「右内腹斜筋肉離れ」で抹消

8月15日のロッテ戦でファインプレーを見せた滝澤
西武は8月16日、「右内腹斜筋肉離れ」のため
滝澤夏央の出場選手登録を抹消した。
ここまで99試合に出場し、チームトップの打率.284をマークしていた滝澤は、前日15日のロッテ戦(ベルーナ)に「一番・二塁」でスタメン出場。6回の守備で、
山口航輝の打球がセンターへ抜けようかという二遊間への鋭い当たりに素早く反応した。逆シングルでスライディングキャッチすると、そのまま振り向きざまに一塁へクイックスロー。目いっぱい身体を伸ばした一塁手の
タイラー・ネビンが、これを2バウンドで捕球し、滝澤の美技を完成させた。
このファインプレーで先発の
隅田知一郎を救うと、今季何度も滝澤の好守を「見慣れている」はずの西武ファンからも大きな歓声が沸き起こった。しかし、滝澤はこのプレーの後、7回の守備から交代。翌16日に出場選手登録を抹消された。球団は10日から2週間での実戦復帰を目指しており、現時点では軽症とみられている。
6回の守備を終えてベンチに戻ってきた滝澤と会話をしていた
黒田哲史内野守備・走塁コーチは、当時の状況をこう説明した。
「このプレーでやった、というのは分からない。本人に『どうなんだ?』と聞いたら、『行けま〜す!』と言っていたので、大丈夫そうだった。今の時期、みんなどこかしら痛みを抱えて試合に出ている。切れているというわけでもないし、(状態は)そこまででもないみたいですよ。ただ、まだ先があるし、無理せえへんでいこう、ということじゃないですか」
今季、何度か患部の張りのために休養を与えられていた滝澤の状態は、チーム内でも共有されていた。ギリギリのプレーをした直後だったこともあり、守備を担当する黒田コーチが口頭で状態を確認。その後、トレーナーと
西口文也監督が状態を判断し、7回からの交代と登録抹消を決めたという。
4年ぶりのポストシーズン進出へ
西武では、交流戦MVPの
長谷川信哉が7月に左手有鉤骨を骨折して手術。現在は9月初旬の復帰を目指してリハビリ中だ。同学年の
渡部聖弥も今月9日の
ソフトバンク戦(ベルーナ)で守備中に打球が顔面を直撃し、「左眼窩底骨折」で戦列を離れている。野手のキーマンに故障者が相次いでいる状況だ。
チーム内には「長いシーズンで故障者が出るのも野球の一部。ただ、今のチームの中で主砲のネビンと、チャンスメーカーで守備の要でもある滝澤が長期離脱してしまったら厳しい」という声もある。黒田コーチも「守備だけで見ても(貢献度は)ハンパじゃないでしょ。どんだけチームに貢献しているか」と話し、高いレベルで二遊間を守り、攻撃では打線の起点となる一番打者としての存在感を強調した。
だからこそ、今回の抹消は単なる離脱ではない。軽症とみられる滝澤を無理に起用せず、10日から2週間の休養を与えながら状態の改善を図り、復帰を目指す。9月以降の戦いを見据え、欠かせない戦力を万全の状態で終盤戦に戻すための「戦略的抹消」といえる。
残り33試合で、首位・ソフトバンクとの7.5ゲーム差を逆転することは依然として厳しい。それでも西武は、2022年以来4年ぶりとなるポストシーズン進出を目指している。その戦いを左右する9月以降に、滝澤が再び万全の状態でグラウンドに立てるか。今回の決断は、そこを見据えたものでもある。
文=伊藤順一 写真=BBM