現役時代は毎年オフに交流

10月4日、早大・小宮山監督はヤクルト・石川からのメッセージボードを手にする[写真=BBM]
学生野球とプロ野球の併用である、神宮球場だからこそ生まれた人と人との絆だった。
10月3日。東京六大学リーグ戦の第2試合で、早大が東大1回戦を6対0で先勝した。2019年1月1日から母校を指揮する
小宮山悟監督は毎試合、ベンチにあるホワイトボードに、その日のテーマをペンで書き綴る。この日は一塁側。試合を終えて、文字を消した際にふと思いついた。
「そうだ! 今日はカツオの引退試合だ!」
ヤクルト・
石川雅規の25年にわたる現役生活の区切り。粋なメッセージを残した。
「石川君 長きに渡り お疲れ様でした。立派です 小宮山より」
カツオとは、野球界で浸透している46歳・石川のニックネームである。
「毎年オフ、ミズノのアドバイザリースタッフの会議が大阪であるんです。プロ入りしたばかりのカツオと会ったのがきっかけで、その後も交流が続いていました。
山本昌(元
中日)とグループディカッションをした記憶があります」
通算188勝の石川は中日戦の7回裏に代打で登場すると、8回表に登板。
森駿太を空振り三振に斬った。現役最後の4球だった。NPB通算117勝の小宮山監督も44歳までプレー。ベテランの気持ちは痛いほど理解できる。
「相当、しんどかったと思います。(8月27日の
巨人戦で左肩を痛め)相当、痛かったんだろうな、と。最後のマウンドも立派でした」
「200勝」への思い

10月3日、早大・小宮山監督からのメッセージを受け、ヤクルト・石川は「応燕ボード」に「感謝」を綴った[写真提供=明治神宮野球場]
元プロだからこそ、私見を語る。「200勝」にこだわってほしかったという。
「よく頑張りましたが、まだ、居座っても許されるほどのチームへの貢献度があり、功労者だったと思います。打線の援護があれば、いかようにもなる。勝つ可能性のある登板。つまり1、2点のビハインドで終盤の短いイニングを抑え、味方打線が逆転して、勝ち星がついてくるというケース。この展開が2、3試合でも続けば『ジンクス』となる。プロの興行とは、そういうものだと思います。ただ、一方で1人の選手枠というのは貴重なんです。二軍で投げたくて、投げたくてチャンスをうかがっていても、タイミングが合わない選手を何人も見てきました。ある意味、仕方なかったのかな、という面もあります」
3日の試合前、ヤクルト・石川から小宮山監督へ、お返しのメッセージが送られた。
来場者にも配布された「応燕ボード」に書かれたのは「小宮山様 感謝!!」。翌朝(4日)、関係者を通じて小宮山監督の手元に渡った。東大2回戦を控え、三塁ベンチで小宮山監督は「大事にしないといけないですね。あらためて『お疲れ様』と伝えたいです」と語った。
神宮球場、プロ併用日の妙。手書きの文字が、人と人との心をつないだのだった。
取材・文=岡本朋祐