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高校野球リポート 春季神奈川県大会

【高校野球】法政二高と慶應義塾高の「神奈川古豪対決」に注目

 

DH制の恩恵


法政二高の140キロ右腕・松田は春初戦を3安打シャットアウトで勝利へ導いた[写真=BBM]


【春季神奈川県大会2回戦】
4月5日
法政二高6-0神奈川大付高

 背番号「1」を着ける松田早太(3年)は古豪・法政二高の主戦投手として「先発完投」を美学としている。昨秋は県大会準決勝までの5試合を一人で投げ抜き、33年ぶりの関東大会出場の原動力となった(横浜高との決勝は登板なく、チームは準優勝)。

 この春もそのスタンスは変わらない。神奈川大付高との初戦(2回戦)を散発3安打完封。140キロに迫るストレートと緩急自在の変化球で、12奪三振と圧倒した。5回終了時点で1対0という接戦の展開だったが、絹田史郎監督は「守りのほうで崩れることがなく、相手校さんに流れを与えなかったのが大きかったです。松田に助けられました。走者を出しても落ち着いた投球。ウチの野球ができました」と、エースへの全幅の信頼を語った。

 先発を任されれば、マウンドは明け渡さない。そのポリシーは譲らないが、この春は大きな変化があった。今春から高校野球界で導入された指名打者(DH)制である。

「DH制になって初めての公式戦。打線に助けられましたので、感謝したい。攻撃の時間を、休憩に充てられる。今日は、ここ最近ではなかった暑さがありましたので、氷のうを当てたり、ブルペンが涼しかったので、そこで休んでいました。うまく時間を使えました」

センバツ準々決勝を教訓に


 野球において「たら、れば」は禁物であることは承知の上で、昨秋の関東大会1回戦(対花咲徳栄高)を振り返る。

 法政二高は8対0と主導権を握っていた。5回裏二死三塁で九番・松田が右打席に入った。2ストライクからの4球目、花咲徳栄高の先発・黒川凌大(3年)から右前打。エース自らのタイムリーで9対0とした。三塁側の応援席はお祭り騒ぎ。しかし、直後に落とし穴が待っていた。花咲徳栄高バッテリーは9点ビハインドも冷静だった。一番打者の打席で一走・松田が飛び出し、捕手からのけん制でタッチアウト。逆を突かれる体勢となった松田は、慌てて帰塁した際に右股関節付近を痛めた。5回終了でグラウンド整備。松田はしばらくその場から動けず、やや右足を気にするような素振りをして、ベンチへ戻った。

 松田はこの試合、絶好調だった。県大会から休養十分で、ボールにはキレがあった。5回まで3安打無失点。ストライク先行で、花咲徳栄高をほぼ完ぺきに封じていたが、6回以降の投球は明らかに異変が見られた。下半身が踏ん張れないのか、制球を乱し、カウントを整えにいったボールを痛打。6回表に4失点。7回表も2ランを浴び、3点差とされた。さらにアクシデント。二死からの痛烈な打球が右足を直撃し、このときばかりはやや引きずってベンチに戻る姿は痛々しかった。8回表に適時打と2ランで9対9に追いつかれると、9回表に決勝点を与えた。9対10。172球を一人で投げ切るも、最後は力尽きている。事実上、センバツ出場は絶望となった。

 試合後、松田は2つの負傷を一切、敗因の言い訳にはしなかった。勝負師を貫いていた。

 強豪校相手に、セーフティーリードはない。だが、試合状況を見れば、5回裏の打席で無理をする必要はなかったはず。松田はチームの勝利のため、全力プレーを信条とする。仮に昨秋、DH制があれば、どのようなゲーム展開になっていただろうか。過去を振り返っても何の意味もないが、春初戦コメントを聞く限り、松田はDHの恩恵に預かっていた。

 今春のセンバツ。花咲徳栄高は智弁学園高との準々決勝で8対0とリードしながら、逆転負け(8対12)を喫した。昨秋とは逆の立場を味わった。松田は他人事では語ることはできず、自らの教訓にしている。

「花咲徳栄さんでも、ああいう流れになってしまう。野球の怖さを再確認しました」

真価が問われるゲーム


法政二・絹田監督はエース・松田に全幅の信頼を寄せる[写真=BBM]


 法政二高は過去に春2回(優勝1度)、夏9回(優勝1度、準優勝1度)の甲子園出場実績があるが、春は84年、夏は88年以来、聖地から遠ざかっている。関東大会出場で「古豪復活」の機運が高まった。松田は言う。

「チーム全体の士気が上がっています。大きな大会を経験したのは、精神的にも強くなった。ただ、自分は大きくとらえ過ぎてしまって、そこで止まっている」

 とにかく、自分に厳しい。勝負の夏に向けて、モチベーションを上げていく上でも、今春の県大会は試金石の場だ。3回戦(4月11日)では慶應義塾高と対戦する。2023年夏の甲子園で107年ぶり2度目の全国制覇の記憶はまだ、多くの高校野球ファンの記憶に残っているはず。かつて1950、60年代にかけて、神奈川でしのぎを削ったライバル校同士の顔合わせである。慶應義塾高は昨夏は県大会4回戦、同秋は同初戦(2回戦)敗退と苦戦が続いており、一冬を越え、相当な覚悟で臨んでくるに違いない。

「慶應さんは個々のレベルが高い。守りがしっかりすれば、どこかでチャンスが来る。ロースコアの勝負になるでしょうから、松田の真価が問われるゲームになる」(絹田監督)

 松田は東京六大学野球に憧れており、法大進学後、神宮での投球を目標としている。グレーのKEIOのユニフォームを見れば、否応にもテンションは高まるはずだが……。

「六大(対決)とかありますけど、そこは気にしていない。自分のやれることをやります」

 取材者の質問には一切、乗ってこなかった。あえて、闘志を内に秘めた、と見る。2回戦のボールを見る限り、昨秋よりもスケールアップしているのは確かである。3回戦の会場はサーティーフォー相模原球場。「神奈川古豪対決」から目が離せない。

取材・文=岡本朋祐
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