですと、ご高齢の参加者が多く、正直なところ、実際に災害になった時に、人をがれきの下から助けたりとかができるのか、という課題に直面します。もちろん防災訓練に参加してくださるのは大変ありがたいことなんですが、やっぱりそういった救助ができる、現役の親世代に参加していただきたいという狙いがあったんです」
社会的課題に取り組む意義
当日の動きは、こう想定している。
「9時30分からイベントをスタートし、前半部分(9時40分〜10時40分)ではティーボール体験、ストラックアウトなど、子どもたちが野球を通じて楽しめるようなコンテンツを考えています。早稲田大学野球部・
小宮山悟監督、
金森栄治助監督のほか、現役部員が優しく教えてくれます。後半の時間(10時45分〜11時45分)では、リアル防災訓練、我々消防の立場といたしましても、これだけ広いグラウンドでの訓練というのはあまりない機会です。企画を提案してからひらめいたんですけど、球場にはネット、ケージなど大型の機材があって、倒壊家屋に見立てるのにちょうどいいんじゃないかというところで、野球部の道具も使いながら、救助訓練で人を助けるとか、または応急手当を学ぶとか、そういったコンテンツを考えています」
成果をこう期待する。
「社会的課題に取り組むのは、野球部員に対しても、地域社会に対しても良い影響があると思います。スポーツと防災の輪。例えば東京六大学の他の部でも実施していくとか、今回の早稲田大学野球部をきっかけに広げていきたいという思いがあります。参考までに、早稲田大学野球部のグラウンドも、西東京市の防災計画の中で『指定避難場所』と位置付けられているんですが、なかなか認知されていないのが現実の課題としてあります。今回のイベントを通じて、地域住民の方も認知していただき『有事の際には、ここに集まればいい』と浸透させ、認識する機会として期待しています」
世のため、人のために役立つ仕事を
渡邊さんは早実、早大を通じて投手。
斎藤佑樹(元
日本ハム)の1学年先輩にあたる。早大の同級生投手には、
松下建太(元
西武)がいた。大学3年時からは学生コーチとして尽力。卒業後は一般企業に就職するも数年後「世のため、人のために役立つような仕事をやってみたいという思いが芽生えました」と、東京消防庁への転職を決意した。採用試験を突破した後、消防学校へ入校し、約半年の研修を経て、採用後は現場に出た。消防士、救急救命士などを経て、現在は広報の部署で働いている。西東京消防署に配属となったのも何かの縁。母校野球部へ最大の恩返しの場となる。
ニュースリリースには今回のイベントの意義について、こう書かれている。
「消防署はこの取り組みを通じて、子育て世代や地域の事業所で現役で活躍する方々が『地域防災力の向上』について考え、実践する機会を創出するとともに、早稲田大学野球部としても、野球体験にとどまらず、防災という社会的課題への取り組みや地域の方々との交流を通じて、災害時に地域の力となることを目指します」
防災について考え、行動する新たなモデルケース。早稲田大学野球部としても見聞を広める新たな活動。画期的な1日となりそうだ。
取材・文=岡本朋祐