投手の分業制が進む中、シーズン20勝を挙げるのは至難の業と言われている。1980年代までは先発投手が中4日で登板するのが日常だったが、その後は故障のリスクを考慮し、先発ローテーションを5、6人で組んだ中5、6日の登板間隔を空けて登板するのが主流となった。15勝に到達する投手も少なくなる中、平成以降に20勝を挙げた投手は7人。球史に名を刻んだ成績を振り返ってみよう。
・西本聖(巨人、中日、
オリックス)
■1989年 30試合登板、20勝6敗、防御率2.44、勝率.769
※通算504試合登板、165勝128敗17セーブ、防御率3.20、勝率.563
内角をえぐる
シュートを武器に1980年から6年連続2ケタ勝利をマーク。81年には18勝を挙げて沢村賞を受賞した。ライバルとしてエースの座を競い合っていた
江川卓が87年限りで引退すると、88年は4勝に終わり、
中尾孝義との交換トレードで
加茂川重治と中日へトレード移籍。移籍1年目に20勝を挙げる大活躍で巨人・斎藤雅樹とともに自身初の最多勝のタイトルを獲得した。
・斎藤雅樹(巨人)
■1989年 30試合登板、20勝7敗、防御率1.62、勝率.741
■1990年 27試合登板、20勝5敗、防御率2.17、勝率.800
※通算426試合登板、180勝96敗11セーブ、防御率2.77、勝率.652
平成で唯一の2年連続20勝をマークした。89年には11連続完投勝利の日本記録を達成し、最多勝、最優秀防御率、平成初の沢村賞を受賞。90年も8試合連続完投勝利を挙げるなど最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最優秀選手とタイトルを総ナメにした。サイドスローから140キロを超える直球、切れ味鋭いスライダー、シンカーを武器に「平成の大エース」と呼ばれた。
・上原浩治(巨人、オリオールズ、レンジャーズ、レッドソックス、カブス)
■1999年 25試合登板、20勝4敗、防御率2.09、勝率.833
※NPB通算312試合登板、112勝67敗33セーブ23ホールド、防御率3.02、勝率.626
※MLB通算436試合登板、22勝26敗95セーブ81ホールド、防御率2.66、勝率.458
1999年に逆指名で巨人に入団。毎週日曜日に登板する先発ローテーションが組まれたため、「サンデー上原」と呼ばれた。5月30日から9月21日まで、歴代4位タイの15連勝を記録。新人投手で1980年の
木田勇以来19年ぶりの20勝をマークした。巨人で活躍後は、13年にレッドソックスで日本人初のリーグチャンピオンシップに輝くなど救援で活躍。日米通算100勝100セーブ100ホールドは史上初の快挙だ。
・斉藤和巳(ダイエー・
ソフトバンク)
■2003年 26試合登板、20勝3敗、防御率2.83、勝率.870
※通算150試合登板、79勝23敗、防御率3.33、勝率.775
2002年までプロ7年間で9勝だったが、03年に覚醒した。当時プロ野球記録の16連勝を飾るなどパリーグで1985年の
佐藤義則以来となる20勝をマーク。最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞などタイトルを独占し、ライバルの
西武から6勝を挙げてチームのリーグ優勝、日本一に貢献した。05年も16勝1敗、06年も18勝5敗と絶対的エースとして君臨。その後は右肩痛に苦しんだため全盛期は短かったが、その活躍は強烈だった。
・井川慶(阪神、
ヤンキース、オリックス、兵庫ブルーサンダーズ)
■2003年 29試合登板、20勝5敗、防御率2.80、勝率.800
※NPB通算219試合登板、93勝72敗1セーブ、防御率3.21、勝率.564
※MLB通算16試合登板、2勝4敗、防御率6.66、勝率.333
左腕から150キロを超える直球とチェンジアップ、スライダーを武器に阪神のエースとして活躍。2003年には開幕投手で黒星を喫したが、その後に12連勝をマーク。連勝中はゲン担ぎで髪を切らなかったためアフロヘアーのような髪型になり話題になった。20勝を挙げて18年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献。この年はダイエー・斉藤も20勝をマーク。両リーグから同じ年に20勝投手が出たのは1982年の
広島・
北別府学、
日本ハム・
工藤幹夫以来だった。
・岩隈久志(近鉄、オリックス、楽天、マリナーズ、巨人)
■2008年 28試合登板、21勝4敗、防御率1.87、勝率.840
※NPB通算226試合登板、107勝69敗、防御率3.25、勝率.608
※MLB通算150試合登板、63勝39敗2セーブ、防御率3.42、勝率.618
チームは5位に低迷したが、シーズン65勝のうち約3分の1の21勝をマーク。200投球回数以上で被本塁打3本は、1958年に
秋本祐作が記録して以来50年ぶりの快挙だった。最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞とタイトルを獲得し、Bクラスの球団から1988年の
門田博光以来20年ぶりの最優秀選手に選ばれた。抜群の制球力でメジャーでも先発で活躍。現在は巨人でケガからの復活を目指す。
・田中将大(楽天、ヤンキース)
■2013年 28試合登板、24勝0敗1セーブ、防御率1.27、勝率.1000
※NPB通算175試合登板、99勝35敗3セーブ、防御率2.30、勝率.739
※MLB通算164試合登板、75勝43敗、防御率3.75、勝率.636
ヤンキースで6年連続2ケタ勝利をマークしている右腕は、楽天在籍時の2013年に金字塔を打ち立てた。開幕から24連勝はプロ野球新記録で、シーズン無敗で最多勝に輝いたのは史上初の快挙。球団創設初のリーグ優勝に導き、巨人との日本シリーズでは7戦目に抑えで締めくくり胴上げ投手になった。記者投票で満票を獲得して48年ぶりのMVPを受賞し、沢村賞も選考委員会で10分かからず満場一致で選出。まさに圧巻の活躍だった。
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