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ヤクルトが下馬評覆す快進撃 新しい「五番打者像」を確立する「育成出身の苦労人」は

 

試合の流れを変える好走塁


足を武器にチームの勝利に貢献している岩田。チームの快進撃を支える一人だ


 目指す野球がチーム全体に浸透しているヤクルトは強い。4月18日の巨人戦(神宮)で逆転サヨナラ勝ち。1点差を追いかける9回に難敵のライデル・マルティネスを攻略した。先頭打者・田中陽翔が右翼線二塁打で出塁すると、丸山和郁が左越え適時二塁打で同点に。定石なら犠打で三塁に走者を進めるが、攻撃的な姿勢を貫く。さらに、一死二塁で3球目に丸山が三盗に成功。無警戒だった巨人バッテリーのスキを突くと、長岡秀樹の遊撃強襲内野安打で勝負を決めた。

 18試合を終えて13勝5敗。昨年は最下位に沈み、戦前の下馬評が高いとは言えなかったが、攻守に粘り強い戦いぶりで白星を積み重ねている。野手でキーマンになっているのが、「五番・中堅」に定着している岩田幸宏だ。一つでも先の塁を狙う姿勢がチームに勢いをもたらしている。3月29日のDeNA戦(神宮)では、8回二死一塁の一塁走者で内野手が飛球を落球した間に本塁生還。31日の広島戦(神宮)でも2回に二盗に成功すると、相手の遊撃の一塁送球がわずかに逸れた間に先制のホームインを果たした。4月5日の中日戦(神宮)では、5点差を追いかける7回に先頭打者で反撃の口火を切った。右前にはじき返すと、右翼・ブライト健太の捕球体勢を見て一気に二塁を陥れた。この好走塁が試合の流れを変え、一挙7得点を奪う逆転劇につながった。

 昨年は自己最多の126試合出場で打率.266、14盗塁をマークしたが、外野の定位置をつかんだわけではない。「打たないと出られないですからね。そこは大前提です。オフの課題としては、コンタクト率を上げながらもっと振れるように。とらえていれば内野は抜けると思うので、あとは狙って打てるようにしたい。右方向が課題ですね」と危機感を口にしていた。

幾度も試練を乗り越えて


 育成入団の苦労人は、幾度も試練を乗り越えてきた。東洋大姫路高では甲子園に届かず、社会人野球のミキハウスへ。「高校ぐらいで(プロに)行けるかどうかは、だいたい分かるじゃないですか。でもまだ野球がしたくて……。大学(進学)の話もあったんですけど、自分は一般生で高校に入ってたんで、金銭的なところで親にすごく迷惑をかけてました。なので社会人っていう話が入ってきて、そっちに行きたいっていうふうに(親に)話しました」と週刊ベースボールの取材で振り返っている。

 ミキハウスで4年間プレーした後、NPBを目指してBCリーグの信濃に入団。2年目の21年に打率.357、29盗塁をマークし、育成ドラフト1位でヤクルトに指名された。

「すごくうれしかったですね、自分の選択は間違っていなかったのかなと。思い切って社会人(ミキハウス)を辞めて、2年って決めて独立(リーグ)に挑戦するって親にも話をして、2年目でドラフトにかけてもらったんで。親もすごく喜んでくれました」

「うれしかったですね、兄に『自慢の弟や』って言われたのが。あまり褒めない兄で、褒められた覚えもないですし。そんな人がそうやって言うてくれたんで、その言葉で泣きました」

目指す選手像は青木GM


 ヤクルトに入団後は度重なる故障で心が折れかけたが、プロ3年目の24年の開幕直後に支配下昇格を勝ち取った。「母親は『またケガしたんか?』とか言うてたんで、電話して『支配下になったよ』って(笑)。泣いてくれたんで良かったです」と振り返る。

 目指す選手像は、現役時代に日米通算2730安打を放った青木宣親GMだ。プレースタイルに憧れているだけでなく、ともに現役時代にプレーした際に育成入団のときから気にかけてもらい、その人間性に感激した。

「ノリさん(青木宣親)ぐらいの成績は厳しいかもしれないですけど、やっぱり長く(野球を)することが今までお世話になってきた方への恩返しかなと思うんで、その一番大きい目標は崩さないようにしていきたいなと思います」

 機動力を武器に新しい「五番打者像」を確立し、攻守でチームを牽引する。

写真=BBM
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