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高校野球リポート 春季神奈川県大会

【高校野球】慶應義塾高の2年生・湯本琢心が大谷翔平に憧れる理由

 

二番・DHのリアル二刀流


慶應義塾高・湯本は高卒での「プロ志望」が選択肢の一つである[写真=BBM]


 春季神奈川県大会は4月12日までに3回戦を終え、16強が出そろった。甲子園出場1枠をかけた今夏の神奈川大会に与えられるシード校(第3シード)が決定。18日は4回戦が行われ、準々決勝進出校(8強)が第2シードとなる。

 慶應義塾高に「リアル二刀流」がいる。2年生・湯本琢心だ。179センチ80キロ、右投げ左打ち。背番号「9」の外野手登録ながら、マウンドにも上がる。

 高校野球は今春の公式戦からDH(指名打者)制が導入。法政二高との3回戦で慶應義塾高・森林貴彦監督は湯本を「二番・DH」で起用した。スコアボードには2つの名前が並ぶ「先発投手兼DH」(大谷ルール)だった。

 湯本は投打で躍動した。1点リードの5回裏には無死一、三塁から3ラン。バントの構えから、強攻策に切り替えるバスターで豪華に右翼スタンドへ放った。5回無失点で降板後はDHに専念。6回裏には巧みなバットコントロールで左前打、8回裏には中前適時打で3安打4打点。リードを4点に広げ、慶應義塾高が7対3でシード校・法政二高を撃破した。

 森林監督は起用意図についてこう語った。

「湯本はまだ下級生(2年生)で、1試合を投げ切る体力はないので、どこかで継投は考えていました。この試合に関して、再登板は考えていませんでした。ピッチャーを他に戻す場合もあったので、DHで残しておいて、もう1回、ライトで入るという可能性があったのでピッチャー、DHという形でやりました。夏は打てるピッチャーで再登板もあるとなると、DHを使わないケースもある。今日は一つの形ができたかなと思います」

「大谷ルール」を歓迎


投手としては最速145キロ。力強いボールを投げ込む[写真=BBM]


 公式戦初本塁打で、高校通算では13号だった。相手投手は昨秋、33年ぶりの関東大会出場へと導いた法政二高の好投手・松田早太(3年)だったというのも、価値が高まる。投げては、最速145キロ。変化球の球種は「秘密です」とおどけてみせた。目標とする選手は当然、この人である。

「小さい頃から大谷翔平さんに憧れていたので、今も憧れですね。二刀流はやっぱり、これからもやっていきたいなと思っています。大谷ルール? 結構、都合がいいのでありがたいです。(降板後はベンチで)投げたいという気持ちよりも、勝ちたかったので、リリーフしたエースの大村(哲誠、3年)さんをずっと信じて見守っていました」

 埼玉県出身。蒲生南小1年時から蒲生ユニオンズで野球を始め、越谷市立南中学時代は春日部ボーイズで投手、右翼手。3年春の全国大会で優勝し、MVPに輝いた。慶應義塾高では1年夏から背番号「9」でベンチ入り。同夏は4回戦敗退、新チームの昨秋は初戦敗退(2回戦敗退)と、チームとしてもなかなか力を発揮できずにいた。一冬を越えて、昨秋の県大会準優勝校・法政二高に勝利し、存在感を示した。

「だいぶ気合が入っていましたし、秋は初戦で負けて、夏もあまり勝てなくて、ずっと勝てないところが続いている中で、法政二高というレベルの高い相手でしたので、とにかくうれしいです」

高卒プロへの思い


二番・DHと投手の欄に湯本の名前が表示された「リアル二刀流」だ[写真=BBM]


 湯本は高卒でのプロ志望を選択肢の一つにしている。1965年のドラフト制以降、慶大の一貫教育校・慶應義塾高から直接、プロ入りしたケースはない。2009年にはNPBとMLBも注目した最速148キロの本格派右腕・白村明弘(元日本ハム)が高卒でのプロ志望を明かしたが、最終的に慶大に進学し、4年後にドラフト指名を受けている。昨今はソフトバンク柳町達ヤクルト木澤尚文ら多くの同校OBがNPBで活躍しているが、「東京六大学・神宮」を経由している背景がある。湯本はプロへの思いを語った。

「行けるタイミングで行きたいというのが自分の個人的なところではあります。早く行きたい、と考えた時に、一番早いのが高卒なんじゃないかなというところで、それがダメだったとしても、慶應大学という素晴らしい環境でプレーできるということで、ここを選びました」

 中学時代の評定はオール5と成績優秀であり、本物の文武両道を実践してきた。森林監督は慎重に言葉を選ぶ。

「私自身は大学で活躍してからでもいいんじゃないかと思っていますが、ただ、本人の生きる道なので、それは今後、そういう選択肢が出てくるようになったら、そういうお呼びがかかるようになったら、また真剣に本人と考えたいと思います」

もっと高い成長曲線


5回裏にバスターの構えから3ランを放った。広角に打ち分け、打撃センス抜群だ[写真=BBM]


 あらためて「今後の抱負」について聞いた。

「プロに行けるように、プロで活躍できるように今過ごしているので、頑張りたいです」

 開催中の県大会について質問したつもりだったが、湯本はこう答えた。相当な「思い」であると、あらためて確認できた。今春については「優勝したいです」とニッコリ。森林監督は言う。

「まだ想定内の成長曲線で、想定を超えていってもらわないといけないなと思っています。打つほうと投げるほうと、二刀流で忙しいですけど、もっと高い成長曲線を描いてもらいたいなと期待しています」

 4回戦(18日)は昨春のセンバツに21世紀枠で初出場した県立の雄・横浜清陵高と対戦する。湯本は2年生ながら、中心選手としての自覚があり、投打でチームを勝利へと導く。

取材・文=岡本朋祐
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